オーストラリア労働党政権、再エネ大国を目指すが…
温室効果ガス削減に注力するオーストラリアの労働党政権が、10億豪ドルをかけてソーラーパネルの製造業を支援、育成する方針を表明した。総額400億豪ドルを投じる再エネ利用促進策の一環で、ソーラーパネルの国産化を推進する。
オーストラリアでは脱炭素化に必要な原料の資源は豊富だが、ソーラーパネルなどの製品は海外からの輸入に依存している。政権によると、オーストラリアでは3世帯に1世帯の割合でソーラーパネルが設置されており、普及率は世界で最も高水準にあるが、国産品は1%にとどまるという。このため、再エネのサプライチェーンの川上から川下まで一体で整備したい考えだ。
アンソニー・アルバニージー首相は「私たちは(温室効果ガス)実質ゼロに向けて中心的な役割を果たす上で必要な金属や重要鉱物をすべて持っている。エネルギーの生産や輸出の担い手としても実績がある。エネルギーと経済の変革に不可欠なソーラーパネルのような戦略的な製造能力(の向上)に投資することもできる」と語り、製造業も含めた再エネ大国を目指す方針を示した。
ただ、オーストラリアでは世界屈指の給与水準を背景に、製造業の国際競争力が低下して久しい。2000年代から10年代にかけての資源投資ブームで人件費が高騰し、自動車大手3社すべてが10年代に国内生産から撤退するなど、特に大量生産の工業製品のものづくりは既に衰退した格好だ。安い中国製が席巻するソーラーパネルの市場で、政権の思惑通りに国内で競争力の高い製品を造ることができるかは見通せない。
なお、アンソニー・アルバニージー首相とクリス・ボウエン気候変動・エネルギー相は3月28日、ソーラーパネル国産化の政策を発表する会見に出席するため、首都キャンベラからニューサウスウェールズ州ハンター地区の空港まで移動した際、それぞれ別々の空軍の要人輸送機2機に搭乗した。現地メディアが報じている。脱炭素を標ぼうする2人が、温室効果ガスを大量に排出するジェット機2機にわざわざ分乗したことについては、マスコミや野党から批判が出ている。
■ソース
Solar Sunshot for our regions(Prime Minister of Australia)
Ben Fordham smashes Anthony Albanese over photo of two Air Force jets(news.com.au)