ヨガもコーヒーも極めたい
第63回 今回登場のワーホリ・メーカーは?
森樹(たつき)さん
1994年まれ・愛媛県出身
2017年にワーホリで来豪。現地で知り合った友人の勧めでヨガに目覚め、インドで国際的なヨガ・ティーチャーの資格を取得する。日本でフリーのインストラクターとして活動を始め、昨年12月に自身のヨガ・スタジオの資金捻出のためセカンド・ビザで再び来豪。現在はヨガのプライベート・レッスンを行いながらバリスタとして働く。
ヨガのインストラクターをしながら、シドニー市内のカフェでバリスタとして働く森樹さん。一見共通点がないように思えるヨガとバリスタだが、森さん曰く「どちらも深みがある」らしい。
「自分の苦手なこととか、やったことのないことをするのが好きです」と話す森さんは、これまで多くのことにチャレンジしてきた。元々旅行が好きで、学生時代にはヒッチハイクで日本一周。もっと広い世界が見てみたいと大学卒業後の17年に初めて来豪した際にも、ヒッチハイクをしたりしながら1年間掛けて全ての州を回った。更に、経験した仕事はカーニバル(移動型テーマパーク)の射的の係員、バスキング(路上パフォーマンス)、オペア、チェリーのピッキングとバラエティーに富んでいる。来豪する前から英語を勉強していたかいもあって仕事探しは難しくなかったそうだが、やったことのない仕事にこだわったという。
「その時は特にやりたいことがなかったので、オーストラリアでしかできないことを体験してみたくて……。同じことを続けてたら慣れてきて楽ですけど、成長できない気がして面白くないなって」
そんな好奇心旺盛でちょっと飽き性な森さんの心をつかんだのはヨガだった。ファームで知り合ったインド人の友人に勧められ、軽い気持ちで始めたヨガだったが、レッスン後の爽快感とヨガの奥深さに感動したという。
「ヨガにはポーズや哲学とか学ぶことがいっぱいで、新しいことをずっと学んでいる感覚です。全然終わりが見えない」
1年目のワーホリを終えると、本場インドで国際的なヨガ・ティーチャーの資格を取得。日本でヨガ・インストラクターとして活動を始めた。しかし、日本での仕事はあまりうまくいかなかったという。
「ヨガを教えること自体は楽しくて、これで食べていこうと思いましたが、大人数に教えることに慣れていなくて大変でした。それに、オーストラリアでは自分の意見を言えていましたが、日本では言えなかったりして」
生活に行き詰まりを感じていた森さんは、個人でヨガ・スタジオを持つことを決意。資金を稼ぐため、仕切り直すため、再び来豪を決めた。
遠回りが近道
セカンド・ビザで再び来豪した森さんだが、ヨガのインストラクターとして働ける場所が少なかったため、ここでもやったことのない仕事にこだわった。その中で出合ったのがバリスタだった。
「たかがコーヒーって思うじゃないですか。でも奥が深くて、温度だったり、泡のきめ細やかさで味が変わるんです。職人技ですよ」
コーヒーの奥深さに魅了された森さんは、仕事の空き時間にミルクの泡の量を正確に入れる練習をしたり、家でもラテ・アートの練習をするほど、コーヒーにのめり込んだ。バリスタを始めて4カ月だが「おいしくないコーヒーは作っていないと思います」とはっきりと話す姿からは、日々の練習量が伺えた。将来は自身のヨガ・スタジオでレッスンを行いながら、バリスタとしても働きたいという。どちらもおろそかにせず、あくまで2つを極めるのが目標だ。
最後に、森さんにこれまでのワーホリ生活を振り返ってもらうと、森さんらしい答えが返ってきた。「僕にとっては、やりたいことを見つける時間でした。最初はただ海外に住みたかっただけでしたが、ワーホリっていろいろな可能性があるじゃないですか。だからさまざまなことに挑戦してみたり、人に会ったりする中で自然とやりたいことが決まっていった気がします。遠回りが近道な気がします」
人生は遠回りするほど、人を豊かにするのかもしれない。森さんの話を聞きながら、そう思った。
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