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聴於無声/福島先生の人生日々勉強

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福島先生の人生日々勉強

聴於無声

「聴於無声 視於無形」(声無きに聴き、形無きに視る)。

何事にせよ、全てを見通せる人などこの世にはいないでしょう。思うところが心にあったとして、それを全て口にできる人もいませんね。「私は包み隠さず思っていることを全部人に話してしまう」という人がいたとしても、実際のところ、全てを話せるわけではありません。なぜなら、人というのは、自分のことでさえ知り尽くすことができないからです。知り尽くしていないものを全部話すというのは不可能というものです。

冒頭の言葉は、「聴こえないもの、見えないものにこそ真実がある。表現されたものを受け取ってから動くのではなく、表現されていないところにある思いや、求められているものを察して動くことが大切なのだ」ということを教えています。孝行のあり方を諭したものであるとされていますが、いかなる立場で何を行うにしても、共通して言えることなのではないでしょうか。

親孝行に限らず、人と接する時は、相手の体の状態や心の状態を、相手が語る言葉からだけでなく、その雰囲気や様子から察するように心掛けましょう。ただし、前述した通り、人の心は自分自身でさえ知り尽くせないものですから、全て分かっているなどと決して驕(おご)らないようにすることが大切です。謙虚さを忘れない限り、「察する」というあり方は、人と人とのコミュニケーションを図る上で心すべきことのように思います。

人は複雑な生き物です。常に真実を語るとは限りません。語りたくても語れない場合もあります。心の深層にある真実に本人すら気付いていないというような場合もあるのです。

「察する」など難しくてできないという人にお薦めの方法は、「優しい気持ちを持つ」ことです。具体的には、自分が相手のためにしてあげられることを探してみるということ。ただ寄り添うだけでも良いですし、笑顔で接したり、優しい言葉を掛けたり、というのも良いですね。まずは、自分に優しくしてみてはいかがでしょうか。

静かに座って目を閉じて、心の声を聞いてみましょう。心が何かを訴えてはいないでしょうか。声にならない声を受け取って、原因を探ってみましょう。気付かなかった原因に気付いたら、今度はその原因を取り除くサポートをしてあげましょう。私たちは、自我と過去の記憶を通して世界を見ているので、自分勝手な世界を作り上げてしまっています。そうしてゆがんでガチガチになった心を溶かし、あるがままの姿を取り戻してあげましょう。

「聴於無声 視於無形」。表面的なことだけに心を奪われないように、真実に生きること、心を尽くして生きることを実践できるようになりたいですね。


教育専門家:福島 摂子
大阪府出身。33年間、教育に携わり、教育カウンセリング・海外帰国子女指導を主に手がける。1992年に来豪。シドニーに私塾『福島塾』を開き、社会に奉仕する創造的な人間を育てることを使命として、幼児から大学生までの指導を行う。2005年10月より拠点を日本へ移し、日々活動の幅を広げていく一方で、オーストラリア在住者に対する情報提供やカウンセリング指導も継続中である。

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