ゴールドコーストの調査では、無意識に日本語よりも英語の単語の方が先に口をついてしまうという人が80.6%もいたが、なぜ、豪州に住む私たちはそんなにもカタカナ英語を混ぜた日本語を使ってしまうのか。
最も大きな原因は、やはりそれだけ毎日英語に囲まれた生活をしているから、ということが考えられる。調査の結果、71%が日本語より英語の方が日常的に使う場面が多いと答え、パートナーがいる人の場合は約半数の52.2%がパートナーと英語で会話をしていると答えた。
オーストラリアには多くの移民が暮らしており、ゴールドコーストやブリスベンでは約1/3の住民がオーストラリア以外の国で生まれている。それでも、政治、経済、社会など全てにおいて英語が使われており、日常生活で英語を全く話さずに暮らすことはなかなか難しい。ここで暮らす以上、英語を話さなければならないという社会的、心理的な圧力も、やはりある。
また日本人は、自分の住む地域社会に調和することを良しとする人も多く、日本人だけで常にかたまって生きていこうという人が少ない。もちろん日本人会や商工会議所、日本人同士のコミュニティーも存在するが、そういった組織に属している人も豪州の地元社会に溶け込んでいる人たちが多い印象を受ける。
日本人街のような日本人ばかりが住む地域や、日本語だけで生活できる場所を作っていこうという機運も少ない。私の大学にも日本人学生は多数いるが、ノルウェー人会、フィリピン人会、韓国人会、パキスタン人会などさまざまな国のクラブがある中で、ジャパン・クラブだけは日本語を母語としない日本語を学ぶ学生たちのためのクラブなのである。
「日本語を忘れかけているから」と答えた人は意外に少なく、22.6%だった。76.7%の人が毎日誰かと日本語で会話していると答え、コロナ禍以前までは、90%の人が2年に1回かそれ以上の回数で日本に帰国していた。また、カタカナ英語を混ぜてしまう理由に仲間意識は関係ないようである。「自分だけ日本語のみで会話するのは恥ずかしいから」や「オーストラリア在住者仲間特有の言葉で話すのが楽しいから」といった項目を理由に選んだ人は0%だった。
英語ばかり使う生活を送っていると、つい日本語にも英語が影響してきてしまう。分かっちゃいるけど止められない、というのが、豪州在住日本人の実情のようである。
プロフィル
ランス陽子
フォトグラファー/ライター、博士(美術)。現在、グリフィス大学の大学院でオーストラリアの日本人コミュニティーにおける日本語変種を研究中。ゴールドコーストでの調査を手始めに、今後はオーストラリア各地での調査を予定している。在豪日本人が使用している面白い言葉についての情報を募集中。情報やメッセージはFBコメント欄かFBメッセージまで。「オーストラリア弁を探せ!プロジェクト」
(Web:www.facebook.com/JapaneseVariationInAUS)