2050年までに最大3,000万トン生産
温室効果ガスを排出しない次世代燃料として有望視されている水素をめぐり、オーストラリアは世界でも指折りの生産・輸出国を目指す方針だ。連邦気候変動・エネルギー・環境・水資源省が13日に発表した報告書「オーストラリア全国水素戦略2024年版」で指針を明らかにした。
前保守連合政権の下で初めて公表した19年版を5年ぶりに更新した。次の4つの目標と34の行動計画を掲げ、水素生産・輸出の世界市場をリードする「再生可能エネルギー大国」を目指す。
◇供給:世界的に価格競争力の高い水素を供給できる産業の育成
◇需要と脱炭素化:水素を軸とした脱炭素化を実現するため旺盛な国内需要を喚起
◇社会の利益:水素の恩恵についての地域社会の理解促進
◇貿易・投資・協業:貿易規模の拡大、決意を持ったパートナーシップの構築
政府は先に2024-25年度予算案で発表した総額227億豪ドルの新産業政策「オーストラリアで作られる未来」で、水素1キログラム当たり2豪ドルの税制優遇措置を明らかにした。同政策の法案は9日に連邦下院を通過し、上院での審議に移った。
オーストラリアは石炭や天然ガスの主要輸出国だが、政府によると世界的な温室効果ガス削減の流れを受けて、主なエネルギーの世界需要は2050年までに石炭が74%、原油が43%、天然ガスが42%、それぞれ減少する見通し。一方、水素の世界市場は50年までに1.4兆米ドルまで拡大すると予測した。報告書は「オーストラリアは莫大な経済的チャンスを獲得しなければならない」と指摘。水素を資源輸出の新たな主力商品と位置づける方針を改めて示した。
報告書によると、現時点で公表されている世界の水素プロジェクトのうちオーストラリア国内の事業が20%以上を占める。計画中のプロジェクトの規模は2,000億豪ドル以上と試算している。
報告書は2050年までにオーストラリア国内で少なくとも年間1,500万トン、最大で3,000万トンの水素を生産する目標を掲げた。オーストラリア産水素による温室効果ガスの年間削減効果は、同年までに二酸化炭素換算で9,300万〜1億8,600万トンに達する可能性があるという。
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