第60回
急成長していく息子
【前回までのあらすじ】
極寒の北海道から、オーストラリアへ家族4人で移住。オージーの夫との一風変わった日常生活を綴っている。
14歳の息子は成長期である。半年前は私より背が小さくて身長が160センチもなかったのに、今では175センチ近くもある。半年で15センチも伸びてしまった。顔も既に少年というよりは、青年のように長く、あごが尖がってしまって、「一体これは誰?」という感じになってしまった。私は息子の成長が嬉しい反面、戸惑っている。
オーストラリアに移住した9年前は、私の背中におんぶされていた息子。写真も残っているが、顔が丸くて赤ちゃんのようで、とても愛らしかった。現地の小学校の準備クラス(プレスクール)に入学できる年齢だったが、5歳なのにまだオムツを履いていたため、入学を断られた息子だった。でも私が「一緒に通学して息子の面倒を見ますから、ぜひ入学させてください」とお願いして、入学させてもらった。
かんしゃく持ちで、駄々をこねると私をたたいて、クラスの先生に皆の前で怒られていた息子。走るのが遅く、毎年運動会でびりっけつでも、とても楽しそうに走っていた息子。いつまでも成長が遅くて、3歳になっても自分の名前を言えなかった息子。当時は北海道に住んでいたため、3歳児健診では、「専門家の診断を受けてください」と言われたくらいだった。だけれども、今ではすっかり普通にしゃべれるようになった息子に、母としては嬉しいとしか言いようがない。
昔を思い返すと、小4になっても靴ひもを結べず、いつもマジックテープの付いた靴を履いていた(いくら教えても、「ムズカシイ」と言って、結局できなかった)。自転車にも乗れず、小5でようやく乗れるようになったくらいだった。いつまで経っても華奢で、太ももは私の腕くらいの太さしかなかった(私の腕が太過ぎるのか?)。それが、あっという間に大きくなってしまって、嬉しいような悲しいような複雑な気持ちになっている。
あと何年かすればすてきな彼女を連れてきて、「結婚したい!」と言うんだろうな。その時は、息子の選んだ恋人を喜んで迎えたいと思う。
ポップ登美子
北海道札幌市出身。オージーの夫と2人の子どもと共にノーザン・テリトリーに在住中。本紙コラムの他にも、「地球の歩き方」海外特派員などでのフリーランス・ライターや日本語ガイド、日本語教師としても活躍中