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就労ビザ(482ビザ=TSSビザ)申請に必要なMarket Salary Rate要件

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就労ビザ(482ビザ=TSSビザ)申請の際に求められるMarket Salary Rate(MSR)の要件について教えて下さい。(40代男性=会社員)

A

ビザの発給後、サブクラス482ビザ・ホルダーに支給される給与・手当(以下「報酬」)は、下記の場合に支給される報酬額と同額以上(つまり職種や勤務地等に基づく報酬額の相場=MSR以上)であることが求められます。

  • ビザ申請者と同じ職務を行う豪国籍者、永住者を同じ勤務地で雇用している場合、その報酬額。
  • 上記不在の場合は、ビザ申請者が就くポジションに豪国籍者、永住者が就いたと想定した場合に支給されることになる報酬額。

MSRルールは(1)豪国内における賃金水準の低下、及び(2)スポンサーによるビザ申請者からの搾取、を防止することを目的としています。受け取る給与が相場を大きく下回ることになるにもかかわらず、当地での就労を希望する外国人は数多く存在し、その受け入れを許すことは、豪国内の労働市場における給与水準の下落を招くことになるからです。

報酬額は給与及び各種手当の合計であり、後者には住宅補助、子女の教育費補助、保険料支払い、貸与される車の年間の価値などを含みます。ただし各種手当には、事前に支給額が確定しているもののみ算入可能ですので、残業手当を含めることはできません。同様にボーナスも原則として報酬額に含めることができません。ボーナスの支給は業績に連動するため、支給は保証されておらず、また支給されるにしても事前にその額を確定することができないためです。支給予定の報酬額がMSR以上であることの根拠の提出は、ビザのスポンサー企業側に求められます。根拠として一般的なものに「就労予定地域における類似ポジションの求人広告」「給与に関する各種統計・調査資料」などがありますが、社内で同じ職務を担当する豪国籍者や永住者を雇用している場合は、比較のため当該社員の雇用契約書や給与明細の利用が可能です。なおビザ申請者に支給される報酬額が年25万ドルを上回る場合は、報酬額がMSR以上である主張の根拠の提出は免除されます。

ビザのスポンサー企業はノミネーション申請書に記載した額またはそれを上回る額をビザ・ホルダーに対し支給する義務がありますので、ノミネーション申請時に支給予定報酬額を100パーセント確定できない場合(例えば家賃が未定等)は、「少なくともこの額は支給する」という最低保証額をノミネーション申請書に記載することになりますが、あまり控え目な額を記載した場合はMSRを下回ることになる可能性もありますので注意が必要です。なお給与額が日本円で設定されている場合、為替レートの影響を受けますが、豪ドルに換算された実際の支給額が、為替変動で結果的に申請書記載額を下回った場合は、補てんによる調整が認められます。

*オーストラリアで生活していて、不思議に思ったこと、日本と勝手が違って分からないこと、困っていることなどがありましたら、当コーナーで専門家に相談してみましょう。質問は、相談者の性別・年齢・職業を明記した上で、Eメール(npeditor@nichigo.com.au)、ファクス(02-9211-1722)、または郵送で「日豪プレス編集部・何でも相談係」までお送りください。お寄せ頂いたご相談は、紙面に掲載させて頂く場合があります。個別にご返答はいたしませんので、ご了承ください。


高畠英明(たかはた ひであき)
Staff Solutions Australia Pty Ltd

九州大学法学部及びNSW大学法学部卒業後、2002年NSW州の弁護士資格を取得。シドニーの法律事務所で企業法務に従事の後、査証手続きに関する国家資格も取得。大手企業を主要顧客とするビザ専門法律事務所や監査法人の査証部門における勤務を含む15年以上の経験を生かし、アドバイスを提供する(MARN03 25064)

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