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限定された意味の新語「ピッキング」─オーストラリア弁(新方言)を探せ 第3回

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 英語圏で暮らし始めると、日本で使っていたあのカタカナ語と、あのカタカナ語は、もともと同じ英語から生まれていたのか、と気付くことが多い。レモネードとラムネ、マシンとミシン、パウチとポーチ、チョークとチャコ、コットンとカタン(糸)、フックとホック、アイロンとアイアン、ジャックとジャッキ、ラベルとレーベル、ステッキとスティック……など。

 外国語を日本語に取り入れる時に、元の言葉から発展して違う意味に使われるようになったり、狭く限定された意味だけに使われるようになることを「ローン・シフト」と言うのだが、こういった1つ英語から2つの違う意味のカタカナ語が生まれる現象もその1つだ。

 オーストラリアの日本人社会でしか使われていないローン・シフトの代表と言えば、「ピッキング」という言葉ではないだろうか。日本では、倉庫業務などで商品をピックアップする仕事をピッキングと呼んだり、泥棒の鍵破りをピッキングと呼ぶことがあるようだ。

 オーストラリアの日本人社会、特にワーキング・ホリデーの人びとの間では、ピッキングといえばフルーツ・ピッキングのことを指す。マンゴーやストロベリー、グレープといった果物の収穫の仕事だ。

 こちらのファーム(農場)は人口の少ないエリアで広大な土地を使用していることが多く、収穫の時期になると多くの季節労働者が必要になる。各国からやって来るワーキング・ホリデー・メーカーたちも、大切な労働力なのだ。

 このピッキングという言葉は、日本語だけで表現するなら「果物の収穫」となる。日本語だけで表現できないわけではないが「ピッキング」という言葉を使った方がより短く簡単に表現できる。

 英語ではフルーツ・ピッキングを短縮した言葉で使用することはないが、オーストラリアの日本語では頭の「フルーツ」を省略して「ピッキング」だけで使用することも多い。

プロフィル

ランス陽子

フォトグラファー/ライター、博士(美術)。現在、グリフィス大学の大学院でオーストラリアの日本人コミュニティーにおける日本語変種を研究中。ゴールドコーストでの調査を手始めに、今後はオーストラリア各地での調査を予定している。在豪日本人が使用している面白い言葉についての情報を募集中。情報やメッセージはFBコメント欄かFBメッセージまで。「ゴールドコースト弁を探せ!プロジェクト」
(Web:www.facebook.com/ゴールドコースト弁を探せプロジェクト

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