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しごとば拝見! 私の経営流儀 第2回
オーストラリアを拠点に、各方面で重要な仕事に取り組んでいる日系企業の社長をはじめとした日豪をつなぐキーパーソンの「しごとば」を日豪プレスが直撃し、その人となり、仕事の流儀を聞いていく不定期連載。第2回は、ゴールドコーストに本店を構え、中古車ディーラーとして圧倒的な存在感を放つ「ワイズ・ジャパン(WISE JAPAN)」の代表・早田勇介さんを訪問。さまざまな経験と実績を積み、若くして起業家としてキャリアを築いてきた、その道のりをはじめ、来豪のきっかけや、今後の展望など、話を伺った。
──日本では、飲食店やサービス業などさまざまな分野で起業してきたと伺いました。これまでどのようなことを行ってきたのですか。
「18歳の時に大学の仲間と初めて立ち上げたのは、インターネット回線とプロバイダーの営業代理店でした。私は、高校には進学せず文部科学省のテストを受けて大学に入学しているので中学卒業と同時に働き始め15~16歳の時はガソリンスタンドで整備士をしていました。その後17~18歳でインターネット回線/プロバイダーの営業をしていました。最初の起業はその経験からですね。大学と交渉して新入生にインターネット回線の説明会を開いたり、地元の不動産会社への営業などをしていました。当時は大学で教員免許の取得も目指していたので毎日が大変でしたが最初の起業が営業で良かったと、のちに異業種でビジネスをスタートする際につくづく感じました。その後は防犯カメラのOEM製造・販売、マジック・バー、フリーペーパーの出版、貴金属の買い取り専門店、コールセンター、エステサロン、NFCチップの製造・販売など、起業を始めてから現在まで11年間で9法人13店舗の経営を経験しました。これまでは会社や店舗を立ち上げ、数カ月から数年で売却するという動きを繰り返してきましたが、オーストラリアに来てWISE JAPANを立ち上げてからは、海外でのビジネスとライフスタイルに魅力と可能性を感じ、オーストラリアを拠点に自ら経営に携わり続け、拡大を目指しています」
──どのようなきっかけで来豪したのですか。
「来豪のきっかけは友人への憧れですね。20歳くらいの時、宮崎の大学に通いながら福岡で営業代理店、宮崎市内でマジック・バーを経営していました。当時、私は起業家としてもマジシャンとしてもアメリカに憧れを持ち、大学を休学してアメリカ横断の旅に出ました。その旅の途中で、世界一周をしている4カ国語を話す日系人に出会いました。私が来豪するきっかけとなった人物です。ニューヨークで彼と出会い意気投合し、その翌週から私はアメリカ横断の旅を中断して彼の世界一周についていくことにしたのです。その後ベネズエラ、コロンビア、ペルーなどを一緒に周り、彼の生命力の強さや廉正さを強烈に感じ、その生き方に憧れを抱きました。旅の途中、トラブルに見舞われても、彼はいつもその持ち前の生命力で必ず切り抜けるのです。旅の中で私は何度も『どう生きてきたらそうなる?』と聞きました。彼の答えはいつも『俺はオーストラリアで生きてきたから』でした。私は帰国後、会社経営とプロマジシャンを続けていましたが3年ほど経った時、当時経営していた事業を会社ごと売却するタイミングがあり、それと同時に生活の拠点を海外に移すことに決めました。行き先はもちろんオーストラリアでした。自分も彼のような生命力が欲しいと思ったからです」
──ゴールドコーストで中古車売買・修理やレンタカーを手掛けるWISE JAPANを起業した経緯について伺えますか。
「来豪した際、何をするかは決めていませんでしたが、どこかに雇われるという選択肢は1%もなかったので、毎日の生活の中でビジネスの種を探していました。それまでの製造・小売り業や営業会社の運営を海外で挑戦するのは、その時の自分の能力では限界があると感じ、ゼロからのスタートで考えていました。ある時、観光でケアンズに滞在している日本人の友人からレンタカーのトラブルに関する相談の電話がありました。以前整備士をしていた経験から基礎的なことは覚えており、話を聞くと単純な燃料の入れ違いでした。それ以外にも、車や英語に関するトラブルを聞くことが多く、日本語対応のレンタカー会社の必要性を感じました。当時日系のレンタカー会社はあったのですが、新車を使用しており価格帯が高く、ワーキング・ホリデー・メーカーや学生が借りられるようなものではありませんでした。ないならば自分で作ろうと、中古車を10台ほど買い込みビジネスをスタートしました。それが来豪2カ月目の時の話です。その後、車の購入の相談もかなり来るようになり、また、日本のトヨタや日産で働いていた整備士の仲間が加わったこともあり、中古車販売業を開始しました」
──起業やアイデアの実現、仕事をする上で重視されているのはどのような点ですか。
「起業家というと、よく行動力や判断力、リーダーの素質などが挙げられますが、私はそういったものはあくまで前提条件、または途中で経験を重ねていくものであり、起業家に本当に必要なものは“起業する” “会社を作る” “運営する”ということに対しての慣れだと思います。私は、スタートアップを含めると、この10年で15社近くの立ち上げに携わってきました。初めの1社目は、会社名を決めるだけで2週間掛かっていましたが、今では2週間あれば法人の登記を終わらせて、ウェブサイトの制作や営業活動に手を付けているでしょう。慣れていないと非生産的な動きが多くなります。私は、起業や経営について聞かれた際、それは筋トレのようなものだと話します。何事もそうですが、普段から取り組んでいないといきなりはできないですよね。どれだけ考えて準備してもいざ起業すると失敗する。それは何かが間違っていたという考え方ではなく、単純に経営する筋力が付いていないだけだと私は思います」
──経営者に必要なスキルについて、早田さんの考えをお聞かせください。
「起業においての慣れの要素は事業活動から非効率な動きを減らすこと、それに加え私はこの10年間の起業経験を通して、ある原則とサイクルを理解することが事業の継続発展におて不可欠だと気付きました。それは“ほとんど全ての事象は自分で選んでいるという理解→結果→改善→選択“というものです。この原則を理解していなかったころの私は、事業を起こしては繰り返し失敗していました。良いも悪いも、目の前で起きている現状や見えている景色は全て過去の自分の自由な選択によって目の前に現れているものです。PDCAサイクルという言葉をよく聞きますよね。“Plan→Do→Check→Act“というビジネスにおける基本法則を示したフレームワークですが、重要なのはビジネスの結果や、トラブルを人のせいにせず、どこで自分がその結果になる選択をしたのだろうと考える精神だと思います。同じ失敗を繰り返さなくなり、人に怒ることもなくなります。正しく理解し感情に負けない原則性を持ちビジネスに活用できると業種に関わらずビジネスをする上で大きな武器になると思います」
── 会社はもちろん、早田さん個人として、今後達成したい夢や目標はありますか。
「現在、WISE JAPANはオーストラリアを中心に中古車販売・レンタカー事業を展開していますが、日本人ならではの手厚いサービスを武器に海外展開を進めていきます。始めはレンタカー・サービスのみですが、今年の10月にニュージーランド(オークランド)に3店舗目を出店することが決定しました。現在2年に1店舗のペースで拡大を続けていますが、ニュージーランド出店を機に世界に目を向け1年に1店舗を目標に走っていければと考えています。また、個人としましては、今年は体を鍛えたいですね」
──最後に、起業や夢に向かって、チャレンジされている方々に向けてメッセージをお願いします。
「日豪プレスの読者の方々には、オーストラリアを始め、海外に在住している、またはこれからオーストラリアに行きたいと思って情報を集めている人が多いと思います。現在、オーストラリアを含めた海外に在留している日本人は約130万人と言われています。この数字は日本の人口の約1パーセント。日本の人口の1%、100人に1人のすばらしい行動力、実行力をご自身が持っていることを思い出してください。宝くじに当たる人は宝くじを買った人だけ。“もし3億円当たったら”の話をしているだけの人たちは絶対に当たりません。皆さんがチャンスを手にしていることをぜひ知って欲しいと思います」
ソウダ・ユウスケ
1993年福岡県生まれ。元プロマジシャン。起業家。趣味はサーフィン。小学生のころにマジックを始め、大学在学中に自分の店を持ちプロマジシャンの道へ。その後起業家に転身し防犯システム会社や買取専門店、WISE JAPANなど11年間で計9法人13店舗の立ち上げに携わり総売り上げ21億円を計上。毎日3歳になる愛犬ダルメシアンのポップを連れて出社している
<会社概要>
WISE JAPAN AUTO GROUP
2017年設立。ゴールドコースト・ブリスベンを中心に中古車販売・レンタカー事業を展開。今年で創業6年目を迎える。21年コロナ禍に2号店を出店。メカニック常駐の自社工場を併設し、日本人特有の手厚いサービスを武器に年間取扱台数1500台を超える人気店に成長。23年10月にニュージーランド(オークランド)に3号店を出店予定(レンタカー・サービスのみ)。
●住所: 2A Ryecroft St., Carrara QLD 4211
●Tei: 0403-308-305
●Email: wisejapan.aus@gmail.com
●Web : www.green-u.com