第13回 Yowah, Outback Queensland / Opal
ヤワのヤワナッツ・オパール(後編)
冬のQLD州の西の果て、日の出は遅い。この日は、昨日の収穫に十分満足していたので、ゆっくりとヤワの町を満喫するつもりで身支度する。硫黄のにおいが鼻をくすぐる湯でシャワーを浴び、焚き火で焼いたトーストとフリーズ・ドライ食品を朝食にした。
QLD州西部は乾燥した気候の割に鳥の種類が豊富で、ヤワは200種以上が観察できる鳥天国でもある。朝食中もすぐに鳥に囲まれ、軽い気持ちで餌をあげようものなら収拾が付かなくなる。
朝食後、採掘を開始した。昨日の丘の周りには、あちこちに乾燥した大地を掘った穴がある。その中の土の固さはツルハシでも崩れないほどに硬く、カチカチである。当てもなく掘っていては体が持たないので、まずは朝の散歩がてら1つひとつの穴を探索する。
1時間ほどで、周りに割れた鉄鉱石がたくさん落ちている深さ約2メートル、直径約3メートルの穴を発見した。捨て置かれた鉄鉱石の大半は赤紫色で、心なしかボソボソと乾燥しており、どれにもオパールは入っていない。それでも念のため穴の中の壁をのぞいてみると、所どころヤワナッツが埋まっている。
周りの固い土をピックで丁寧に砕き、幾つか取り出して試しに割ってみた。予想通り、その全部がオパールの入ってないハズレ。前の人が、ナッツが見える状態で採掘を中止したのはおかしいと思っていたが、理由は簡単だった。彼も同じように、赤紫の鉄鉱石を幾つも試し割ってみては、オパールにはありつけなかったということだ。その後も、念のために試した他の穴も全て不発。「ダメなときはダメ」だ。ヤワの町探検にスッパリと切り換えることにした。
さすがに採掘者の町だけある。コンビニエンス・ストアを卸問屋に改装した店などさまざまなオパールの店があり、何時間いても飽きないほどだ。
ひと通り探索を楽しみ、その後は温泉に浸かって午前中のほこりを落とす。そして、再び大物を狙い、いざ採掘場へ。
日没までは、まだ小1時間ほどある。ツルハシを片手に昨日の丘の頂上の土をほぐし、かき出すと、小さめのヤワナッツがボロボロと出てくる。ふと穴の奥に目をやると、あやしい塊の一部が見えた。シャベルとピックで土をどけてから引っ張るが抜けない。それでも両手で塊の端をしっかりとつかみ力任せに引っこ抜くと、直径30センチ、高さ10センチはあるヤワナッツがゴロリと姿を現した。
水で洗うと所どころ紫色の輝きがある。ひょっとしたらひょっとするぞ……。興奮が止まらない。重さがなんと8キロもある超大物だ。
キャンプ場でその大物を洗っていると他のキャンパーたちが目を丸くして寄って来る。売ってくれと催促されたが、当然、首を縦には振らない。寄って来る皆の反応を見て、改めてこのオパールのすごさを実感した。
こんな大物に、いつどんな風に出合えるかは予想すらつかないものだ。それが石探しをやめられない1番の理由だ。
このコラムの著者
文・写真 田口富雄
在豪24年。忙しい中に暇を見つけては愛用のGoProを片手に豪州各地を掘り歩く、石、旅をこよなく愛するトレジャー・ハンター。そのアクティブな活動の様子は https://www.treasurehuntingaustralia.com/に詳しく。宝探し、宝石加工に興味があれば必見。前・ゴールドコースト宝石細工クラブ理事長