トミヲが掘る!宝石大陸オーストラリア
Lake Moogerah, QLD – Chalcedony
ムーゲラ湖の玉髄(前編)
ブリスベンから車で南西に約1時間。ブーナ(Boonah)とアラトゥラ(Aratula)という町の間にあるムーゲラ湖(Lake Moogerah)に注ぐ干上がった川が今回狙うポイントだ。
一帯の土壌は、2400万年前に噴火したメイン・レンジ火山から流れ出た玄武岩を主とした溶岩でできている。湖南のグレビル山、ムーン山、東側のフレンチ山などは火山岩の一種である流紋岩、北西側のエドワード山は優白質でも石英をほとんど含まないアルカリ長石を主成分とする粗面岩(Trachy te)で形成されており場所ごとに狙う宝石は変わる。今回はエドワード山側の干上がった川で、碧玉(Jasper)、瑪瑙(Agate)、木の化石(Petrified Wood)、玉髄(Chalcedony)を狙う。
ムーゲラとは、アボリジニの言葉で雷嵐の起こる場所という意味。それだけに、川が完全に干上がるのは冬のごく限られた時期だけだ。
宝石細工クラブのメンバーからの情報で大まかな場所は分かっていたが、実際にはなかなかポイントを見つけられない。日がある間にできる限り探すべく山道を歩き回り、そろそろ諦め時かと思い始めた時、ようやくポイントを発見した。確認がてら川底の石を拾うと、碧玉と木の化石がゴロゴロ。碧玉は紺色と黄土色が混ざった物が多い。帰路も同じ道なので、とりあえずは採取せず、まずはポイントの地形把握が優先と判断。奥に歩を進めると、10セント大の玉髄や5セント大の瑪瑙にも出くわした。しかし、狙うは大物か形の良い物だけだ。
ポイント探しに時間を掛け過ぎたこともあり、辺りは徐々に暗くなってきた。この場所はそれほど遠くはない。また日を改めるか……。来た道を引き返そうと川から出ようとした瞬間、目の前で朱色の石がキラリ。紅玉髄だ。
外皮には油絵の筆のような模様、内側には細かい水晶のおまけまで付いた大物である。懐中電灯で透かして見ると、外皮の独特な模様に加え、水晶の模様までも楽しめる。うれしさ倍増。山に喜びの雄叫びがこだました。
それだけじゃ終わらない。車に戻ってからまだ日が少しあったので、何気なく車周りを散策。すると、何と地面から碧玉の端っこが顔を出している。掘り出すと、これが15キロ以上の重さで所々が透けた大物だ。この石を持ち帰って切ってみた。それは碧玉に包まれた瑪瑙と玉髄が混ざった掘り出し物。いつだって最後の最後でドラマが待っているものだ。
(後編に続く)
このコラムの著者
文・写真 田口富雄
在豪24年。本職の不動産仲介業の傍ら暇を見つけては愛用のGoProを片手に豪州各地を掘り歩く、石と旅をこよなく愛するトレジャー・ハンター。その活動の様子は、公式YouTubeチャンネル(Web: youtube.com/user/gdaytomio)で楽しめる。現ゴールドコースト宝石細工クラブ理事長