福島先生の人生日々勉強
心を収める
「心は捉え難く、軽々とざわめき、欲するがままにおもむく。この心を収めるこそ善なり。心を収めるものに安楽あり」(『法句経』より)
「心を収める」――。さらりと書かれていますが、難しいことですよね。人間には感情があります。旗が風にはためくように、現実の生活の中で揺れ動いているのが人の心です。その心を収めることができれば、安楽が訪れるというのです。心を収めれば、平静、安楽が得られるということ、それが善であり、徳を積むことであり、幸せが来る道であると説いています。
自分自身の心と向き合って考えてみると、その時々の雰囲気や感情に流されて行動してしまい、後悔してしまうということは誰しも経験があると思います。自分自身の心を完全に制御することは至難の業です。ですが、完全にはできなくても、今の自分よりもう少し自己の心(=感情)を制御できるようになれば、できた分だけ、安楽になれるはずです。少しだけ前へ、次もまた少しだけ前へ、少しずつなら努力できるのではないでしょうか。
まず、姿勢を正してみてください。背筋を伸ばし、静かに今の自分の心と向き合ってみましょう。そうすると、自然と心が落ち着いてきます。心が落ち着いてくるのは気持ちが良いものです。すなわち、それが安楽であるということです。
バレエの心得がある人であれば、バー・レッスンの時に軸が整い、整った分だけ、心も真っすぐになることを実感していると思います。もちろん、バレエでなくとも、軸を整える方法があります。「座禅」です。座禅はどんな人でも、座れば座った分だけ、安楽にしてくれます。座禅も、バレエのように背筋をピンと伸ばします。背筋がピンと伸びると、心もピンと伸びるのです。座禅を続けていると、心が自然に真っすぐな状態を維持しやすくなってきます。意識せずとも、心が真っすぐになってくるのです。
真っすぐというのは、偏りがないということ。偏りがないというのは、ニュートラルであるということ。ニュートラルということは、どの方向に揺れ動いても元に戻りやすいということ。結果として、座禅は人の感情や気持ちの揺れを安定させ、心に安楽をもたらします。座禅によって軸が整ってくると、心も体もリラックスし、全てが静かになっていきます。浮かんでくる思考はただ流れていくのを見送れば良いのです。全てが穏やかで静かになったら、心の中の静寂に全てを預けます。そうしてただ、今この瞬間の中にある静寂にとどまることができた時、おのずと心は収まっているというわけです。
心がざわざわしてきたら、静かに座って軸を整えることをお勧めします。
教育専門家:福島 摂子
大阪府出身。33年間、教育に携わり、教育カウンセリング・海外帰国子女指導を主に手がける。1992年に来豪。シドニーに私塾『福島塾』を開き、社会に奉仕する創造的な人間を育てることを使命として、幼児から大学生までの指導を行う。2005年10月より拠点を日本へ移し、日々活動の幅を広げていく一方で、オーストラリア在住者に対する情報提供やカウンセリング指導も継続中である。