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日本の耐熱ガラス・メーカー「HARIO」がオーストラリアに進出─コーヒー文化の首都メルボルンで開所式を開催

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左からHARIO柴田亘保・取締役副社長、HARIO Australiaの張社長、Bombora Suppliesのバーナード社長

 8月18日、メルボルンのクラウン・タワーで、日本製の耐熱ガラス・メーカー・ハリオ(HARIO)が、「HARIO Australia」の開所式を行った。

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 HARIOは、日本国内で唯一、耐熱ガラス工場を自社で保有しているメーカーで、1948年に耐熱ガラスの特性と理化学品で培ったガラス加工の技術を生かし、コーヒー・サイフォンの製作に着手。現在はティー関連器具やキッチン用品など、ガラスに限らず、さまざまな素材を用いて幅広い商品展開を行っている。

 開所式には、バリスタやカフェを中心とした飲食関係者など約80人が参加。冒頭では、HARIOのこれまでの歴史や製品の製造過程、国内外の企業情報や「セラミック・ドリッパーV60」に関する動画が放映された。

会場ではHARIOの歴史や製品に関する動画も放映

HARIO Australiaのブランド・ビジョンは「コーヒー・イマジネーション」

 イベント冒頭では、HARIO Australiaの代表を務める張潤鍾(ヂャン・ユンジョン)氏が「コーヒー・イマジネーション」をブランド・ビジョンに掲げた、ブランド再開発について紹介。

「HARIOは1921年の創業以来、理化学品で培ったガラス加工の技術、そして情熱と精密さを持った日本の職人技術でコーヒー文化を前進させ続けてきました。サイフォンやプレス、ドリッパーからグラインダーに至るまで、さまざまなコーヒー器具を作ることで、私たちの追求には限界がないことを知っていただけたかと思います。コーヒーの楽しみ方は無限にあります。味や香り、存在意義は人それぞれで、答えがありません。世界中のコーヒー愛好家は豆ごとに淹れ方を工夫し、それぞれの淹れ方に最適な器具を使います。私たちのコーヒー器具は、コーヒーの無限の味わいを最大限に引き出します。自分の手でコーヒーを淹れ、味わう体験こそが、私たちがコーヒーを飲み続ける理由であり、自分に合った本当においしいコーヒーを追求し続ける理由でもあります。HARIOは、コーヒーの無限の可能性を追求する器具を作り続けます」

HARIO Australiaの張社長によるスピーチ

 乾杯はバリスタ用品を扱う卸業者のボンボラ・サプライ(Bombora Supplies)のバーナード・ピーターズ社長が行った。

「HARIO Australiaは、日本のHARIO本社とBomboraにとって良好な関係を築くきっかけになりました。HARIOと長く有益な関係を築くことを楽しみにしています」とあいさつ。会場では立食形式で食事とドリンクが振る舞われた。

あいさつと乾杯の音頭をとったバーナード社長

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ゲスト・バリスタによるハンド・ドリップのコーヒーも盛況

 会場では、ハリー・コー氏、石渡俊行氏、ピート・リカタ氏3人のゲスト・バリスタによるハンド・ドリップ・コーヒーが提供された。

 石渡氏はニュージーランドのクライストチャーチでワーキング・ホリデーをしていた際に、現地の友人に淹れてもらったコーヒーがきっかけでコーヒーに興味を持ち、17年前にカフェがたくさんあるメルボルンでコーヒーの道に進んだという。現在はメルボルンにある「Market Lane Coffee」で、クオリティー・コントロール・ディレクターとして勤務。HARIOの製品について、「製品にきちんとこだわりがあり、おいしいコーヒーが淹れられるが、使いやすく、品質の良いコーヒーが抽出できるという点が良いですね。そしてやはりオーストラリアで働いていて、自分の国の製品が外国の人にも認められて使われているというのがうれしいです」と話す。

 式の終盤には、HARIOの柴田保弘・会長より来賓の方々が紹介され、ボンボラ・サプライ(Bombora Supplies)のバーナード社長らに青いHARIOの法被がプレゼントされ、HARIOの柴田亘保・取締役副社長による日本流の三本締めでイベントが締めくくられた。

法被をプレゼントする柴田会長

HARIO柴田亘保・副社長インタビュー

─今回のオーストラリアでの開所も含め、HARIOがこれから海外展開される中で、どういった背景があったのか、また今後のビジョンについてお聞かせください。

「『HARIO』は、漢字で『玻璃王(ガラスの王様)』と書きます。元々はガラスの会社から始まったのですが、コーヒー・サイフォンを作ってからコーヒー器具のカテゴリーに同時並行して、50年がたちます。そして、V60を起点に世界に広がっていきました。そこから『HARIOと言えばコーヒー』というイメージができつつある状況の中で、当社がコーヒー・カルチャーにどのような貢献ができるのかを日々考えています。V60は、自分の出したい味を出せるというのが最大の特徴です。それは、扱う人が変わればコーヒーの味が変わってしまうため難しいという人もいます。また、誰が淹れても同じ味を求めるカフェからしてみると、それは良くないということになります。しかし、自分が出したい味を出せるという点で好む人もいます。実際、オートマティックに誰でも同じ味を出せることを好む方が、マーケットとしては7割を占めており、V60は3割という小さいマーケットです。ですが、それほどコーヒーを愛する人たちに使われている器具です。弊社はそこにプライドを持っているので、コーヒーを愛する人たちをもっと広めていきたいです」

─オーストラリアの市場は、エスプレッソ・マシーンが主流ですが、その中でHARIOの製品にこだわって使用する人たちがいると思うのですが、この市場の中にどのような可能性を感じられていますか。

「エスプレッソとフィルター・コーヒーは、コーヒーというジャンルでは違うのですが、やはりエスプレッソの方を求めている人が多いです。ですが、フィルター・コーヒーで何が伝えられるかというと、コーヒー豆が持つそれぞれの特徴ですね。例えばワインのように、産地が違えば味が異なり、焙煎方法が変われば味も変化するというような、各農園と国の特徴を出せるのが、フィルター・コーヒーの面白さだと思います。組み合わせによっては何千何万と作り方があるので、それが新しいコーヒー・カルチャーではないかと我々は考えていて、それを伝えていきたいです。エスプレッソだと結構同じ味になってしまうので、そうではなく、いろいろなコーヒー豆があり、さまざまな抽出方法があって、多様な味が出せるというのが面白いということを、ワールド・ワイドに広めていきたいです」

─先ほどV60の話で、味の違いが出せるとおっしゃっていました。コーヒーはそもそも焙煎の仕方や挽き方など、いろいろな要素で味が決まってきますが、その中で、同じ焙煎、同じ挽き方の豆であっても、淹れる人によって味が変わるのですか。

「そうですね。速く淹れると速く落ち、ゆっくり淹れるとゆっくり落ちる。それだけでもう味が変わります。例えば、このコーヒー豆は、速く落としたい。なぜならその方が雑味がなくコーヒー本来の味が出せるということをバリスタが考えてコントロールし、豆の特性を引き出すことができる。それにはV60が適任だと思います」

─メルボルンでの開所に至ったのは、やはりオーストラリアでコーヒー・カルチャーの首都と呼ばれる場所だからでしょうか。

「そう思っています。オーストラリアの中でも、コーヒー・カルチャーの中心はメルボルンだと考えております」

─ありがとうございました。

(リポート:早山さくら=日豪プレス)

三本締めでイベントを締めくくった柴田副社長

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