第53回
祝! 入学、進級、進学おめでとう
【前回までのあらすじ】
極寒の北海道から、オーストラリアへ家族4人で移住。オージーの夫との一風変わった日常生活を綴っている。
私たち家族が北海道に住んでいたころ、テレビや新聞に子どもが誘拐されて殺されたというニュースが毎月のように出ていた。平和なオーストラリアでは、そうした事件はほとんど起きたことがないらしく、夫は非常に衝撃を受けたようだった。
当時、我が家の子はまだ赤ちゃんだというのに、夫はそのような事件に巻き込ませまいと決意したらしく、「僕は、小学校に送り迎えを絶対にするんだ!」と断言した。
私:「朝はともかく、夕方は仕事だから迎えに行くなんて無理でしょう? それに、そんなことをしている人なんていないよ。こんな北海道の片田舎で、小学生の子どもを誘拐する人なんているかな?」
夫:「そんなことは関係ない。僕は子どもを守る義務があるんだ!」
幸い(?)、子どもたちが小学校に入学する前にオーストラリアに移住してしまったのだが、オーストラリアに来てみてビックリした。
保護者による学校への送り迎えが当たり前だったのだ(と言うか、義務だった)。「この人たちは一体どんな仕事をしているの?」と思うくらい、働き盛りの世代の父親も、結構迎えに来ていた。
よくよく聞くと、彼らは朝早くから体を使って働くブルーカラーで、迎えの時間には1日の仕事が終わっている人たち。鉱山で4週間、家族の住む地元を離れて働いた後、次の1週間が丸々休みだったりするシフトワークの人もいた。
「父親は朝から夜遅くまで働き、家にはほとんどいない。ましてや学校行事に参加するなどあり得ない」という、私の持っていた日本での常識はここでは全く通じないのだ。何せ日本にいたら、夜9時、10時まで働く人が少なくない。私自身も、北海道での教員時代は1日の平均労働時間は12時間、土・日も働くのが当たり前だった。
しかし、オーストラリア生活に慣れてくると、こちらの方が家族と一緒に過ごせるし、豊かな生活を送れていると思うようになってきた。何より、夕方5時には家にいられるって最高ですよ。
ポップ登美子
北海道札幌市出身。オージーの夫と2人の子どもと共にノーザン・テリトリーに在住中。本紙コラムの他にも、「地球の歩き方」海外特派員などでのフリーランス・ライターや日本語ガイド、日本語教師としても活躍中。
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