ペット
Q
ちょうど1歳になるブリティッシュ・ショートヘアのオス猫を飼っています。完全室内飼いでノミにも気を付けているのに、いつも体をかゆそうにしています。食べ物アレルギーではないかと思うのですが、アレルギー検査などあるのでしょうか?(20代女性=飲食業)
A
かゆみを伴う皮膚疾患の原因はたくさんありますが、そのうち食べ物が原因となる食物アレルギーは、犬で15~45パーセント、猫では10~23パーセントと言われています。特徴としては発症年齢が1歳以下、そして症状に季節性がなく、1年を通してかゆみがあることです。
原因
アレルギーを引き起こす原因(アレルゲン)のほとんどは食事に含まれるタンパク質によるものです。一般的なペット・フードによく含まれている牛肉や乳製品、鶏肉や魚などに一番多く見られます。どのタンパク質に反応しているかは犬猫一頭一頭でそれぞれ異なります。
症状
強いかゆみや皮膚炎が季節に関係なく見られます。猫は特に顔や首の周りを、犬は口や目の周り、耳、足先や肛門周囲をかゆがります。皮膚を引っかいて傷ついた場所が2次的に細菌感染や真菌感染を起こすと、かゆみも臭いも強くなります。犬の場合は皮膚疾患に伴い、軟便や下痢も同時によく見られます。
診断
発症年齢、皮膚症状の分布、季節性の有無などで食物アレルギーが疑われても、ペットが何に反応しているかを調べられる有用なアレルギー検査(血液および皮内反応試験)は残念ながら現段階ではありません(一応血液検査はありますが、信頼性に欠け、皮膚科の専門医には推奨されていません)。
食物アレルギーのアレルゲンを特定する上で、一番有用な診断方法は、それまでに食べたことのあるタンパク質を食餌(しょくじ)から除く「除去食試験」(Elimination Food Trial)です。最低でも2カ月間、それまで口にしたことがないタンパク質(鹿、カンガルー、ワニなど)だけを与え、その間にかゆみが治まるかどうかを試します。家で特別食を用意するのが難しい場合は、アレルギー用の処方食(タンパク質を加水分解しアレルギー反応が出にくくしてある)を使うこともできます。試験期間中はおやつや拾い食い、また味付きの薬などにも気を付けなければいけません。
除去食で改善が見られたら、以前食べていたタンパク質を1種類ずつ与える負荷試験を行い、何を食べたら症状が再発するかを見ます。2週間与えても再発しない場合はクリアです。逆に症状が再発した場合は除去食に戻し、症状が落ち着いてから別のタンパク質を試します。これを繰り返すことで、アレルゲンを特定することができます。
治療
原因となる食材の特定ができていれば、それを除去した食餌を与えることで症状は抑えられます。アレルゲンの特定や回避ができない場合、または他の過敏症(アトピーなど)が混在している場合は、症状を抑えるための抗ヒスタミン剤やステロイド、皮膚のバリアを強化するオメガ3脂肪酸を与えるなどして症状の緩和に努めます。
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戸塚 遊喜(とつか ゆき)
Chatswood Veterinary Clinic
シドニーの現地校を卒業後、シドニー大学の獣医学部を卒業。現在、シドニーのノースショアにある小動物専門病院「チャッツウッド・ベタリナリー・クリニック」に勤務。動物の鍼灸師の資格を保持している。