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医療特集2020「生活習慣病」とその予防法

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医療特集2020「生活習慣病」とその予防法

かつては加齢とともに進行すると考えられていたことから「成人病」とも呼ばれていた「生活習慣病」。近年は子どもの頃からの生活習慣が基盤となることが判明し、その名が改められたが、では「生活習慣病」にはどのようなものが該当するのだろうか。本記事では、「生活習慣病」を代表する疾病から、近年問題となっているスマホ首などにもフォーカスを当て、それぞれの専門家による解説を紹介していく。

生活習慣病とは?
協力=一般開業医、鳥居泰宏先生

生活習慣病とは、長年にわたる悪い生活習慣から起こる病気の総称です。肥満につながるような食生活、運動不足、喫煙、過度な飲酒、ストレス、悪い労働環境、不規則な生活リズムなどの積み重ねによって起こるあらゆる疾患のことを指します。遺伝的要素はほとんどなく、また、非感染性疾患であることが定義とされています。

生活習慣病は知らぬ間に進行する病気で、何年も掛かって発症し、一度起きてしまうとなかなか改善しにくい病気です。ですから、このような病気にならないためにも子どもの時から良い生活習慣を身に付けておくことが大切です。

食事習慣や生活習慣によって傾向も異なるため、例えば、1つの国から違う国に移住した人の癌がんの発症率も、移住前の国の発症率から移住後の国の発症率へと変化します。

また、生活習慣病は経済への影響も大きいという点が特徴として挙げられます。生活習慣病は働き盛りの年齢層に多いため、発症すると多額の収入ロスにつながりかねません。

生活習慣病の代表的な疾患

代表的な病気は心血管疾患、呼吸器疾患、癌、II型糖尿病です。全世界で心血管疾患による死亡者は毎年約1,800万人、癌は約900万人、呼吸器疾患は約400万人、そして糖尿病では160万人にも及びます。以下、代表的なものを見ていきましょう。

心血管疾患(Cardiovascular disease)━━心筋梗塞、狭心症、高血圧、脳卒中、末梢血管疾患などが含まれます。高脂血症、喫煙、運動不足、肥満、不適切な食生活、過度な飲酒などが危険因子です。年齢、性別、人種、遺伝などは変えられる要因ではありませんが、生活習慣による影響ほどはありません。

慢性呼吸器疾患━━慢性閉塞性肺疾患、ぜんそくが含まれます。喫煙、受動喫煙、大気汚染、ホコリや化学物質などが主な危険因子です。遺伝、年齢も多少の影響があります。

━━子宮頸癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、大腸癌などがあげられます。主な生活習慣からくる危険因子は以下の通り。

子宮頸癌:喫煙、貧困、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)
肺癌:喫煙、受動喫煙、大気汚染、石綿(Asbestos)
乳癌:肥満体、運動不足、飲酒
前立腺癌:肥満体、脂肪分の取り過ぎ、繊維成分の不足
大腸癌:不健康な食事、運動不足、糖尿病

ii型糖尿病━━糖尿病がコントロールされていなければ腎臓病、心血管疾患、網膜障害、末梢神経障害、末梢血管障害などを起こします。不健康な食事、運動不足、肥満体、過度な飲酒、高脂血症、精神的なストレスなどの危険因子を生活習慣の改善によってii型糖尿病になることを防げます。

生活習慣病の治療法、対策、予防

既に上記のような生活習慣病になっていれば、生活習慣を改善することが第一のステップです。投薬治療などが必要な場合でもまず、生活習慣を見直して改善することが必須です。

食事━━炭水化物、糖分は控え目に(取り過ぎると糖尿、肥満の恐れがあります)。特にファストフードやコンビニ弁当などは要注意。炭水化物でも、なるべく糖指数の低い食べ物を選ぶようにしてください。糖指数が高いと食後の血糖値の上昇が急激で、インスリンの分泌が多くなり、膵臓(すいぞう)への負担が高くなります。糖指数が低い食べ物は血糖値の上昇が緩やかでそれほど高く上がらないので膵臓への負担が軽減されます。

  1. 塩分は控え目に(塩分を摂り過ぎると高血圧につながります)。しょう油やソースなどの塩分の多い調味料は控え、味付けは薄めに。濃いめの出汁をとったり、カレー粉などの香辛料で味付けをしたり、レモン汁や酢などを使えば塩分が少なめでも満足感を達成できます。酢に含まれる酢酸には血圧、コレステロール、それに中性脂肪を下げる効果があり、また、カルシウムの吸収も良くします。
  2. 野菜、果物を多く摂りましょう。新鮮な野菜、果物にはカリウムが多く含まれています。カリウムにはナトリウム(塩分)の排出を高める効果があります。また、繊維質を増やす効果もあります。
  3. 高脂肪の食べ物を摂り過ぎると高脂血症が起こり、動脈硬化による虚血性心疾患や脳卒中にもつながるので摂取量は控え目に

食事は規則正しくとり、食べ物はゆっくりと噛んで食べるようにしてください。また、毎回満腹になるまで食べないで、腹八分目に。

運動━━なるべく、週に3日以上、毎回30分の運動をするようにしてください。毎日運動ができればそれに越したことはありません。

  1. 激しい運動をする必要はありません。軽く汗をかいて心拍数が少し上がる低度で充分です。散歩、水泳、軽いジョッギングが最適です。
  2. なるべく生活のリズムに合わせて長く続けられるような運動にして下さい。
  3. 提案としては通勤、通学時にはなるべく歩くようにしたり、ショッピング・センターの駐車場では入り口からなるべく遠い場所に車を止めるようにしたり、いろいろと工夫はできるはずです。
  4. 室内でのコンピューター・ゲームやインターネットの閲覧時間などは最小限にしなければなりません。

睡眠━━なるべく規則正しい生活をし、充分な睡眠を取ることも大切です。もし、よく眠れないことがあれば、下記の点に注意してみてください。また、目覚めた時に疲れが取れていなかったり、気分がすっきりしていなかったり、昼間に眠くなるようなことがあれば睡眠無呼吸症の疑いもありますので医師と相談してみてください。

  1. 睡眠時間にこだわりすぎないこと。2~3日眠りにくい日が続いたとしても焦らず、気にかけないようにしましょう。
  2. 眠い時にだけ床につくこと。眠くないのにベッドに入っても眠ろうとして焦るだけです。眠る目的以外ではベッドに横たわらないようにする。ベッドに入ってから20分以上たって眠れないようならベッドから離れて他のことをしてみましょう(ただし刺激になるような行動は避ける)。
  3. 生活のリズムを保つこと。特に起床時間は定めておき、毎朝同じ時間に起きるようにする。前夜の睡眠時間が短かったからといって寝過ごさないようにする。昼寝は避ける。夕食は就寝時間の数時間前、決まった時間に取り、夜食は避けましょう。
  4. 鎮静薬は避けましょう。アルコール、睡眠薬、精神安定剤などは過度にとらないようにする。
  5. 刺激物も避けましょう。カフェイン、ニコチン(たばこ)、アンフェタミーンなど。
  6. 就寝場所の環境を整えましょう。強い光、音、極端な気温の高低、高湿度などを避け、安らかな環境にすることに努める。マットレスや枕もなるべく心地良いものにする。
  7. 空腹は避けましょう。床についても空腹が続けば眠りにくくなります。なるべく高タンパクのものをとってみましょう(暖かいミルクも効果的です)。
  8. リラックスが大事です。温かいお風呂に入ってみるのもひと手段。ヨガやメディテーションなどを習ってみることも役に立つはずです。
  9. 床についてからの考え事は避けましょう。心配事があれば一度起きて解決策をリスト化し、どのようにその方法を実施するかを考えてからまた床に就きましょう。

喫煙━━タバコは肺癌だけではなく、体にあらゆる害を及ぼします。癌以外には虚血性心疾患、脳卒中、慢性閉塞、性肺疾患、皮膚の老化、歯の老化も起こりやすくなります。また、多種の癌との関連もあります。肺癌以外には口頭癌、食道癌、胃癌、膀胱癌、腎臓癌、膵臓癌、肝臓癌、子宮頸癌、卵巣癌、大腸癌などが挙げられます。自分で禁煙ができなかったりニコチン・パッチなどを使ってみても成功しなかったりした場合は医師と相談してください。

飲酒━━過度な飲酒は危険です。慢性的に大量の飲酒を続けていれば次のような問題が発生します。陰萎、うつ病、記憶力の減退、脳の損傷、肝炎、肝硬変、高血圧、依存症など。1日で純アルコール20グラム相当のアルコール量(ビール約500ミリ、ワイン約200ミリ、日本酒約180ミリ)が節度ある適度な飲酒量とされています。アルコールからの害を最小限にするためには次のような点に気をつけてください。

  1. 何杯もお酒を飲む場合は間に水を飲むようにしてください。
  2. なるべく小さめのグラスを使うようにしましょう。
  3. アルコール度数の高いものは避けましょう。
  4. 飲み始める前と飲んでいる間には食べ物も取るようにして飲むペースを落とし、アルコールの吸収が少なくなるようにしてください。

性別による生活習慣病の症状の差

心筋梗塞や狭心症は中年男性によく起こるものだと思われがちですが、女性にもよく起きる病気です。オーストラリアでは女性の死亡原因の第1位で、乳癌などの癌よりも頻繁に起きます。特に閉経後に虚血性心疾患のリスクが高まります。女性の症状は男性よりも軽く、病気がかなり進んでから起こることが多く、しかも非典型的な症状なので診断が難しいこともあります。ですから、診断が確定された時点でかなり病気が進んでいることが多く、男性と比べて予後も良くない傾向があります。

実際の症例

生活習慣病は一般開業医が毎日のように診ている病気で患者さんは大勢います。この病気の難しさは、長年続いてきた不適切な生活習慣を変えることです。薬で高血圧や糖尿病を治療しつつも大切なことは、平行して悪い生活習慣を直していくことです。それ以前に重要なのはこのような生活習慣にはまってしまう前に子どものころから生活に関する指導と教育をしっかりと行っていくことです。近年、日本やアメリカ、オーストラリアなどの先進国で、肥満児の人数が増加してきているのも心配です。

プロフィル○ノースブリッジで35年以上一般開業医として開業。小児科、婦人科、内科、皮膚科、泌尿器科、などの診療。専門医への紹介、健康診断も可能。現在は東京マートのあるノースブリッジプラザの隣のビルで診療中(病院の詳細は特集「最新医療ディレクトリー 一般開業医(GP)」から)

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