パラリンピック入りを目指すパワーチェア・フットボール(電動車椅子サッカー)日本代表がブリスベンで掴んだ世界への道/日豪フットボール新時代 第159回

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試合後の日本代表チーム。選手、スタッフ、家族が一丸となってのブリスベン遠征で勝ち取ったW杯出場権と共に凱旋帰国する(Photo: Taka Uematsu)

 パワーチェア・フットボール(電動車椅子サッカー)のアジア太平洋選手権「APO Cup」がブリスベンで開催された。娘が所属するクラブに同競技のチームがあり、いつか見てみたいとは思っていたが、平日の日中で無理と諦めていた。そこに来て「タカさん、これ興味あるでしょ」と友人から開催情報のメールが届き興味が再燃していたところに、最終日の当日になって仕事の一部がキャンセルになる“天啓”。慌てて試合会場のNISSANアリーナへと車を走らせ、NZとの準決勝の後半開始になんとか間に合った。

 その準決勝を危なげなく突破した日本は、来年に予定される同競技W杯の出場権を獲得。同日午後5時からの決勝戦に駒を進めた。決勝の相手は地元豪州代表、その名もパワールーズ(Poweroos)。今大会予選でも2戦2分と最大のライバルだ。

 決勝まで時間が空くので、一旦、帰宅。付け焼き刃ながらいろいろ競技について勉強して、さっそく観戦した感想と決勝戦の告知をFacebookに投稿すると、すぐに日本電動車いすサッカー協会(JPFA)公式ページにシェアされて恐縮しきり。帰宅ラッシュの渋滞にはまってキックオフを逃してしまったが、試合はアジア・オセアニア王者を決めるのに相応しい緊張感あふれる展開。2点を先行され、後半1点を返してからは試合終了のホイッスルが鳴るまであきらめずゴールをねらい続けた日本だったがわずかに及ばず、1─2の惜敗で悲願のタイトルを逃した。

 試合後に三上勇輝主将も「半年掛けて準備してきただけに優勝を逃した悔しさもあるが、多くの人に支えられて未来につながるW杯の切符を得られたのは大きな成果」と語った。選手たちも試合終了後に一瞬の悔しさを見せるも、その後は笑顔で豪州代表の健闘を称え、肩を並べて写真に収まった。

 いやはや、この競技、想像のはるか斜め上をいくおもしろさ。あの重いパワーチェアが所狭しと動き回り、長いキックはスピンして勢いを付けて蹴る。字面じゃなかなか伝わらないが、かなりエキサイティング。

 そんな同競技だが、まだパラリンピック競技に入っていないのは驚きだ。ぜひ、近い将来にパラリンピックに正式採用されることを願いたい。もし、そうなって、7年後のブリスベン・パラリンピックでパワーチェア・フットボール日本代表をサポートできたらなんて幸せだろう──。そんな新たな夢に出会えたフットボールがつなぐ縁をこれからも大事にしていきたい。

植松久隆(タカ植松)

ライター/コラムニスト。タカの呟き「今回、アポなしで、しかも大事な試合の惜しい敗戦の直後の突撃取材にもかかわらず、快くご対応頂いたJPFA荻野事務総長をはじめとした選手・スタッフの皆様、悔しい試合の直後でも競技への熱い思いを語ってくれた三上勇輝選手。この場を借りて改めて御礼申し上げます。」





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