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石を知らんと欲すれば、先ずは“石英”を知れ(後編)/トミヲが掘る!宝石大陸オーストラリア 第24回

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 さて、前回に引き続き、石英のさまざまな種類に触れていこうと思う。皆さん準備はいいだろうか。

採掘地によって色も模様もさまざまなジャスパー。三者三様のQLD州ゴールドコースト産

 石英の中でも不透明の物は、碧玉(ジャスパー)に分類される。これは単色でも産出されるが、基本的にはさまざまな色が混じりあって唯一無二の模様を創り出している物が珍重される。緑色に赤い斑点があるブラッド・ストーン、桃色を主としたロード・ナイト、クリーム色と紫色のムーカイトなどが人気だ。加工の仕方によって風景画のような風合いが出た碧玉はランドスケープ・ジャスパーとして知られる。

良質なジャスパーの中には光に通すと透き通る物もある

 主にオーストラリア東部で採れるサンダー・エッグは、球状の母岩の中央部分が星形の石英で形成された石。大きさはバスケットボール大から小指の先ほどの小ささの物とさまざまだ。

 サンダー・エッグの中の石英は透明もあれば半透明もあり、色もアメシスト、シトリン、スモーキー・クォーツとバラエティーは豊富。

 NSW州北部では緑と青、灰色が多めの物が多く、50キロを越える大物も出る。

QLD産のサンダー・エッグ/フォレスト・ジャスパー。中央部では写真のような緑色の流紋岩を母岩とした小粒の石英/玉髄が集まった物がよく採れる

 ゴールドコースト産は比較的大きく、拳大の黄緑や肌色の母岩の中にできる。同じQLD州マウント・ヘイでは深緑色の母岩に小粒の石英が集まってできた物が採れるが、これはレインフォレスト・ジャスパーと呼ばれる。QLD州北部のアゲート・クリークでは、中が赤と茶、外が肌色の物が採れる。サンダーエッグの中の石英は、透明もあれば半透明もあるなど、とにかくひと言でサンダー・エッグと言っても千差万別だ。

QLD州ロックハンプトンの西にあるヘイ山では小ぶりの石英を含んだ緑色のサンダー・エッグが採れる

 石英は、形成される温度によって結晶構造が変わる。低温で水分を含みながらゆっくりと冷やされると蛋白石(オパール)、高温から急激に冷やされガラス状になると黒曜石(オブシディアン)となる。

黒曜石。その名の通り、漆黒の石で、石器時代には矢じりやナイフに使われ人類の歴史に深く関わってきた

 黒曜石も不透明で真っ黒のアパッチ・ティアー、茶色のマホガニー・オブシディアン、白い斑点がある物はスノーフレーク・オブシディアン、虹色で透明な物はレインボー・オブシディアンといろいろな種類がある。更に、砂状の石英に地殻変動などで温度と圧力が加わり硬くなると珪石(クォーツァイト)となり、青緑色の半透明のものは緑石英(プレイズ)と呼ばれる。

北NSW州で採れる赤いクォーツアイト。宇宙を連想させるような独特の模様が特徴だ

 化石も、ケイ素を含むことで瑪瑙化(Agatised)、または、蛋白質化(Opalised)する。QLD州の内陸部からNSW州の北部、SA州の北西部にかけての広範囲に渡るアウトバックには、その昔、エロマンガ海(Eromanga Sea)があった。そのため、そのエリアに点在するオパールの産地では、エビや貝のオパールも見つかり、中にはSA州クーバー・ピディ(Coober Pedy)で見つかったオパール化した烏賊の背骨の化石のように億を越える値段で取引きされる物もある。

 かつてのエロマンガ海の周辺では植物や珊瑚などの化石も採掘され、中にクリスタルの晶洞や瑪瑙のような縞模様が入った物もある。

オーストラリアと言えばオパール。オパールも石英と同じ成分でできている。QLD州の物は鉄鉱石の中、SA州の物は粘土質の土壌にできる

 私たちが宝石と理解している数多くの石はケイ素を含み、言うなれば、宝石の親戚のようなものだ。石探しを始めたころの先輩の教えには「石を見て何だか分からなかったら、透明ならクォーツ、半透明なら瑪瑙(アゲート)、不透明なら碧玉(ジャスパー)の一種と思ってほぼ間違いない」とあった。それだけこのケイ素を基盤とした鉱物、石英の仲間は多いのだ。

 だからこそ、石英を知ることは、訪れる場所の地質学や歴史をひも解く鍵となり、知識が増えればそれだけ探す石の種類も増えて、良い採掘の結果につながる。結果が伴うと、石探しが楽しくなり、次の石探しのモチベーションも高まるという好循環を生む。とどのつまり、“石英を征する者は宝石探しを征する”という結論に至るのだ。

SA州クーバー・ピディ産、オパール化した貝殻の化石。この他にもイカやエビの化石がオパール化した物が採れることもある

 そんな石英の石言葉は、”エネルギーの浄化”。太古からパワー・ストーンと珍重され、ネガティブをポジティブに変える効果や邪悪な物を寄せ付けない効果があると信じられてきた。

 アボリジニの神話では神の思し召しの物質「マバン」として登場する。4000年前のエジプトでは、亡くなった王の指に甲虫スカラベの形にカットされた紫水晶の指輪をはめ、来世も王族に生まれ変われるよう祈願する護符として使われた。古代インドでは、七宝の1つとし崇められて仏像の玉眼に使われ、日本でも勾玉の材料として使用された。

 記憶に新しいところでは、今年5月の英国チャールズ3世戴冠式で使用された君主の宝珠と呼ばれる365個の宝石を使用した、球体のクラウン・ジュエルの中央には大粒の紫水晶が使われている。これらの例が示すように、石英は長い人類の歴史とも深く関わりのある石なのだ。

石英は、大昔は氷が石になった物だと信じられていた。確かにそんな感じではある

 最後に筆者の考えを少々。筆者は、地球を「赤ちゃんが大きな鍋で料理をしている」イメージと捉える。その心を説明しよう。料理と言っても、材料を計量もせずぶち込み、温度調整やかき混ぜもせずに放置プレイ。もちろん、出来上がった料理にはムラがあり、偶然においしくできることもあるが、そうでないケースがほとんどだろう。これは、宝石はある所にはあるが、ない所には絶対にないということの喩えだ。

 前回から2回にわたって、駆け足で石英と派生するさまざまな石について書いてきた。そこで得られた知識を生かせば、宝石のある所をみつけやすくなるはずだ。これを機に、石に興味を持つ人、石探し志す人が少しでも増えればうれしい。そうやって、さまざまな人の石との出合いの輪が広がっていく。

 次回からは、また宝石探しの旅に出よう。♪あ~、この国のどこかで私を待ってる石がある~♪ 豪州大陸、石探し……。これだから石探しは止められない。

このコラムの著者

文・写真 田口富雄

在豪25年。豪州各地を掘り歩く、石、旅をこよなく愛するトレジャー・ハンター。そのアクティブな活動の様子はYouTube(https://www.youtube.com)やインスタグラム(@gdaytomio https://instagram.com/leisure_hunter_tomio)に詳しい。宝探し、宝石加工に興味があれば必見。前・ゴールドコースト宝石細工クラブ理事長。23年全豪石磨き大会3位(エメラルド&プリンセス・カット部門)

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