第12回 Yowah, Outback Queensland / Opal ヤワのヤワナッツ・オパール(中編)
冬の砂漠の朝は冷え込むかと思いきや、気温13度。朝食を簡単にすませ、いざ採掘へ。
今回のポイントは、町から徒歩5分の場所にある高さ5メートルほどの丘。かつて、ある採掘者が重機で採掘していたのを、彼が高齢で引退するのを機に埋め立てた場所だ。
この世界では、オパール採掘を止めるのは、オパール、資金、採掘者の体力のいずれかが尽きた時だと言われる。しかし、このヤワの町でオパールが尽きることはない。
聞けば、つい先日14歳の子が掘った原石が、その場で他の採掘者に5,000豪ドルで買い取られたらしい。まだまだ、この町には一攫千金の夢は残っているのだ。
まずは、地形の把握のために地表のナッツを拾いながら歩く。所々にある草むらは、全て既に掘られた穴の上にある落とし穴のようなもの。深いと1メートル近くもあり、うっかり踏み込むと大けがにつながりかねず要注意だ。
更なる難敵がハエだ。目、耳、鼻、口……。穴という穴に容赦なく突っ込んで来る。虫除けネットがなかったらと思うとゾッとする。
ふと、足下に直径3~5センチほどの球状の砂の塊を見つけた。ハンマーで軽く叩くと甲高い金属音。割ると黒光りの鉄鉱石が顔を出す。叩いても金属音がしないかたまりはただのサンド・ストーンなのだが、ある程度の数の小さなナッツを拾っても「もしすごいオパールが入っていたら」と思うと怖くて割れない。そこで、形を保ったナッツは家に持ち帰ることにした。
他の採掘者が残した鉄鉱石の欠片がゴロゴロしている穴を、丘の頂上付近で見つけた。「ここ掘れワンワン」とばかりに狙いを定めて掘る。柔らかい土を小型シャベルで掘り進めると、ナッツと鉄鉱石の欠片が止めどなく出てくる。ナッツは割らずに袋に詰め、鉄鉱石のかけらは太陽に照らしてオパールの遊色の有無を確認する。
とその時、掘り出した土の中に青と緑に輝く鉄鉱石の欠片を発見! ヤワナッツ・オパールだ! 力強く輝き、磨かずとも上物だと分かるほどだ。そしてこれを皮切りに、遊色入りの鉄鉱石が続々と出て来るではないか。
そして訪れたのが、更なる大物ヤワ・ナッツとのご邂逅(かいこう)である。それはもはやナッツではなく、サツマイモとも言うべき大物。「もし、この中にオパールが入っていたら……」。そう思うと興奮が止まらない。
大物をゲットし、大満足で宿営地に引き上げることとなった。成果物を水洗いしてからの夕げは、焚き火で焼くステーキだ。オパールを眺めながらむしゃぶりつく肉はこと更うまい。
この日の最大の獲物「サツマイモ」を枕に目を閉じる。「つくづく、運命的とはこういうことだよな」と、昼間の出合いを噛み締めながら、いつしか眠りに落ちたのだった(後編に続く)。
このコラムの著者
文・写真 田口富雄
在豪24年。忙しい中に暇を見つけては愛用のGoProを片手に豪州各地を掘り歩く、石、旅をこよなく愛するトレジャー・ハンター。そのアクティブな活動の様子は https://www.treasurehuntingaustralia.com/に詳しく。宝探し、宝石加工に興味があれば必見。前・ゴールドコースト宝石細工クラブ理事長