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第135回 綴子大太鼓/書家れんのつきいち年中行事

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第135回 綴子大太鼓

ご機嫌いかがですか、れんです。

知っているようで知らないことというのはあっちにもこっちにもたくさんあります。元々不勉強で知っているべき事柄でも知らないことだらけなので自分で自分に飽きれてしまうこともありますが、今回は左の作品の「綴」という字に引っ掛かりました。書いてみてふと気になったのが4つの「ヌ」を書く順番です。左上の次に右上を書いてはみたものの、あれっと思ったのです。左上からそのまま左下にいくことも考えられるなと。

この「綴」という字、もっぱら書かれて(印刷されて)いるものを読むだけでしたので調べてみました。すると義務教育で習う字、つまり常用漢字(2,136字)ではありませんでした(「常用漢字外」といい、人名用漢字として863字あります)。つまり書き順のテストを想定して覚えた字ではないということです。どうりで書き順が記憶にないわけです。

結局左上から右上のルートで正解ではありましたが、それが確認ができたことは良かったと思っています。私にとっては非常に楽しい作業でした。

さて秋田県北部にある人口3万人ほどの北秋田市、その綴子(つづれこ)集落の八幡綴子神社では7月14日、15日の両日、毎年恒例の例大祭が行われます。この時、国の選択無形民俗文化財である「綴子大太鼓」が奉納されます。

綴子神社は飛鳥時代の斉明天皇の御代に創建され、平安時代に征夷大将軍・坂上田村麻呂も奉幣(ほうへい)(勅命で神社に供え物をすること)したとされる歴史ある神社。大太鼓の奉納は鎌倉時代の1262年ごろ(幕府将軍は6代宗尊親王、執権は6代北条長時)から始まったとされています。

この地は広大な田んぼに対して水源と水路の便が悪く、いつも灌漑用水に困っていました。

この祭りは雨乞いと豊作祈願の神事とされ、雷に見立てた大太鼓の大音響で天界の神々に祈ったのです。干ばつの時には鎌を持って住民が水を奪い合ったという話もあるほど水に苦しみ、またその水に感謝し続けた人びとによって受け継がれた長い歴史の重みが感じられます。

初めのころは源氏方と平氏方に分かれて行っていましたが、江戸時代に入るとそれが徳川と豊臣に変わり、現在は上町と下町が徳川方と豊臣方に分かれて1年交代で奉納しています。

太鼓の材料は秋田杉とホルスタイン種雄牛の皮。上町の一番太鼓の直系は3.8メートルで重さは3.5トン。以下二番太鼓(3.33メートル)、三番太鼓(2.61メートル)。また下町の一番太鼓は直径3.71メートル。以下二番太鼓(3.44メートル)、三番太鼓(2.47メートル)という巨大な太鼓です。大太鼓と共に華やかな衣装で着飾った氏子の老若男女が神社を目指して練り歩く出陣行列、境内での獅子踊りや奴舞いが披露されます。

それでは再び作品をご覧ください。行書の「綴子大太鼓」です。大太鼓の迫力と人びとの祈りの強さを、太細の変化を付けた張りのある強い線とその勢いで表現しました。一々筆の体裁を整えることをせずに筆の動くままの姿を残すことが迷いのない切迫した思いの強さにつながればと思いました。

似た形の文字、ここでは4つの「ヌ」や「大」と「太」などは作品の中で同じ形にならぬように配慮が必要です。運筆しながら次々に処理できるようになれば文字を書くことが楽しくなると思います。


れん(書家/アーティスト)
アーティストとして永住権取得。2010年、作品「ふるさと」が日本の国有財産として在豪日本国大使館に収蔵される。Government Houseでの企画展など日・豪・ドバイで作品展示多数。在豪日本国大使館、在オークランド日本国総領事館の招聘によるイベント参加やNSW州立美術館ほか各地で大書パフォーマンスやワークショップを展開。ハリウッド映画『The Wolverine』製作に書家として参加。2016年シドニー総領事表彰を受ける。書団れん倶楽部主宰。チャッツウッドで書道教室運営。RENCLUB Lineスタンプ販売中。
Web: renclub.amebaownd.com / Email: renclub@gmail.com / 動画: youtube.com/user/renclub / インスタグラム: instagram.com/renyano

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