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“新作バレエ”はどうやってできる?/QLDバレエ団 合々香と弘平のグランパドトゥ 第25回

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2022年に新作として発表されたステファニー・レイクの『バイオグラフィ(Biography)』(©︎ David Kelly)

 皆さん、こんにちは。

 かねてより、僕の担当する回では、古典バレエなどかなり昔からあるおなじみの作品について多く取り上げてきました。しかし、今回は少し趣を変えて、新作バレエについて掘り下げていきたいと思います。

 新作バレエは、これまでになかった演目を一から制作していく場合と、振付家が既にある演目をステップやストーリーを大胆に変えるなどして、新しい観点で新解釈の作品として作り上げるケースがあります。

 いずれにせよ、バレエを一から作り上げていくにはとてつもない時間と労力が必要になります。作品の長さやスケールの違いはありますが、物語の構想、舞台美術の作成、それに伴う金銭面のやりくり、振付など、数年の準備期間を経てから舞台で公演されることがほとんど。

 特に、長編バレエは物語を言葉で伝えることができないため、既に世に出ていて、多くの人が知っている物語や本、映画作品などから題材が選ばれることが多い傾向にありますが、コンテンポラリーの新作などの場合は、抽象的な動きが多いため、そういった傾向は少ないように思います。





 振付家のスタイルによって、ダンサーに求められるものもガラッと変わってきます。ある振付家の場合は、ダンサーにステップを正確に伝え、ダンサーを媒体に作品を創作するというスタンスを取るため、いかに振付を忠実に再現できるかということがダンサーに求められる非常に重要なポイントになります。

 一方、ダンサーと一緒に作品を作っていくスタイルもあり、振付家はダンサーの創作性、芸術性を最大限に引き出しつつ、唯一無二の作品を共に創作していくのです。その場合、ダンサーは、振付家の意図を的確にくみ取り、自分の持ち得る全てを出し切って、お互いに理解し合おうとうする姿勢が求められるのです。

 バレエという芸術は、長く愛された古典だけでなく、ダンサーが長年培ったテクニックや芸術性などを創造性豊かな振付家が作品に落とし込み、皆さんの心を揺さぶるような作品を作っていくことで、多くのすばらしい作品が未来に受け継がれていくことになるのです。その新しいムーブメントが起き続ける限り、バレエの未来は明るい、僕はそう信じています。

このコラムの著者

岩本弘平/QLDバレエ団シニア・ソリスト

兵庫県伊丹市出身。11歳からバレエを始め、18歳でメルボルンのオーストラリアン・バレエ・スクールに入学。その後、ロイヤルNZバレエ団を経て、2018年にQLDバレエ団に移籍。趣味はウクレレ、スポーツ観戦、睡眠、日本のお笑い。祖母の手作り水餃子の味を懐かしみながら、大好きなウィスキーのグラスを傾ける。

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