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嗅覚を通して感覚を刺激するアート作品/NSW州立美術館ボランティア・ガイド便り

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執筆者=ファーズみどり(NSW州立美術館日本語ガイド)

Ernesto Neto ‘Just like drops in time, nothing’ 2002, polymer stretch fabric, spices, Art Gallery of New South Wales © Ernesto Neto

 NSW州立美術館北新館を訪れた際に、ふと何かの匂いがすることにお気付きでしょうか。レストランでカレーを作っているのかな、と思う人もいらっしゃいます。しかし、これはレストランから放たれている香りではないのです。リオ・デ・ジャネイロ生まれのブラジル人アーティスト、エルネスト・ネトの作品によるものです。

 “Just Like Drops In Time, Nothing”(時の中の雫のように、何もない)という題名のインスタレーション作品は、北新館地下1階にある「Making World展」の奥の部屋に展示されています。訪れた人は作品を見る前から、その香りに興味を覚え、想像力を膨らませていきます。

 アーティストは、作品のスケールの大きさ、色や形のしなやかさ、美しさに加えて、空間を香りで満たし、私たちの嗅覚を通して感覚も刺激することをねらっています。さまざまなスパイスがポリアミド生地、別名ストッキングに詰められて地面に置かれたり、床スレスレに浮いていたり、または見上げるほど高くつるされています。地面に置かれたストッキングの周りには、網目からこぼれ落ちたスパイスが奇麗な輪を作っています。

 来場者は他の作品鑑賞では意識しない嗅覚を使って、作品の周りを歩き回り、作品を楽しむという一風変わった作品の鑑賞方法を試みています。黄色はターメリック、赤はパプリカとなじみのある香辛料など6種類が使われています。

 同作品は2002年、当美術館の招きでアーティストがニューキャッスル大学に滞在中に制作されました。それまでのアートの原則は、作品は入手可能で収集可能なオブジェでなくてはならないということでした。ところがストッキングは簡単に伝線したり、たるんだりして永久にその形を維持することはほぼ不可能です。永続永久性、独自性も覆した作品として注目され、当美術館のコレクションに加えられました。

 ちなみに今回の展示にあたり、ストッキングもスパイスも新しくなっています。使われているスパイスは、ペッパー、クミン、ターメリック、パプリカ、クローブ、フェヌグリィークです。さて、あなたは全部お分かりになるでしょうか。

南館(本館)無料日本語ハイライト・ツアー

日時:毎週金曜日11AM~
Webwww.artgallery.nsw.gov.au/whats-on/events/japanese-language-tours-south-building

北館(新館)無料日本語ハイライト・ツアー

日時:毎週日曜日1PM~ 
Webwww.artgallery.nsw.gov.au/whats-on/events/japanese-art-highlights

Art Gallery of NSW

ニュー・サウス・ウェールズ州立美術館。南本館に加え、日本人建築家ユニットSANAAのデザインによる北新館が2022年12月に新築オープン。常設展入場無料。
Web: www.artgallery.nsw.gov.au



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