第55回
「外国人の夫 ― 理想と現実」編 ①
【前回までのあらすじ】
極寒の北海道から、オーストラリアへ家族4人で移住。オージーの夫との一風変わった日常生活を綴っている。
「外国人の夫を持つと、日本人の夫に比べてかなりすばらしいことがあるのではないか?」と期待している人を裏切るようで悪いが、今月からその現実について伝えていこうと思う。
① レディー・ファースト
毎回、車のドアを開けてくれる外国人の夫ってすてき!? 結婚した当初は、自分で助手席のドアを開けると「なんでそんなことをしたんだ!」と怒られたので、「え?何か悪いことしたっけ?」と驚いた。「僕がドアを開けるまで、自分では開けてはいけない……」と。
しかし子どもが産まれると、私が上の子のためにドアを開け、夫が下の子のためにドアを開けるようになり、それほどロマンチックな習慣ではなくなった。
最近、私は腕を負傷して、スリング(三角巾固定)を付けていた。まさしく夫の出番だったのだが、家に着くと夫はさっさと子どもたちと家の中に。1人車の中に残された私……。新婚時代と、えらい違いやないか!?
② 夫が運んでくれた朝食を優雅にベッドで楽しむ
ハリウッド映画のように「Honey, this is your breakfast」と、朝食をベッドまで運んでくれる夫ってすてきだなあ(♡)と思い、私の誕生日にやってもらったことがある。
ところが当時はベッドではなく布団生活。まるで病人食みたいで、全然ムードが出ない。「これは雪辱が必要だ!」と思い、ベッド生活になったオーストラリア移住後に、再挑戦してみた。いや、私がリクエストして、夫にさせたのだ。
夫はトレイに「ハーブ・ティーとサラダとクロワッサン」をうやうやしく持ってきて、「Madam, anything else you need?」(奥様、他にご入り用の物はございませんか?)と、ホテルの従業員のまねをした。
私も「Thank you. Here’s your tip」と、チップを渡すフリをした。さて、長年来の夢がかなったのだが、ベッドの上でカップは倒しそうになるし、クロワッサンのくずはベッドに散らかるし、オチオチ食べていられない。
「Breakfast in bed」を楽しむのは庶民の私には無理だったなあ。
ポップ登美子
北海道札幌市出身。オージーの夫と2人の子どもと共にノーザン・テリトリーに在住中。本紙コラムの他にも、「地球の歩き方」海外特派員などでのフリーランス・ライターや日本語ガイド、日本語教師としても活躍中