先日、5日間のサマー・スクールでクラシック・バレエを教える機会を頂き、充実した日々を過ごしました。このサマー・スクールは、クラシックだけでなくコンテンポラリーやジャズ、ピラティスなど他のジャンルのダンスもあり、講師もいろいろな分野から集まりました。
クラシックをメインにしている生徒が大部分だったので、僕にとってはとてもやりがいがある日々でしたが、非常に興味深い経験もしました。
その中でもジャズとコンテンポラリーの講師の「クラシックをメインにしている生徒は、何かを尋ねた時の返事のリアクションが薄く、意味が伝わっているのかどうかが分かりにくい。逆にジャズやコンテンポラリーをメインにしている生徒は自己主張が強く、何を考えているのか分かりやすい」という発言は特に興味深く感じました。
もちろん、この講師は内気な態度が悪いと言っているわけではなく、このようなダンスの分野での生徒の性格の違いが興味深いという意味で言っています。僕は内気な性格でクラス中に先生が質問を投げかけると、誰かが答えるのを待っているタイプだったので、この人が言わんとすることがよく分かります。
クラシック・バレエは、自由に踊れる機会はとても少なく、決められた振り付けの中で自分を表現していく芸術です。音の取り方、指先のわずかな動き、姿勢、歩き方、大きな跳躍やダイナミックなテクニックも大事な表現のうちの1つです。世界的に有名なダンサーでも、日々、バレエ・マスターや振付家とリハーサルをして、彼らに言われたことを表現しながら自分のベストの踊りを求め続けるといった過程を何十年もこなしています。
更には、コールド・バレエとなると個々の踊りより、群舞で周りと合わせて踊る協調性が重要となるため、自分の意見を言っても聞いてもらえないことがよくあります。
そのような環境で、自分をしっかり持ちながら、言われたこともしっかりこなすことは、バレエ・ダンサーにとっては必要不可欠なスキルなのです。とはいうものの、踊りまでシャイなダンサーがいるのも事実。そういうダンサーには、せめてソロやクラスなどでは端っこで踊るのではなく、しっかり周りを見て、自分の大好きなバレエを思う存分楽しく踊って欲しいと思います。
このコラムの著者
岩本弘平/QLDバレエ団シニア・ソリスト
兵庫県伊丹市出身。11歳からバレエを始め、18歳でメルボルンのオーストラリアン・バレエ・スクールに入学。その後、ロイヤルNZバレエ団を経て、2018年にQLDバレエ団に移籍。趣味はウクレレ、スポーツ観戦、睡眠、日本のお笑い。祖母の手作り水餃子の味を懐かしみながら、大好きなウィスキーのグラスを傾ける。