キャッスルメイン・パーキンス・ブリュワリー/ミルトン

広大な豪州には多くの御当地ビールがある。NSW州のトゥーイーズ(TOOHEYS)、VIC州ならVBことビクトリア・ビターなど。
ブリスベンCBD近隣の人気サバーブ、ミルトンの駅前にあるレンガ造りの年季の入った建物は、時代がかったキャラクター「Mr. FOUREX」と大きな「XXXX」のサインからも分かるように、QLD州を代表するビール「XXXX」を醸造するキャッスルメイン・パーキンス・ブリュワリーだ。
1924年から変わらず、同じ場所でご当地ビールを作り続けている。意外に知られていないが、ここでは工場見学に加え、併設のパブででき立てビールを楽しめるので、左党の人はぜひ出掛けてみて欲しい。
オージーのビール好きはかなりのものだ。実に多種多様のビールがあり、お気に入りの1本を決めるのもひと苦労。酒屋(liquor storeまたはbottle shop、俗語でbottle-o)で色とりどりの缶(tinnie)や小瓶(stubby)が並ぶのを眺めるだけで楽しくなる。
そんな国のビール業界が、実は日系企業の寡占状態なのをご存知だろうか。前述のキャッスルメイン・パーキンスは、この国のビールの祖の名を冠した人気のJames Squireなど多くの人気ブランドを有する御当地企業ライオンが所有。そしてその親会社はキリンビールだ。VBやカールトン・ドラウトなどのカールトン&ユナイテッド(C&U)はキリンの不倶戴天(ふぐたいてん)のライバル、アサヒビールの傘下にある。実に、ライオン(キリン)とC&U(アサヒ)で全豪のシェアの85%を占める。
極言すれば、XXXXを飲むと一番搾り、VBを飲むとスーパードライを飲むのと同じお金の行き先になるということ。そう思って飲むとパブで飲むビールの味が変わってきそう……ってことは、さすがにあるまいが。
ちなみに、XXXXは書くのを憚(はばか)る伏せ字なんかではなく、ビールの強さをXで表現したこと由来で「フォーエックス」と読むのが正解。

植松久隆(タカ植松)
文 タカ植松(植松久隆)
ライター、コラムニスト。ブリスベン在住の日豪プレス特約記者として、フットボールを主とするスポーツ、ブリスベンを主としたQLD州の情報などを長らく発信してきた。2032年のブリスベン五輪に向けて、ブリスベンを更に発信していくことに密かな使命感を抱く在豪歴20年超の福岡人