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混迷/日豪フットボール新時代 第139回 

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35歳とまだ若いベン・カーン。早期の快復を望みたい(ブリスベン・ロア提供)

 期せずして、今月もまたブリスベン・ロアについて書くことになった。というのも、ロアがクラブ史上、類を見ないような異常事態に陥っているからだ。

 前回登場したルチアーノ・トラーニは既にクラブを去った。取材時にはアシスタント・コーチだった彼は、直後にロス・アロイジ監督(当時)の電撃辞任で次の監督が決まるまでの暫定監督になるも、指揮を執った唯一の試合で1−8の歴史的大敗を喫した後に解任された。新たにベン・カーンが監督に就任するといったんはアシスタント・コーチに戻ったが、既に退任している。今季のロアの迷走は、全ては盟友ケビン・マスカットの誘いでアロイジがシーズン早々に“監督”の座をなげうち、上海海港の“コーチ”に就任したことに端を発している。

 早くから将来を嘱望(しょくぼう)されていたカーンの監督就任は、彼をよく知る筆者を含め多くの関係者に歓迎された。たとえ、すぐに結果につながらなくとも、長いスパンで若い監督を見守っていこうと周りが思い始めた矢先、またもや驚きの事態が起きる。

 突然、カーンが持病悪化による体調不良を理由に無期限の休養に入ったのだ。その事態を受けて、休養の少し前にAリーグの監督経験者としては意外な人事でアシスタント・コーチに招聘(しょうへい)されていたルーベン・ザトコヴィッチが暫定監督に“昇格”。かくして、実に今季4人目、昨季から数えると6人目の“監督”が誕生した。

 カーンの突然の休養やその直前のザトコヴィッチの招聘などはさまざまな臆測を呼んでいる。アロイジ体制でシーズンを悪くないスタートを切ったチームにも、この混乱状態が悪影響を及ぼすのは当然で、現在はリーグ8位と低迷。ファンやサポーターには「もういい加減にしてくれよ」との諦念(ていねん)が広がっている。

 今季からクラブ経営を預かるカズ・パターファタとザック・アンダーソンの2人の若き経営者がやらねばならないことはあまりに多い。カーンの休養がどれだけ続くのか、そもそも復帰の目はあるのか……。あまりに情報が限られていることがさまざまな臆測を生んでいる。クラブは早急に説明責任を果たし、ファンやサポーターの「いったい、このクラブはどうなるのか」という不安感を少しでも軽減してもらいたい。

 カーン個人は自他共に認める豪州フットボール界の有望株だけに近い将来復帰して、そのキャリアを仕切り直してもらいたい。彼の復帰のその先にこそ、このクラブが混迷から抜け出す一筋の光明があると信じたい。Get well soon, Ben!

植松久隆(タカ植松)

植松久隆(タカ植松)

ライター/コラムニスト。タカの呟き「カタールでアジア・カップが行われた。アジア王者を決める大会で、期待していた日豪戦は実現しなかった。両国共にまさかのベスト8での敗退で不完全燃焼に終わってしまったが、アジアの全体的なレベルが上がっていることを肌身で感じられたことを今後のチーム強化に生かしてほしい」





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