第15回 タムールの木の化石、セオドアの海ユリの化石
Taroom & Theodore, South Eastern Queensland / Fossils
6月、ブリスベンの西へ約330キロのマイルズ(Miles)から、更に120キロ北にある町タルーム(Taroom)に遠征した。1840年代に発展したこの町は、QLD州内陸部ではイプスウィッチの次に古い町だ。
木の化石が大好きな友人から1度は行くべきだと言われて来てはみたものの、数カ月前に降った雨がまだ乾いていないポイントまでの未舗装路は、水分を含んだ明らかに危険な色。仕方なく町に引き返し、観光案内所で他の場所の情報収集。「木の化石の話は聞いたことはあるけれど場所は知らないなぁ。ちょっと待ってて、詳しい人に電話してみるから」と言われて待つこと数分。木の化石は町の南、海ユリの化石が隣町セオドア(Theodore)でも採れるとの情報を得た。
まずは木の化石。教えてもらったのは町の南にある未舗装路の丘。その丘を登る道端にゴロゴロと転がる石を1つ拾うと、いきなり木の化石だ。「ちょっと待てよ」と落ちている石を見てみると、それらの全てが木の化石! 木目がハッキリした物、食パンそっくりな物、赤黒の模様が入った物など盛りだくさん。その中から格好が良い物だけを選んで集めると、瞬く間にバケツがいっぱいになった。
続いて、海ユリの化石を探しに。タルームから北上、途中のアイラ・ゴージで持参のランチで腹ごしらえしてから目指すのはセオドアだ。町の南東にある牧場の周りのポイントは比較的簡単に見つかったのは良いが、草がしげっていて目当ての化石探しは難航。「本当にここなのか」と疑いながら歩き回ること約1時間。
ふと、1つのサンド・ストーンを裏返すと、くっきりと海ユリの茎の部分が出た化石だ! その周りをよく調べてみると、3メートルほど離れた所に持ち帰られないほど巨大な化石を含むサンド・ストーンが地面から顔をのぞかせている。ハンマーで砕いて化石の模様がしっかりしている物だけをバケツに入れると、これまた瞬時に満杯に。
その重いバケツを車に運ぶ途中、バケツをいすに小休止しながらも周りの石に目を光らせていると、太陽の光が反射している石が1つ。拾ってみると、これは海ユリのユリの部分がくっきりと見える化石だ。しかも、サンド・ストーンではなく、鉄鉱石をベースとした重く硬い化石で、海ユリの部分は黄鉄鉱を含むのか太陽光にキラキラと反射している。恒例の「喜びの雄叫び」を上げるのに十分な獲物だ。
更に隈なく探すが、他に鉄鉱石ベースの化石は見つからず、その日はそこで打ち止めに。予想外の大収穫の海ユリの化石を助手席に鎮座させて満面の笑みで帰路に就く。これだから石探しはやめられない。
このコラムの著者
文・写真 田口富雄
在豪24年。忙しい中に暇を見つけては愛用のGoProを片手に豪州各地を掘り歩く、石、旅をこよなく愛するトレジャー・ハンター。そのアクティブな活動の様子は https://www.treasurehuntingaustralia.com/に詳しく。宝探し、宝石加工に興味があれば必見。前・ゴールドコースト宝石細工クラブ理事長