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 飛躍/ 花のある生活 – flower in life –

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ガラス工房内のステンレスの円柱や配線がいけばなと融合することで、それぞれが新たな美しさを醸し出し、1つの作品となっています

第49回 飛躍

 恭賀新年、明けましておめでとうございます。本年も花のある潤いにあふれた生活となりますように、花のコラムを皆様にお届けしていきたいと思います。干支の卯年といえば、うさぎが跳ねる姿を連想することから飛躍の年と言われています。新たなことに挑戦できる1年になればと思います。

 日本国内でガラスの街と言われている場所をご存知でしょうか。小粋な路面電車が走り、現代ガラス作家の巨匠デイル・チフーリの作品が所蔵された美術館があり、かの有名なドン・ペリニヨンの元醸造最高責任者が日本酒を造っているあの街。

 米どころとしても名高い、日本海に面した静かなあの街とは、立山連峰を望む富山県です。

 そこには多くのガラス作家が工房を構えています。私はガラス工房を巡る旅の途中で、手てす漉き和紙の製作所を訪ねました。楮こうぞ(和紙の原料)に大だいおうしょう王松(松の種類)や植物を融合せた斬新な和紙の工芸品に出合いました。県内の立山町には、世界的な建築家によって建設された酒造があり、国内で生産された酒米を調合して外国の料理に合うようにブレンドされた新進気鋭な日本酒にも出合うことができました。

 これまでの概念になかった組み合わせによって、新しい物が生まれる喜びに遭遇した旅の最後には、富山ガラス工房内にある「吹き場」と言われる場所で、いけばな制作をさせて頂きました。世界に向けて発信される硝子工芸が生まれる場所が、いけばな作品と一体になっています。

 初春の慶びを、雪化粧された山あいから日の出が見られる様子を表現しています。富山県の湧き水と、澄んだ空気を連想させてくれるようなガラス花器を使い、立山町で分けて頂いた和紙の一部を椿の葉の上に被せました。日が昇る様子にはバラとオーストラリア原産のカンガルーポーを使っています。

 静けさの中から生命力が生まれ、花の精を宿すかのような力強さを感じさせる作品を目指しています。価値観や評価から解放された、新たな美しさの表現へと、勇躍して臨む2023年であればと思います。

Yoshimi

いけばな作家
Web: https://www.7elements.me/

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