メルボルンの魅力が詰まった「夜」の楽しみ方とは? まばゆい光を放つメルボルンのお薦めのナイト・ライフを紹介します。(協力=ビクトリア州政府観光局、執筆=原田糾)
イーストエンド地区で観劇
ゴージャスな舞台芸術に身を委ねよう
舞台鑑賞の魅力。それは何と言っても、演劇、ミュージカル、コメディー・ショー、ライブ演奏と、さまざまなパフォーマンスを披露する演者と、会場で鑑賞する観客とが直につながれること。そして、舞台装置や音楽、ライティングなど、趣向を凝らして作り上げられた舞台演出に身を委ね、演者と共にライブ感のある芸術作品を一緒に作り上げることではないでしょうか。
舞台上で繰り広げられる演者の声や表情を客席から生で感じ、その臨場感満点の空気にぐいぐいと引き込まれることで、劇場の空気は更に出来上がっていく。その空気の一部になることこそが舞台鑑賞の醍醐味。メルボルンの夜の楽しみ方の1つは、何と言ってもこの舞台芸術の鑑賞なのです。
市内中心部CBDの東側、スプリング・ストリート、ロンズデール・ストリート、フリンダース・ストリート、スワンストン・ストリートに囲まれた「イーストエンド・シアター地区(East End Theatre District)」と呼ばれるエリアには、6つの歴史的な劇場が集中しており、世界に先駆けたミュージカルのプレミア上演をはじめ、オペラやダンス、ライブ・コンサート、文学トーク、地元のコメディー・ギグ、深夜のキャバレー・ショーまで、さまざまなステージが毎夜繰り広げられています。
メルボルンを訪れるなら、ぜひそんな舞台芸術を楽しみたいもの。と言っても、「何をするにも気楽に」がメルボルン流。かしこまる必要はありません。専門の公演情報とチケット販売のオンライン・サイト「East End Theatre」から、これはという公演を見つけたら、今夜にでも早速出掛けましょう。周辺には予約なしで気軽に入れるレストランやバー、ナイト・クラブもたくさんあり、メルボルンの夜を楽しむ「ナイトアウト」には最適です。
■予約サイトEast End Theatre
Web: eastend.melbourne
歴史的な6つの劇場
CBDの北端、スプリング・ストリートに1886年から建つのがプリンセス・シアター(Princess Theatre)。精巧なドーム型のビクトリア朝時代のファサード(正面玄関)が歴史を感じさせてくれます。ステージではこれまで『オペラ座の怪人』『レ・ミゼラブル』『キャッツ』『マンマ・ミア』といった国際的な大ヒット作品を上演。重厚感たっぷりのゴージャスな客席から有名作品を鑑賞できます。
コリンズ・ストリートには、エレガントなアーチ型のファサードがレトロな雰囲気のリージェント・シアター(Regent Theatre)があり、美しいシャンデリアが下がる壮観なホールの客席から世界的に評価の高い演劇作品を堪能できます。
これまで、ディズニー原作の『ライオン・キング』、クイーンの『ウィ・ウィル・ロック・ユー』、世界初演となった『キングコング』のほか、『サンセット大通り』『ウィキッド』『プリシラ』などが上演され、多くの話題を集めました。
同じ道路の向かいにあるのがビクトリア朝の歴史的建造物が遺産登録されているアテナエウム・シアター(Athenaeum Theatre)。ビクトリア州で最も古い公的機関として建造されたこの建物では、コメディー・ショー、ライブ・コンサート、演劇にまたがるさまざまなライブ・パフォーマンスが上演されています。
エキシビジョン・ストリートにあり、オーストラリアの国家遺産に登録されているのがハー・マジェスティーズ・シアター(Her Majesty’s Theatre)。これまで『メリーポピンズ』『ミス・サイゴン』『現代版レ・ミゼラブル』をはじめ、オペラ、演劇、ミュージカル、ダンスが上演されています。
他にも、ライブ・エンターテイメントを楽しめるヨーロッパ朝の外観が美しいコメディー・シアター(Comedy Theatre)、フリンダース・ストリートにあり、『メルボルン国際コメディー&映画祭』『メルボルン・ジャズ・フェスティバル』など、年間を通して人気のフェスティバルを開催しているフォーラム・メルボルン(Forum Melbourne)があります。
展望台からサンセットを眺める
メルボルン観光の初日に訪れる場所としてお薦めなのが、メルボルンのランドマークとなっている高層ビル「ユーレカ・タワー(Eureka Tower)」です。なぜならメルボルンの街とその見どころを俯瞰(ふかん)で眺めることができるからです。
16の見どころを一挙に
訪れて初めに案内されるのが地上階にあるVRルーム「ボイジャー・シアター(Voyager Theatre)」です。ここに24台ずらりと並んでいるのが、視覚、聴覚、体感だけでなく、臭覚にも訴えかける最新の6D VRマシン。数億円を掛けて南半球で初めて導入されたという、そのバーチャル・リアリティー装置の1台に深々と腰掛けVRヘッド・セットを装着すると、360度の没入型超高精細8Kビデオでメルボルンとビクトリア州の見どころをダイジェストに、バーチャル・リアリティー体験として見ることができます。
早朝の穏やかなヤラ川で本格的にカヌーを操ったり、ポート・フィリップ湾を臨む遊園地「ルナ・パーク(Luna Park, Melbourne)」で南半球最古の木製ジェットコースターに乗って爽快な潮風を感じたり、気球に乗ってメルボルンの早朝の上空を浮かんだり、はたまたカフェでバリスタが蒸気を上げながらエスプレッソ・マシンでコーヒーを作る姿を眺めたり、路地の色鮮やかなウォール・アートが創り出される瞬間に立ち合ったり……。
更には、フィリップ島のペンギン保護区で日没と共に海から上がって来る1000匹以上ものペンギンの行進を間近に見たり、ヤラ・バレーやモーニントン半島の広大なワイナリーを上空から眺めたりと、VRによってメルボルンのさまざまな魅力を1度に知ることで、メルボルン滞在中に何を体験したいかを決めることができるというわけです。
また滞在中には難しくても、いつかは時期を合わせて行ってみたいと思わせてくれる、メルボルンの有名イベントもVRによって擬似体験できます。
紳士淑女のように着飾って観戦を楽しむ伝統的な競馬レース「メルボルンカップ」の会場で、数万人の来場者たちが固唾を飲んでレースを応援する興奮の渦に入り込み、ゴールに向かって走る馬たちの雷鳴のようなひづめの音を感じたり、テニス世界4大大会の1つ「全豪オープン」のメイン会場の最前列席から手に汗握る決勝戦を観戦をしたり、メルボルン市民が家族ぐるみで熱狂するスポーツ、AFL(オーストラリアン・フットボール)をサポーターと一緒に応援する体験をしたり……。
メルボルンを象徴する16の見どころを、まずは俯瞰体験してみましょう。
高さ約300メートルの世界へ
そして、エレベーターに乗り込んで約40秒で一気に88階、地上約300メートルに向かうと、そこはユーレカー・タワー最上部にある南半球で最も高い展望台「メルボルン・スカイデッキ(Melbourne Skydeck)」。360度全てが展望デッキとなっているので、メルボルンの全貌をまさに真俯瞰から大パノラマで見渡すことができます。オーストラリア随一の人口を誇る大都市でありながら、街の至る所に緑豊かな大きな公園が点在し、「ガーデン・シティ」というニックネームで呼ばれることを納得することができるはずです。
太陽に美しく照らされるヤラ川から続く運河、稜線が光輝くダンデノン丘陵の山並み、貿易港としてコンテナ船が行き交う広大なポート・フィリップ湾、ガラス張りの近代的なビル群と歴史的建造物が美しく混在するCBD、F1グランプリの会場となっているアルバート・パーク(Albert Park)の市街地コース、世界遺産に登録されている王立展示館(Royal Exhibition Buiding)とカールトン庭園(Carlton Gardens)などの眺望が楽しめます。
スリリングな気分を味わいたい人は、展望デッキのビルの外側に3メートルほどそろりと張り出す全面ガラス張りの展望プラットフォーム「ジ・エッジ(The Edge)」を体験しない手はありません。ガラスの床の遥か下に米粒のように車が行き交う様子を見れば、高所恐怖症でなくても足がすくむことでしょう。
展望台にはキオスクもあります。いよいよ日没が迫ってきたらドリンクを片手にお気に入りの席に座り、ゆっくりと沈んでいく太陽や、夕陽に照らされていた街並みがだんだんと闇に包まれていく様子を眺めるのが特にお薦めです。
■Melbourne Skydeck
住所:Riverside Quay, Southbank, Melbourne 3006
営業時間:(2023年10月1日まで)日~木12PM~9PM、金・土12PM~10PM、月休み、(23年10月2日~24年4月7日)毎日12PM~10PM
Tel: (03)9693-8888
Email: admin@melbourneskydeck.com.au
Web: www.melbourneskydeck.com.au
州各地の恵みを1度に堪能できる
話題のレストラン「ビクトリア」
「美食の街」として名高いメルボルン。日本のように全国どの店でも同じ味の料理が楽しめる有名チェーン店が数少ない代わりに、唯一無二の味わいを追求するレストランが多いのが特徴です。またメルボルン市民は、移民がもたらす世界各地の食文化を本場さながらに味わえたり、それらの文化が融合しメルボルン発祥の新しい料理として進化していくことを、大きな楽しみにしています。
シェフにとってメルボルンは、自身の腕を試す戦場とも言える場所であり、またその腕をより高めてくれる修行の地でもあるようです。日本人シェフをはじめ、世界各国の多くの腕利きが挑戦のステージを求めてやって来ています。当地で最も権威のあるグルメ評価本「グッド・フード・ガイド(Good Food Guide)」には、その切磋琢磨の様子が詳らかに載っていますので、レストラン選びの際にはぜひ参考にしてください。
今回は、その中でも話題の1店を紹介します。それは南米ペルー出身のエグゼクティブ・シェフ、アレジャンドロ・サラヴィア氏がビクトリア州産の食材のみで作る料理にこだわった「ビクトリア・バイ・ファーマーズ・ドーター(VICTORIA by Farmer’s Daughters)」。季節ごとに州内各地に自ら足を運んで地方の幸を選び抜き、これはという特別な生産者と契約して直接仕入れているというこだわりようで、季節ごとの旬の食材や収穫された新鮮な食材で料理を構成するためメニューは随時変わるというのが特徴です。
州北部沿岸の町、マラクータ(Mallacoota)で収穫された雲丹(うに)から、州中部のマッシュルーム、内陸部マレー(Murray)で摘み取られるオリーブ、ピレネー丘陵(Pyrenees)の牧草地で育てられた放し飼いの子羊まで、ビクトリア州全体で見られる多様で質の高い海産物、畜産物、農産物などを、一番おいしいその時に、素材の魅力を引き立たせる調理法で味わうことができます。
ドリンクはウイスキー、ワイン、ジン、クラフト・ビールと種類が豊富ですが、こちらも全て州内で生産されたもの。特にワインは州内に22あるワイン産地から300以上の銘柄をワイン・セラーに常備し、ソムリエが料理に合う1杯を選んでくれます。
ちなみに、調理に使用する調味料はもちろん、肉や魚を焼く備長炭も州内の物。また、店内にさりげなく配置された調度品や装飾品、壁に映し出されるプロジェクター・アートも、州内の作家によって制作された物だそうです。
予約の際は窓際やテラスに席を取れば、ヤラ川の夜景や青くライトアップされた幻想的な姿のアート・センターのタワーを眺めながら食事ができます。オープン・キッチンのカウンターに運良く座れれば、シェフたちの手際の良い包丁さばきや美しい盛り付けのテクニックの勉強もできるでしょう。
■Victoria by Farmer’s Daughters
住所:Ground Floor, Yarra Building (riverside), Federation Square, Melbourne 3004 VIC
営業時間:水~土5PM~深夜、日11:30AM~6:30PM
Web: www.victoriarestaurant.com.au
秘密のバーは屋上にあり
メルボルンの夜はどこにいて何をしていても、またどの店を選んでも、きっと楽しいものになるはずです。それは万人を包み込んでくれるような大らかな雰囲気がこの街にあるからではないでしょうか。皆がそれぞれに自分なりの楽しみ方を謳歌しているため、気張らず気楽に、自分らしく、メルボルンの夜に溶け込んでみましょう。
さて、クラブやパブなどでにぎやかに楽しむのももちろん良いですが、メルボルンの夜をまったりと過ごしたいなら、静かなルーフトップ・バーを目指すのがお薦め。特に盛夏は午後9時を過ぎてもまだ明るいメルボルン。夕暮れの街を眼下に眺めながら、吹き抜ける心地良い夕風と共に飲むカクテルやビールは格別です。
ただ、街を歩いていてもバーの入り口はなかなか見つからないかもしれません。以下のお薦めの2つのバー以外にもルーフトップのバーは数多くあるので、あらかじめ住所を確認しながら携帯電話の地図アプリを駆使して宝探しのようにお店を見つけるのも楽しいかもしれません。
■Rooftop Bar at Curtin House
住所:Level 7, Curtin House, 252 Swanston ST., Melbourne CBD 3000 VIC
営業時間:毎日12PM~1AM
Email: info@rooftop.co
Web: www.rooftopbar.co
■Rooftop at QT
住所:133 Russell St., Melbourne CBD 3000 VIC
営業時間:月~木3PM~深夜、金・土12PM~1AM、日12PM~深夜
Tel: (03)8636-8800
Web: www.qthotels.com/melbourne/eat-drink/rooftop-at-qt
■第1回
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■第2回
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■第3回
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