8月11日、シドニー日本人国際学校の生徒2人が、同校の職場体験学習の一環として日豪プレス編集部を訪問した。職場体験学習とは、さまざまな職業を実際に体験することで各職業の特色や仕事内容を理解し、将来の職業選択に生かすことを目的にしたプログラムだ。今回は、渡邉佑希さん(12)とR・Eさん(13)が1日記者となり、取材と記事作りを体験。シドニーと東京を拠点に日系企業や関連団体に、オセアニア地域におけるクロスカルチャー・マーケティング・サービスを提供する「doq Pty Ltd(以下、doq®)のビクトリアさんとミコさんにインタビューを行った。
(以下、敬称略)
ビクトリアさんへのインタビュー
R・E:どうしてこの仕事に就いたのですか。
ビクトリア:doq®で仕事をする前は、メルボルンで6年くらい他の仕事をしていましたが、もっと経験を積みたいと思い、転職を考えました。私は日本で生まれ育ち、日本語は何とか話せるので日本での経験や日本語が活かした仕事を探していたんです。その時、メルボルンではそのような仕事がなかったのですが、派遣会社からシドニーで私に合う仕事があると伺い、応募してインタビューを経て現在に至ります。以前、マーケティング関連の仕事をしていたこともあり、日本とオーストラリアをつなげる仕事という点に魅力を感じました。
R・E:英語と日本語では、どちらの方が難しいと感じますか。
ビクトリア:緊張している時は英語になってしまいますが、話す相手によります。英語と日本語を両方話せる人だと、混ぜてしまいますね。私は日本でインターナショナル・スクールに通っていたので、その時の同級生と話す時は、日本語と英語をミックスしてしまいます。正直なところそれはあまりよくないと思うのですが、プライベートだとリラックスしている時に日本語が出るので、ケース・バイ・ケースですね。
渡邉:会社で仕事が大変だと思う時はありますか。
ビクトリア:はい。でも、例えば何か緊急事態が起きたら、同僚たちに「Can you help me?」と声を掛けると、みんなすぐに手伝ってくれるので大変でも翌日まで続くことはありません。大変なことを乗り越えるなど、チャレンジし終えた後にすごく自信が付くので、ある意味、大変なことがあるからこそ成長できるのだと思います。
渡邉:同じ会社の人たちとは、最初からなじめましたか。
ビクトリア:doq®は、「人が中心の仕事」で、「人が中心の会社」なので、みんな良い人ばかりです。私も入社して間もないころは、すごく緊張していましたが、みんなすごくフレンドリーで、メルボルンからシドニーに移ったのであまり友達がいなかったのですが、お勧めの場所を教えてもらったり、一緒に出掛けたり、すぐに会社の人と仲良くなりました。仕事関連で分からないことがあっても、みんな優しく教えてくれて、緊張感はすぐに消えました。
渡邉:会社での人脈を通じて、どのようなことを学びましたか。
ビクトリア:同僚以外にもクライアントとかとの毎日のやり取りで、さまざまなことを学びます。ビジネスについてはもちろん、クライアントもやはり人なので、毎日話すことでフレンドリーになり、他の国からオーストラリアに来た人たちも結構いるので、そういう人たちの母国の話や前職、人生について話を聞く機会があると、いつも光栄に感じます。
R・E:これまでで1番やりがいを感じた仕事は何ですか。
ビクトリア:全部ですね。全部だけど、例えばテレビ・コマーシャルの制作プロジェクトに2、3回携わった際、最初に「これは本当に大きいプロジェクトだ」と思い、「期限内に全部できるのか」と不安になったりしました。しかし、無事にプロジェクトが完了してテレビでコマーシャルを見て「これはいい!」とか、クライアントからdoq®との仕事のおかげでセールスが上がった」という声を頂き、それを聞くともちろんうれしいです。私がすごくやりがいを感じるのは、クライアントがdoq®のおかげでいろいろなことを学べたとか、自分の仕事により一層プライドが持てたという言葉をもらえた時です。
R・E、渡邉:ありがとうございました。
ミコさんへのインタビュー
R・E:ミコさんは、どのようにして日本語を学んだのですか。
ミコ:私は日本で生まれ、父の仕事の関係で5歳からカリブ海にある、トリニダード・トバゴとセントビンセントという島に引っ越しました。5歳から16歳まで家族とその島に住んでいたのですが、その際、両親の勧めで「KUMON」をしていました。日本から教材を送ってもらい、漢字や算数など、いろいろしていましたが、5歳の時に日本を出たので英語も話せない状態で外国に引っ越したため、日本語と英語の両方を勉強するのは難しいと思い、日本語に関しては少しギブアップすることにし、家族の会話だけは日本語をキープした感じです。16歳の時に1度日本に戻り、その際はインターナショナル・スクールに通ったので、会話はずっと英語でした。その時もほぼ家族以外とは日本語を使わなかったので、未だに敬語は苦手です。
R・E:日本とオーストラリアの違いはどのような点だと思いますか。
ミコ:メインは文化の違いでしょうか。日本はいろいろな面で細かいし厳しいところがあり、住むのが難しいと感じます。オーストラリアは、みんなオープンで同僚や上司のマネジャーでも気軽に話すことができ、仕事以外のことでも楽しくみんなと遊べます。
R・E:仕事をしていて楽しいと思えるのはどんな時ですか。
ミコ:私は、今年の4月に入社したばかりで、あまり時間が経っていませんが、思ったよりみんなオープンだと感じています。日本とオーストラリアのクロス・カルチャー・マーケティング・エージェンシーということは分かっていましたが、実際に入社するまで雰囲気など、分からない部分もありましたからね。doq®のメンバーは日本人が多いですが、みんな日本から出て、さまざまな国での経験を持ち、日本にいる日本人よりはオープンな感じで、それが楽しいです。
R・E:逆に、難しいと感じる時は?
ミコ:それは、日本語ですね。入社する前に、日本語を話さなければならないという条件はありませんでしたが、日本語でのミーティングや日本人のクライアントも多いので、結構日本語で話さなければならない時があります。私の場合、英語で返しても良いと言われてるので英語で話すこともありますが、誰かが日本語で話しているのを理解するのが難しいと感じる時があります。仕事以外で日本人の友人はいないし、今は家族とのやりとりが少なく、仕事の時だけ日本語に触れています。たまにクライアントが言っていることが分からない時がありますが、ミーティングの後など、同僚に聞いて助けてもらってるので、ありがたいです。
渡邉:16歳で日本に戻ったと伺いましたが、日本でのインターナショナル・スクールでは日本語の授業はありましたか。
ミコ:日本語の授業はありませんでした。通っていた学校がキリスト教系のインターナショナル・スクールで、生徒はほぼ外国人でしたが、みんな日本で育った人たちでした。だから日本語も堪能だけど、学校ではみんな英語で話していました。
渡邉:社会に出てから日本語を学び直すことは考えましたか。
ミコ:考えましたが、結構難しくて、勉強するより実際に人と話す方が学びやすいと思いました。勉強しないといけないと思いつつ、結局しないままでしたが、doq®に入社して、日本語の感覚が少しずつ戻っている気がします。
渡邉:仕事でやりがいを感じるのはどのような時ですか。
ミコ:4月に入社してからいろいろなことに携わっていますが、自分的にはまだ目標やゴールを達成できていないと思っています。でも、つい最近自分の新しいプロジェクトをマネージしてるので、今はそれが「My biggest achievement」です。
渡邉:会社の雰囲気はどんな感じですか。
ミコ:結構面白いです。大人数ではないですが、みんな優しくて気が合います。仕事の時は真剣に、遊ぶ時は全力で遊ぶ、という感じでメリハリのある会社です。前職は、政治関係の仕事で大きい会社に勤めていたので、家族みたいな感じではありませんでしたが、doq®は小規模な分、同僚やマネージャーと近い関係でアットホームな会社なのでみんなでがんばることができます。
渡邉、R・E:ありがとうございました。
取材を終えての感想
渡邉佑希
今回、日豪プレスで職場体験学習をさせて頂き、私は取材するときのコツを学びました。
インタビューの練習の時に、私は最初、自分が準備していた質問だけをしていました。しかし、編集長の馬場さんは、私にインタビューをした時、私の回答に対して疑問に思ったことを更に質問してきました。馬場さんは、「あらかじめ考えてきた質問だけを相手に聞くのではなく、相手が話してくれたことを更に掘り下げていくことが大切だ」と教えてくださいました。
インタビューの本番では少し焦ってしまい、一緒に職場体験学習に行った先輩ほど質問ができませんでした。しかし、練習では5分ほどで終わってしまったインタビューが、本番では20分以上も続けることができました。
日豪プレスでの体験はとても貴重でしたし、自分の将来の幅を広げることができたと思います。日豪プレスでの体験をこれから生かせるよう頑張ろうと思います。
R・E
今回、日豪プレスで職場体験させて頂き、インタビューする難しさを学びました。初めてインタビューする前に、編集長の馬場さんが質問するコツを教えてくださいました。馬場さんは、ただ質問するのではなく、返ってきた回答をよく聞き、その回答の中で疑問に思ったことをどんどん質問していくのが良い、と教えてくださいました。つまり、相手に興味を持ち、もっと知りたいと思うことが大切、ということです。
しかし、実際やってみるととても難しかったです。話を聞いている間、ずっと「次の質問は何にしよう」と思ってしまったからです。そうすると、あまり話が頭に入ってこなくて余計に焦ってしまい、上手に質問することができませんでした。
昼休みの時に一緒に職場体験に来た後輩と話す時も、その「相手の話に興味を持ち、その中で疑問に思ったことを質問する」ことを心掛けてみました。すると、自然に会話が続きました。
日豪プレスで体験させて頂けたことはとても貴重でした。私は小さいころから編集者にあこがれていたこともあり、とても良い経験ができたと思います。日豪プレスで学んだことを無駄にせず、将来を考えるヒントにしていきたいと思います。