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行いが心を作る/福島先生の人生日々勉強

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福島先生の人生日々勉強
行いが心を作る

「悲しいから泣くのではない。泣くから悲しいのだ」。これは、アメリカの心理学者ウィリアム・ジェームズ氏とオランダの心理学者カール・ランゲ氏の言葉です。例えば、暗い顔をして楽しいことを考えるのは難しいですし、笑いながら悲しいことを考えるのも難しいでしょう。人間の心と体は一貫しているからです。

一方で、ウィリアム・ジェームズ氏はこんな言葉も残しています。「心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば運命が変わる。運命が変われば人生が変わる」。こちらでは心が行動の前に来ています。

いったいどちらが正しいのでしょう。結論から言えば、どちらも正解です。自らを律し育てていこうと思うならば、どちらからも働きかけていくというのがもっともな方法です。しかし、いきなり心を入れ替えるのは簡単ではありません。時間が掛かります。ですから、コントロールしやすい行動から始める方が現実的です。

感謝の気持ちを忘れるなと世間ではよく言われます。疎(おろそ)かにしがちだからこそ、よく言われるのだと思いますが、どうすれば忘れないでいられるでしょう。一番良い方法は、感謝の行動を習慣にすることです。武道では道場への入退場時に礼をします。試合でも最初と最後に礼をします。入門当初は教えられて行うだけかもしれませんが、何千回、何万回と礼をしているうちに、礼の意味が分かるようになります。バレエではレヴェランスと呼ばれるお辞儀をします。レッスンから日常的に行われる優雅で美しいレヴェランスには、尊敬や感謝の気持ちが込められています。寺院でも、僧侶が何度も何度も丁重に礼拝をします。丁重な礼拝を何度も繰り返しすることによって、仏への感謝の念が心の中に定着し、僧侶が僧侶になっていきます。つまり、いずれも行いが心を作っていくのです。

日本人は食事の際に、「いただきます」と「ごちそうさま」という言葉を使いますね。これらの言葉を必ず口に出して言うように食事の際の習慣にしておくと、食べ物について毎回感謝の気持ちを特別に意識せずとも、無意識に感謝の気持ちが心の中に涵養(かんよう)されます。「ありがとう」という言葉もいつも口に出して言うことで感謝の気持ちが心に染み込み、その人の考え方に知らず知らずのうちに影響を与えていきます。

行動することは人間の本質の大きな一部です。生身の体を動かす行動こそ、人間を造り上げている基本だということを疎かにはできません。なすべきことをきちんと行い続けていくことには、とても大切な意味があるのです。

このコラムの著者

教育専門家 福島 摂子

教育専門家 福島 摂子

教育相談及び、海外帰国子女指導を主に手掛ける。1992年に来豪。社会に奉仕する創造的な人間を育てることを使命とした私塾『福島塾』を開き、シドニーを中心に指導を行う。2005年より拠点を日本へ移し、広く国内外の教育指導を行い、オーストラリア在住者への情報提供やカウンセリング指導も継続中。

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