執筆＝花咲三起子（NSW州立美術館日本語ガイド）
この夏、NSW州立美術館では中国を代表する現代アーティスト、ツァオ･フェイのオーストラリア初の大規模な個展「My City is Yours（私の街はあなたのもの）」が開催されています。
ツァオ･フェイは1978年に広州で生まれ、現在は北京を拠点に活動しています。20年以上にわたって中国の急速な都市化、グローバリゼーション、デジタル革命を記録し、映画や写真、大規模なインスタレーションで現代の大都市のエネルギーを表現し続けています。2023年にはArtReview誌の「アート界で最も影響力のある10人」の1人に選ばれ、非常に注目を浴びているアーティストです。
Naala Badu北新館地下2階の会場は足場の組まれた建設中の建物のような外観。エントランスを抜けるとそこには不思議な街並みが現れます。中央広場、劇場、レストラン、工場など、中国の最近の都市変革で生まれた最新の、それでいてどこか懐かしいような街並みです。そして、この中に彼女が常に追い求めている2つのテーマ「都市」と「テクノロジー」にインスパイアされた、ネットアート、写真、ビデオゲーム、バーチャルリアリティーなど1990年代後半から今日までの主要な作品が一堂に会します。
Cao Fei ‘Nova’ 2019, single-channel HD video, colour, sound, 97:13 min, 2.35:1 © Cao Fei. Courtesy the artist, Vitamin Creative Space and Sprüth Magers
中でも、特にここシドニーにこだわった新しい3作品が見どころです。シドニー在住の人びとがダンスする様子をヘイマーケット地区やバーウッド地区で撮影した「ヒップホップ；シドニー2024」、2021年に惜しまれながら閉店した老舗中華レストラン「マリーゴールド」の店内を再現した作品「グッドバイ･マリーゴールド」、そしてもう1つのお薦めは、インスタレーション作品「ゴールデンワトル2024」。これはシドニーでアーティスト活動をしていた、彼女の亡き姉、シャオユン（1971〜2022）に捧げられた作品です。シドニーは広州の姉妹都市でもあり、ツァオ･フェイにとってシドニーは特別なつながりを感じる場所なのでしょう。
あまり難しく考えずにこの街へ足を踏み入れてみてください。大人も子どももそれぞれに現実世界に生まれたファンタジーに浸って何かを発見し、感じることができるでしょう。この夏の忘れられない思い出となるのではないでしょうか。
同展覧会は日本語ツアーを行っていませんが、私たち日本語ガイド･グループお薦めの展覧会です。ぜひ足を運んでみてください。
「Cao Fai：My city is Yours」展
会期：開催中～4月13日（日）
会場：Naala Badu（北新館）地下2階
入場料：$35ほか（12歳未満は無料）
特別展「マグリット」
会期：開催中～2月9日（日）
会場：Naala Nura（南本館）地下2階
入場料：大人$35ほか（12歳未満は無料）
【マグリット展の無料日本語ガイド･ツアー】
開催日時：毎週日曜日11AM、会期：開催中〜2月2日（日）、集合場所：展覧会会場入り口
約1時間のツアーで無料、予約不要
常設展の無料日本語ハイライト･ツアー
【Naala Badu（北新館）】
開始時間：毎週日曜日1PM、集合場所：エントランス･パビリオン
【Naala Nura（南本館）】
開始時間：毎週金曜日11AM、集合場所：インフォメーション･デスク付近
両ツアーとも約45分間、無料、予約不要
お知らせ
●2024 年4月、NSW州立美術館の2つの建物に先住民の言葉の新しい名称がつけられました。
「これらは先住民の知識と言語への深い敬意とともに、当美術館の場所の特異性と歴史の重なりを認識するものです」とマイケル･ブランド館長は語る。
Naala Badu（ナーラ･バドゥ 北新館）“seeing waters” 水辺を臨む
Naala Nura（ナーラ･ヌラ 南本館 ”seeing Country” 大地を臨む
Art Gallery of NSW
ニュー･サウス･ウェールズ（NSW）州立美術館。南本館に加え、日本人建築家ユニットSANAAのデザインによる北新館が2022年12月に新築オープンした。常設展は入場無料。
開館時間：10AM～5PM（水のみ10PMまで）。イースター･フライデー（25年4月18日）は休館。
Web: www.artgallery.nsw.gov.au
日本語サイト：www.artgallery.nsw.gov.au/visit/plan-your-visit/information-in-other-languages/japanese
