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聖地/日豪フットボール新時代 第142回

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地道な活動は、写真のようなチラシを配って地元自治体に対しての署名活動を呼び掛けたり、地元選出のあらゆるレベルの政治家への陳情など多岐に渡る(筆者撮影)

 フットボールの“聖地”と言えば、イングランドのウェンブリー、ミラノのサンシーロ。日本ならさしずめ国立競技場か。国単位でなくても、ある程度の規模の都市には、その土地のフットボール文化を象徴するフットボール専用スタジアムが規模は違えど存在するものだ。

 「ブリスベンにはサンコープ(ラングパークとも)がある」と言う人もいるだろうが、サンコープ・スタジアムは国内有数の球技専用スタジアムであってもフットボール専用ではない。主にラグビー・リーグを中心に使われるスタジアムで、Aリーグのブリスベン・ロアもホーム・ゲームを開催してはいるが、凋落(ちょうらく)したロアの人気では4万人収容のスタジアムには閑古鳥が鳴く。

 フットボール最優先で、現在のフットボール人気の身の丈に合う規模の専用スタジアムがブリスベンには必要だと、長くQLDフットボール界隈では囁かれ続けてきた。そんな中で、降って湧いた2032年ブリスベン五輪。そのインフラ整備計画に新しいフットボール・スタジアム建設が盛り込まれることが大いに期待されたが、実現しなかった。

 五輪でも人気競技のフットボールは、組み合わせ次第では4万人のスタジアムを容易に埋める。ただし、五輪のフットボールのグループ・リーグの試合は開催都市以外でも行われることもあり、ブリスベンに五輪のためにフットボール・スタジアムを新たに整備する必要なしと判断されてしまった。

 これは、ブリスベンのフットボール事情を知る者から見れば、甚だ近視眼的な判断であることは論を待たない。もし、五輪開催後のレガシーを重視するならば、ずば抜けた競技人口に見合う専用スタジアムを持たないブリスベンのフットボール界に2万人規模のスタジアムを遺すのは何よりも理に適うはずなのだが……。

 ラグビー・リーグやAFLには喜んでお金を出す当地の州政府は、なぜか五輪競技で世界で最も人気のあるフットボールとなると財布の紐が固いのはどういう訳だろうか。

 そんな状況下でも、フットボールを心から愛し、この地のフットボールを発展させたいと強く願う一部有志は、署名活動や政治家へのロビーイングなどあらゆる啓蒙活動を行い、現在あるペリー・パーク・スタジアムの大幅改装などでブリスベンの地にフットボールの聖地が誕生するその日まで、弛まぬ地道な努力を続けていることだけは、これを機にぜひ、気に留めてもらいたい。

植松久隆(タカ植松)

植松久隆(タカ植松)

ライター、コラムニスト。タカの呟き「パリ五輪が迫っている。フル代表の女子は既に日豪共に出場が決まっている。U23代表で争う男子は、豪州U23代表のオリルーズが無惨な敗退で出場権を逃したが、日本はきっちり出場権を獲得。豪州女子、日本男子はメダル獲得が現実的な目標になるが、少しでも良い色のメダルが獲れるように願いたい」





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