シドニー市内南西部にあるジャパンファウンデーションで、現在アート・イベント「SURFACE TENSION」が開催中だ。メルボルンにあるストリート・アートやグラフィック・アートを推進させるバックウッズ・ギャラリー(Backwoods Gallery)がパートナーとなり、同ギャラリーが抱える日本人アーティスト4人の作品を鑑賞することができる。今回はその中の1人、Hiroyasu Tsuri / TWOONE(トゥーワン)さんに展示されている作品のことから、現在の活動や自身のアートに対する考え方などの話を伺った。
(聞き手=高坂信也)
世界中に広がる仕事と作品の幅
――「Hiroyasu Tsuri」と「TWOONE」の名前をどのように使い分けているのですか。
―― HiroさんのSNSのプロフィル欄に「Twoone is a hungry animal.」とあります。これはどういった意味ですか。
―― 現在の活動内容について教えてください。
―― 個展ではどういった作品を展示されるのですか。
―― 今回の作品について教えてください。
―― アイデアが思い付くまでの時間を含めると、どのくらい時間が掛かっているのですか。
―― バック・ライトはどのような意図なのですか。
また、植物にハイライトを当てることが「合っている」と感じています。植物はやはり「パワー」であり「ライフ」なので、いろいろな側面から見た時に新しく明るい印象を与えられると思っています。
1つのものに縛られず、変わり続けていくこと
―― オーストラリアとの出合いについて教えてください。
―― 多すぎるやりたいことの中にはどのようなものがあったのですか。
けれど、小さいころから物を作ったり絵を描いたりするのが好きだったので、グラフィック・デザインや工業デザイン、ファッション・デザインなど、「デザイン」と名の付く学科のある所は全て見に行きましたね。どれも面白そうだったのですが、1つには決めきれませんでした。
語学留学と言えばロンドンやニューヨークが主流でしたが、当時の僕は皆が行っていない所に行きたかったんです。今でこそオーストラリアは人気留学先の1つですが、当時はそれほどメジャーではなく、シドニーとゴールドコーストは知っていましたが、メルボルンという名前は聞いたことがなかったです。更に、その当時スケートボード(スケボー)がメルボルンで流行っているとスケーター仲間から聞き、メルボルン行きを決めました。
メルボルンでは、スケボーをしたり、グラフィティをしていたスケボー仲間たちと一緒にグラフィティを描いたりしていました。10カ月だけの滞在予定でしたが、とても面白く刺激的な生活を送れたので一度日本に帰国してからいろいろと整理をして、再び来豪して気付いたら10年間住んでいましたね。
―― 仕事はどのように決まっていくのでしょうか。
壁画に関しては、オーストラリアでは企業や市や街のカウンシルなどのいろいろな組織・機関からの依頼があります。市や街のカウンシルは、壁画など公共のアート・プロジェクトとして作品制作に予算を持っていますが、特定のアーティストだけを選ぶことができないので、公募でアーティストを5~6人選出します。更に、その人たちがコンセプト・スケッチを描き、そこで選ばれた人が実際の壁面に描くことができるシステムになっているんです。そうした仕事には自ら応募していますね。
―― 日本では考えられないのではないでしょうか。
僕がオーストラリアで壁画を始めた15年ほど前は、今よりもまだストリート・アートというものが浸透していなかったので、違法で描いたり、個人間で「この壁に描いても良い?」という交渉から始めていました。グラフィティを描くのに個人の家はやりやすい対象だと思うのですが、日本にはそれがないので違法にやるしかないんだと思います。オーストラリアでは小さいものから、個人単位で描けるかどうかを尋ねることができる環境があって、たくさん描くことで練習できたり、スキルを上げることができた感じはありますね。
―― 日本の社会性や倫理観の関係からグラフィティが広まらないと考えているのですが、その点についてはどう思われますか。
ただ、日本でも壁画はありますよね。渋谷駅には岡本太郎さんが描いたタイル画が大きく飾られているじゃないですか(※1)。それと同じようなものだと考えて良いと思うんです。
―― なるほど。そうするとHiroさんの作品は全てミューラルに当たるのですか。
―― 作品を拝見する限り、動物を多く描かれていますが、その点についてこだわりなどはありますか。
―― 作品を描く時に注意していることや気を配っていることを教えてください。
歴史や政治を間近で感じる
―― Hiroさんが表現したいもの(こと)とは何でしょう。
あえて何か1つあるとすれば、ベルリンに移住してからは作品に少し“政治的な要素”が入ってきたように思います。それまではもっと内観的なことが多く、もちろん今も個人的なストーリーに沿って作品を制作していますが、気に掛かるものに政治的なものが含まれるようになってきました。
―― ベルリンはどのような影響を与えましたか
ベルリンに移住して4年半ですが、例えば家の近くに「テンペルホーフ」という、昔、空港で現在は公園になっているエリアがあるのですが、空港が閉鎖する時にディベロッパーがその土地を購入しビルを建てる予定だったのが、近隣住民の反対で公園になったのです。ディベロッパーに住民が勝つという構図そのものが、日本やオーストラリアでは見かけないシーンだと思っています。そういうことを見聞きすると、政治的に面白いなと。
更に、今その公園の中に難民キャンプができていて、2メートルほどしかない柵だけで囲われています。そうした難民キャンプなどを見かけると、政治に興味がなかったとしても実際に目に入ってくるので、「なぜこの場所がそうなったのか」などを調べたりするようにもなりました。
―― 近隣諸国と国境を接しているということが関係しているのでしょうね。
―― 現在、取り組んでいるプロジェクトを教えてください。
―― 本日はありがとうございました。
Hiroyasu Tsuri/Twooneプロフィル◎1985年生まれ、神奈川県出身。アーティスト。高校卒業後、10年間メルボルンに居住。その間「Visual Art and Multimedia」のディプロマを取得し、多くのストリート・アートを手掛けながら、数多く個展を開催。現在は、壁画の制作や個展の開催を世界各地で展開している。2014年からベルリンに移住し活動している
Surface Tension
■会場:The Japan Foundation, Sydney(Level 4, Central Park, 28 Broadway, Chippendale NSW)
■日時:開催中~1月25日(金)
■料金:無料
★Web: www.jpf.org.au/events/surface-tension