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楽じゃない! だけど全力で楽しんだオーストラリアでのワーホリ生活─女優山本愛莉さん、ワーホリビザでシドニーライフを満喫

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 ミュージカルの子役から経歴をスタートし、「地域」をテーマにした自主制作映画の祭典「第二回賢島映画祭」で助演女優賞を受賞するなど、映画俳優として活躍する女優の山本愛莉さん。2024年7月までワーキングホリデーとしてシドニーに滞在した山本さんに、これまでの芸能活動とシドニーでの生活について話を聞いた。
(インタビュー:阿部慶太郎 、撮影:馬場一哉)


──子役から活動されてきましたが、どのようなきっかけで芸歴をスタートされたのかお聞かせください。

「小学校4年生の頃にお友達がミュージカルに出ていて、その舞台を観に行ったのがきっかけです。とても感動して子ども劇団に入り、年に4回舞台に立たせていただき、その後テレビや映画の世界に進みました」

──当時の山本さんはどのような子どもだったのでしょう?

「負けず嫌いでかなり生意気だったと思います。ただ、何事も一生懸命必ず最後までやりきるということだけは心掛けていました。ただ、当時学校に全然行けなかったんですよ。毎日レッスンが夜10時に終わって、そこから家に帰るというような生活で、自分が思い描いていたキラキラした活動とは全然違うなと感じていました。ただ、両親が応援してくれていたこともあって頑張りました」

──2013年に出演した映画「祭に咲く花」で第2回賢島映画祭の助演女優賞を獲得されました。

「当時、監督が関西の女の子を探しているということで、知り合いの伝手で話が回ってきました。自主制作で予算もあまりなかったため、監督の家に住み込んで1カ月撮影をしたのでバタバタでしたので、気が付いたら助演女優賞をいただけていたというのが私自身の感覚です。助演女優賞を取ったこと自体発表で知ったくらいなので、トロフィーも受け取りに行けず、最初は全く実感がわかなかったですね」

出稼ぎワーホリが話題になってるけど実態は !?

──コロナウイルスによる影響で芸能活動はもちろん、生活も一変したと思いますが、山本さんの活動にはどのように変化がありましたか?

「お客さんと触れ合うお仕事やイベントや舞台もできなくなりましたし、映画も撮影まではマスク着用が絶対で、リハーサルもマスクをしながらだったので、ぶっつけ本番に近かったことも多かったです。また接触してはいけないという制約もありなかなか難しいものがありました」

──そんな中、ワーホリで来豪しようと思われたきっかけは何だったのでしょう。

「ずっと海外で生活したいという気持ちはあったのですが、年齢制限でラストイヤーということで思い切って1年間お休みをいただき、自分と向き合う時間を作ろうと思いました」

──オーストラリア、それもシドニーを選んだ決め手は何だったのでしょう。

「趣味でサーフィンやるのでそうなるとオーストラリアかなと。あとは天気ですね。綺麗な海もあるし、天気はいいし、気候も温暖というところが決め手でしたね」

──実際来られて、印象はいかがですか。

「イメージそのままでした。ただ、やっぱり現実は厳しかったです。英語もあまり話せない状態だったので、言語の壁にまずぶち当たりました。最初はホームステイ先とも合わず、生きた心地がしませんでした」

──昨今、日本では出稼ぎワーホリというのが話題にもなっていますが、実際生活されてみてそのあたりの印象はいかがでしたか?

「実際には、仕事難民になっている人が多いと思うんですね。私も仕事が全然見つからなくて困りましたし、友達にもそれが理由で帰国する人がいました。ただ、私は1年限定だからこそと思い、頑張りました。こちらでは働きたいお店に直接履歴書を渡しに行くスタイルが主流ですが、私はなるべく同じ店に通い、ご飯を食べて、どんな雰囲気なのかをしっかりチェックした上で、働きたいと思った店にレジュメを渡しました。その結果、いきなりトライアルから採用が決まったのです。足を運んで、覚えてもらうというのはとても大事なことだと思います」

日本の役者は演技が大きい !?

──仕事を見つけられた後は、役者としてのレッスンを受けられたと聞いています。

「仕事も見つかり、生活のルーティンも決まってきた後、自分がやりたいと考えていたお芝居のワークショプに参加することにしました。オーディションを模し、いかに映像の中で自分を表現するかという形のワークショップで6週間ほど通ったのですが、大変ながらもやりがいがあり、心の安定につながりました」

──日本とのスタイルの違いを感じられましたか。

「全然違いましたね。台本の書き方も違いますし、特に先生に言われたのが、日本人はお芝居が大きい、こちらではもっとリアルな演技をするんだということでした。私からするとオーストラリア人の方が大きいと思っていたくらいだったので、そこはすごく驚きました」

──日本人の芝居が大きいという点に関してもう少し詳しくお聞かせください。

「そうですね。おそらく演技がオーバーなのだと思います。実際、映像を通して自分の表現を見た時に、何となく嘘くさく見えたりもしました。英語が上手に喋れない分、感情などでカバーしようとしたり、リアクションを大きくしたりとか、海外ドラマをイメージしてみたりしましたが、やはり映った時の自分は違うなと。そこからは作ることをやめて、ただ単に話しているだけのような感じで演じたら、そっちの方が絶対いいよと先生にも言われました。自分が思ったように、ありのまま話した表現の方がリアルなのだなと思いました」

──インスタライブなどSNSの活動も行っておりますが、日本の俳優仲間やファンとのつながりは、シドニーでも心の支えになりましたか?

「すごい支えになりました。最初のうちはサバイバルというか、生きていくのに必死だったため、なかなか活動もできなかったのですが、余裕が出てくると共にインスタライブを始められるようになりました。せっかく海外にいるので日本の方々にどのようなライフスタイルを送っているのか届けたいなと思ったのがきっかけですが、いいことばかりではなく、そうではない面も含めてリアルなオーストラリア生活を届けることを心掛けました。その時に思った気持ちを吐き出すこともあったのですが、頂いたコメントにいつも救われていました」

ローカルのスーパー「coles」でのお仕事

──山本さんはレストラン以外にも、ローカルのスーパーマーケット「Coles」でもお仕事をされていたんですよね。日本人で働いている人はほとんど見掛けたことがないので驚きました。

「普通にアプライしただけではなかなか入れないのですが、ちょうど知り合いがコールスで働いていて、人が足りないからっていう理由で声を掛けていただきました」

──ワーホリで来た日本人が、ローカルのスーパーマーケットで仕事をするというのはなかなかできないことだと思いますが、ローカルの職場で仕事をするのはどういう感じでしたか?

「毎日緊張していましたね。そんなに流暢に英語を話せるわけではないので、パッションが一番大事なのかなと思っていて頑張りました。品出しの時などには、お客さんに商品の場所を聞かれる機会が多かったのですが、こちらがたどたどしくても、皆さんすごく優しく接してくださったのが印象的でした。職場でも日本人は1人だけだったので、会話はもちろん全部英語なのですが、分からなくても言いたいことをゆっくり話してごらん、と辛抱強く聞いてくれたので、業務自体にミスも起きませんでしたし、とても良い経験になりました。また、こちらの働き方はきっちりしていて、時間になったらすぐに上がらされるので残業もありませんでした。プライベートと仕事がすごくはっきりと分かれているのだなと感じました」

自分の思っていることをきちんと主張した上で相手の話も聞く

──約1年間のワーホリ生活を経て、女優として、人間として、変わったことは何か教えていただけますか?

「この1年間で確実に成長したなという実感はあって、女優としてもやっぱり幅が広がったんじゃないかなと思います。海外に1人で来ているので頼れるのは自分だけですし、実際に生活をしていかなければなりません。仕事が見つからずお金もどんどんなくなっていく中、どん底の気分を人生で初めて味わったんですが、自分との向き合い方を見直すなど、メンタル面はすごく鍛えられました。日本にいると生活に困るような体験ってなかなかありませんし、なかなか経験したことのない感情をたくさん集められたような気がします」

──海外にいると自分と向き合う時間が増えますし、日本人としての自分に気付く機会も少なくないですよね。

「日本の常識が、海外では非常識なこともあるんだなっていうのはすごく感じました。日本人の場合、相手が傷つかないようにダイレクトに伝えず表現をするというのが、日本の美学でもあると思うのですが、それではここでは物足りないというか、きちんと主張をしないからシャイなんだというような捉われ方をすることが多くありました。この1年間、自分の思っていることを言葉としてきちんと主張しないと誰も認めてくれないということを強く感じました。自分が思っていることはきちんと伝えた上で、相手の思っていることも聞くということが大事だなと思います。一方で、日本に帰った時にはちょっと強くなり過ぎるのではないかという不安もあります。だから自分がどの国のどのポジションにいるかということは、整理整頓していくべきなのかなとは思います」

──女優として羽ばたいていくステップとしての1年間だったと思いますが、今後ここでのご経験を踏まえてどのような女優になっていきたいですか。

「海外で活動していきたいという気持ちは昔からずっとありましたが、たくさんの人にサポート頂き、実際に仕事につながったケースもありました。今後、女優としてもそうですけど、自分に正直に、偽りのないありのままの山本愛莉でい続けることが大切だと思います。そして女優業の時にはいろいろな引き出しを開けて、違う山本愛莉を出していけるような、そんな感情豊かな女優になっていけたらいいなと思っています」

──帰国後の目標や夢があったら教えてください。

「まだまだ頑張れるんだ自分は、ということを再確認できたので、日本に帰ったらもう一度芸能活動に力を入れ、自分がやりたいことに集中してたくさんの活動をしていけたらいいなと思っています」

──記事を読まれている方の中には、ワーホリで海外に出ようか迷っている方もいるかもしれません。そのような方へメッセージをお願いします。

「悩んでいるくらいだったら来た方が良いと思います。ただ、1年間って長いようですごく短いので、より充実させるためには少しでも英語を学んでおくことと、あとはきちんとある程度のお金を持ってきた方がいいかなと思いました。自分の夢を叶えられる場所だと思うので、ぜひたくさんの人に来てもらえたら嬉しいなって思います」

──本日はありがとうございました。

(6月18日、シドニー郊外ピアモントで)

取材を終えて
 子役から芸能活動を開始し、少しずつではあるが着実に女優としてのキャリアを積み上げてきた中で、海外での活動をしたいという思いから、コロナ禍を経てようやく実現したオーストラリアでのワーキングホリデー生活。1年に満たない期間ではあるが、芝居のワークショップへの参加や初めての海外生活は彼女の今後のキャリアや人生にとって必ずや良い糧になるであろう。インタビュー中の彼女の笑顔からはオーストラリアでの経験の充実さが伺い知れた。(阿部慶太郎)





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