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犬のチョコレート中毒と致死量について

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ペット

Q

 犬にチョコレートを食べさせてはいけないと聞いていますが、昔飼っていた犬は平気で食べていたような気がします。少量なら大丈夫なんでしょうか。(20代女性=会社員)

A

犬にチョコレートをやってはいけないことはよく知られているので、犬の飼い主ならば皆注意していると思います。しかし犬は甘いものに目がないため、隙あらばチョコレートや、チョコレートを含むケーキやクッキーなどの盗み食いをしてしまうことがよくあります。

チョコレートは間違いなく犬にとって有害です。ただし犬の大きさと食べたチョコレートの種類によって、事の重大さに大きな差が出ます。

チョコレート中毒

チョコレートの主成分のカカオには、テオブロミンという、神経を興奮させる作用がある物質が含まれています。犬の体は人間に比べてこのテオブロミンの分解が遅く、興奮作用が長く神経に影響し、中毒症状を起こしてしまいます。

症状:軽い症状は嘔吐や下痢、不整脈、重くなるとけいれんや心臓発作、そして死に至ることもあります。症状の度合いはテオブロミンの摂取量によって変わり、テオブロミンの含有量はチョコレートのカカオのパーセンテージが高いほど多くなります。従って犬には、ミルクチョコレートよりダークチョコレートの方が毒性が強くなります。逆にカカオを含まないホワイトチョコレートは中毒の危険はありません。

治療:チョコレート中毒に対する解毒剤はありません。チョコレートを食べてしまった場合は、摂取から時間が経っていなければ、催吐剤で胃の中にあるチョコレートを吐かせ、その後は活性炭を投与する以外は対処療法に頼るしかありません。

チョコレートの致死量

テオブロミンの致死量は1キログラムの体重に対し、100~200ミリグラムと言われています。

一般的なミルクチョコレートは、100グラムの板チョコでテオブロミンの含有量が200ミリグラム前後ですが、ココア70パーセントのダークチョコレートでは同じ100グラムの板チョコでテオブロミンは600ミリグラム前後にもなります。

また、この量を食べたのが体重3キログラムのチワワか、30キログラムのラブラドールかで症状は大きく変わってきます。

ラブラドールならミルクチョコレートを3枚食べても最悪でもお腹を壊す程度で済みますが、もしチワワだったら、ダークチョコレートの板半分で致死量に達してしまいます。

また下痢や嘔吐などの症状は1キログラムの体重に対し20ミリグラム以上、不整脈や神経症状は40ミリグラム以上のテオブロミンを摂取すると生じます。これは10キログラムの犬だったらミルクチョコレート1枚、またはダークチョコレート1/3枚の量から中毒症状が見られるということです。

中~大型犬がチョコレートを1かけら食べたからと言って、急いで病院に連れていく必要はありません。しかし小型犬、特に老犬で心臓病などの疾患がすでにある場合は、受診したほうがいいでしょう。

4月はイースターです。いつも以上にチョコレートが出回る時期なので、犬が食べてしまわないよう気をつけてください。

*オーストラリアで生活していて、不思議に思ったこと、日本と勝手が違って分からないこと、困っていることなどがありましたら、当コーナーで専門家に相談してみましょう。質問は、相談者の性別・年齢・職業を明記した上で、Eメール(npeditor@nichigo.com.au)、ファクス(02-9211-1722)、または郵送で「日豪プレス編集部・何でも相談係」までお送りください。お寄せ頂いたご相談は、紙面に掲載させて頂く場合があります。個別にご返答はいたしませんので、ご了承ください。


戸塚 遊喜(とつか ゆき)
Chatswood Veterinary Clinic

シドニーの現地校を卒業後、シドニー大学の獣医学部を卒業。現在、シドニーのノースショアにある小動物専門病院「チャッツウッド・ベタリナリー・クリニック」に勤務。動物の鍼灸師の資格を保持している。

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