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星野佳路が説く! ニュージーランドの超人気ハンバーガー店「ファーグバーガー」は、なぜ世界トップ・クラスの売り上げを誇るのか

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 日本の夏、南半球はまさにスノー・シーズン。そんな南半球のスノー・シーズンに毎年オーストラリア、ニュージーランドを訪問するのが、日本を代表するリゾート会社、星野リゾート代表の星野佳路氏。南半球のスノー・リゾートを歴訪する星野氏が特に愛する飲食店が、ニュージーランドのスノー・リゾートの玄関口として知られるクイーンズタウンにある行列店「ファーグバーガー」だ。平米あたりの売り上げ世界一とも言われるバーガー店の成功の秘訣について星野氏に話を聞いた。

(聞き手:作野善教=doq代表)


作野:星野さんが初めてファーグバーガーに来られてから、どれぐらいになりますか?

星野:もう13年ほどになりますね。

作野:今も大人気店ですが、当時と比べてどのような感じですか?

星野:行列の感じは当時も今も変わらないですが、クイーンズタウン自体の観光客がどんどん増えていることもあって、朝方までお店がオープンしているんです。朝8時ごろから始まって夜中までずっと行列。

作野:すごいですね。

星野:ある時気になって調べたら、平米あたりの売り上げが世界で一番高い店らしいということで、世界でも注目されている店だと知りました。それにもかかわらずオーナーは決してここから動かない。

作野:2店舗目、3店舗目を出せばどんどんビジネスも大きくなる可能性があるにもかかわらず出さないと。

星野:ええ、もちろんいろいろな話はあって、その都度検討はするのですが、結局は同じ質のものをコピーできるかというところに行き着く。クオリティーへのこだわりがすごいんですよ。で、何かがやっぱり欠けていると感じた段階で「NO」と言ってしまうという。

作野:ものすごいこだわり、かつローカルのプロダクトを使った結晶がこのバーガーなのですね。

星野:そうそう。

クイーンズタウンの「マスト・イート・バーガー」

作野:それにしてもあまりにも人が多いですよね。17時10分時点でもう大行列。

星野:ええ、これが朝から夜中まで続くんです。売り上げ高も強烈だと思いますよ。歩いてすぐのところに大手のバーガーチェーンもありますが、客の数も比較にならない。ここは、クイーンズタウンに来たら絶対食べなきゃならないマスト・イート・バーガーなんです。

作野:クイーンズタウンにもいろいろなお店がありますが、ここだけが異様に混んでいます。

星野:やはりクイーンズタウンの成長と共に育ってきたのが大きいでしょう。オーナーのこだわりは一貫してクオリティー、質なんです。どんなに忙しい時でも、どんなに大変な時でも常においしさを追求し続けてきた。そしていつの間にかクイーンズタウンに来たら食べなきゃいけない「マスト・イート・バーガー」に育った。ブランディングという観点では、長い時間は掛かっていますが成功例ですよね。投資家目線で見てしまうと、3年でリターン、7年で上場などという話になりがちなのですが、彼は上場するつもりもなければ、自身がインタビューを受けるつもりもない。

作野:なるほど。

お金よりも大事なもの

星野:おいしいハンバーガーを出し続けようという、ハンバーガーに対する愛情。それが投資、ビジネスを超えているわけなんです。だから、どんな儲け話を持ち込まれても断ってしまう。そうとしか考えられない。

作野:お金よりも大事なものがあるということですね。それがファーグバーガーに表れているという。

星野:ええ、ファーグバーガーは食べると分かるのですが、大きさはあるけれど全部食べてもあまりもたれないんです。それが不思議で、なぜかとオーナーに尋ねたことがあるのですが、トータルの脂を減らすなど1つひとつの素材へのこだわりだと言っていました。

作野:素材が良いからもたれない、バーガーでありながらヘルシー・チョイスというわけですね。

星野:はい、ただヘルシーにこだわっている感じはあまりない。けれど素材の質を良くした結果ヘルシーになっているし、僕は客観的に見てそれが売りになっていると思います。

作野:先ほどからお客さんを見ていると、老若男女、バランスよく来ていますね。

星野:クイーンズタウンに来たらやはりこの店で食べないと観光は完結しない。そのようなレベルまで来ていますよね。

バーガーの素材自体がそれぞれ店になっている

星野:このビジネス・モデルで面白いのは素材の1つひとつが店として連なっている点です。ファーグバーガーの横にはベーカリーやブッチャーがあるのですが、実はベーカリーのパンも肉もファーグバーガーの素材の1つなんです。彼はハンバーガー屋自体は横展開しないんだけど、素材を1つひとつを店にしちゃっているわけです。

作野:非常にスマートなビジネスですね。

星野:ベーカリーの売り上げの4割はファーグバーガーから得ている。クイーンズタウンで完結しているため、固定費をここだけで賄えているのです。

作野:なるほど。このファーグバーガーが10年後も同じようなお客様を引き寄せ続けるためにはどうしたら良いのでしょう。

星野:ビジネスではより利益を上げようと改善を目指しても、顧客にとって期待外れになるケースが結構あるんですよ。この店のオーナーはよく分かっていると思いますが、ファーグバーガーのブランドへの期待を外さないことが僕は大事だと思います。今までやってきたことをコンスタントにやり続けるのは意外に難しいことですから。

作野:10年後、星野さんとクイーンズタウンに来た時にも同じファーグバーガーであり続けて欲しいですね。本日はありがとうございました。

(8月24日、ニュージーランド・クイーンズタウンのファーグバーガーで)

■Fergburger





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