豪州ビザ最新事情
コロナ禍で影響を受けるポイント制技術移住ビザ
2020年にCOVID-19の影響を最も受けたビザの1つが、ポイント制の技術移住ビザでしょう。サブクラス189、190、491などがありますが、189ビザに関してはスポンサーを必要とせず完全に自力で申請を行うビザであり、多くの学生がこのビザ取得を目指して日夜勉強に励んでいます。そして、190及び491ビザは州・準州にスポンサーとなってもらいノミネーションを受けることで申請できるビザです。
190ビザは189ビザ同様に永住ビザで、491ビザは暫定ビザになりますが、ビザ申請上の条件に加え、専用職種リストや滞在条件など州・準州独自の条件が設けられています。州・準州からノミネーションを受けることで190ビザの場合は5ポイント、491ビザの場合は15ポイントを加算できます。指定する州・準州にもよりますが、189ビザ申請で対象とされるMLTSSLリスト(中長期職種リスト)と比べ、幅広い職種が対象とされるため、これらのビザを狙う人が年々増えています。
上記のビザは、SkillSelect(スキルセレクト)を通じてEOI – Expression of Interest(関心表明)の申請を行い、招待されて初めてビザ申請が可能になるわけですが、これまではより高いポイントを得ていることで招待される可能性が高くなるとされていたものが、COVID-19の影響により、指定する職種が重要視されることとなりました。連邦政府の方針の下、医療関連、福祉関連、エンジニア関連など特定の職種を指定する申請者に絞って限定された部数のみ発行されている状況にあります。
EOIの申請は最大2年間保管されることとなり、招待状はその間に毎月行われるラウンドと呼ばれる選考会で選ばれた申請者に対して発行されます。2020年9月時点でEOI申請者の累計は、サブクラス189:約7万7000人、サブクラス190:約10万4000人、サブクラス491:約4万5000人とされています。そんな中、20年7月以降に発行された招待状の合計はサブクラス189が990人、サブクラス491で420人と発表されており、毎月の発行部数は軒並み減少傾向にあります。また、10月のラウンドではサブクラス189が30人、サブクラス491が80人に留まりました。
コロナ禍においては国民の健康維持と経済復興が政府にとって最重要課題であり、今後さまざまな形で影響を受けた豪州経済をどのような形で復興させるかが政府の腕の見せ所となります。この未曾有の出来事を経て、今後どのような産業を優遇していくか目が離せません。
アドバイザー
清水 英樹
オーストラリアQLD州弁護士。在豪30年以上。地元大学卒業後、弁護士資格を取得。フェニックス・グループCEOとして傘下にあたる「フェニックス法律事務所」、ビザ移民コンサルティング「Goオーストラリア・ビザ・コンサルタント」、交通事故ならびに労災を専門に扱う「Injury & Accident Lawyers」を経営