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大型犬が気をつける疾患「胃捻転(いねんてん)」とは

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ペット

Q

知人の犬(9歳のシェパード)が先日、残念なことに胃捻転で急死してしまいました。うちの犬も大型犬なので、気を付けた方が良いと言われたのですが、どのような点に気を付けたら良いのでしょうか。(30代女性=主婦)

A

犬の病気の中でも特に緊急性が高く、命の危険がある疾患が「胃拡張・胃捻転症候群」です。英語では「Gastric Dilatation and Volvulus(GDV)」または「Bloat」と言います。
 この病気は、まず胃に大量のガスがたまって「胃拡張」を起こします。その膨れた胃がねじれてしまう「胃捻転」へと進行すると急激に病状が悪化し、早急に治療をしないと死に至ります。

原因

発症のリスクを高める条件を以下に幾つか挙げてみます。

犬種
 グレート・デーン、セント・バーナード、シェパード、ドーベルマンなど、胸腔(きょうくう)の深い大型犬や超大型犬でよく見られます。小型犬でも胸が縦に深いダックスフントのような犬種に見られます。遺伝の要素もあるため、親・きょうだいが発症していたら要注意です。

年齢
 加齢により、発症率が上がります。

食事
 1日1回の大量の食事、油脂を多く含むドライ・フードだけでなく、早食い、食後に大量の水を飲む、食後に激しい運動をするなどの習慣も発症と関連しています。

性格
 興奮しやすい、またはストレスを感じやすい犬は呼吸が激しくなるため、余計な空気を飲み込んでしまい、胃拡張を起こしやすくなります。

症状

急にお腹が張ってくる、不安で落ち着きがなくなる、気持ち悪そうによだれを垂らす、吐こうとするが吐けないなどです。症状が悪化すると立ち上がることもできなくなります。

治療

胃拡張だけであれば、口からチューブを入れ胃にたまったガスを抜くだけで済むこともありますが、胃捻転が起きている場合、手術でねじれた胃を元に戻すことでしか助かりません。
 治療が遅れると、体力が持たず手術中に亡くなったり、手術が成功してもその後、合併症で亡くなることもあります。

予防

食事は1日2~3回に分けて与える、食後の激しい運動は避ける、食後すぐや興奮している時は水のがぶ飲みをさせない、ストレスを感じやすい犬は状況に応じて抗不安剤を与えるなど、少しでも発症のリスクを抑えることです。

予防手術

なりやすい犬種は、予防的に手術で胃壁を腹壁(ふくへき)に縫い付ける「胃固定」の処置を受けることが勧められています。
 胃捻転は緊急手術を要します。少しでも胃拡張・胃捻転が疑われたら、夜間でもすぐに病院へ連れて行けるように、24時間対応の動物病院がどこにあるのか、あらかじめ確認しておきましょう。

*オーストラリアで生活していて、不思議に思ったこと、日本と勝手が違って分からないこと、困っていることなどがありましたら、当コーナーで専門家に相談してみましょう。質問は、相談者の性別・年齢・職業を明記した上で、Eメール(npeditor@nichigo.com.au)、ファクス(02-9211-1722)、または郵送で「日豪プレス編集部・何でも相談係」までお送りください。お寄せ頂いたご相談は、紙面に掲載させて頂く場合があります。個別にご返答はいたしませんので、ご了承ください。


戸塚 遊喜(とつか ゆき)
Chatswood Veterinary Clinic

シドニーの現地校を卒業後、シドニー大学の獣医学部を卒業。現在、シドニーのノースショアにある小動物専門病院「チャッツウッド・ベタリナリー・クリニック」に勤務。動物の鍼灸師の資格を保持している。

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