「バルネラブル」海外在留豪国民取り残される

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コロナウイルス帰還フライトの席争奪戦から脱落

 コロナウイルス・パンデミックで海外で足止めされているオーストラリア国民をオーストラリアに連れ帰るフライトの席が不足しており、激しい座席争奪戦のため、何らかの事情を抱える「バルネラブル」と認定されている人々が飛行機に乗れず取り残されたままになっている、と伝えられている。

 1月27日付ABC放送(電子版)が伝えた。

 海外で足止めされているオーストラリア国民は現在39,000人ほどで、そのうち5,000人ほどが「バルネラブル」と認定されている。その人達は、「帰還フライトで優先的に席を与えられる」と言われているが、現実には席を与えられず、フライトを逃してきている。

 そのため、海外に足止めされているオーストラリア国民と家族は、「優先的にオーストラリアに帰らなければならない事情のある人を優先的に帰還フライトに乗せるため、外務貿易省(DFAT)とカンタスは措置すべきだ」と要求している。

 先週、連邦政府が手配し、ロンドンからダーウィンに飛ぶカンタス航空のフライト2便の航空券が売り出されたが、この航空券を求める人がオンライン予約システムに殺到したため、システムが不調に陥った。コンピュータ・スクリーンで航空券予約手続きをして、個人情報を打ち込むとエラー・ページになり、それ以上の手続きができなくなったと報告されている。

 また、DFATでは、「バルネラブル認定を受けている人を優先している」と主張しているが、「バルネラブル」の認定を受けながら、オンライン航空券予約手続きの支払いの段階でエラー・メッセージを受け、手続きが進まないうちに全席が埋まってしまったと訴える人が何人もいる。

 一方、席を確保できたオーストラリア国民の中には、ソーシャル・メディアで、「自分は他の人ほどバルネラブルではないだろう」と認める人もいる。

 海外に取り残されているオーストラリア国民は、「カンタスはバルネラブルと認定された人が優先的に席を確保できるよう適正かつ公正なシステムを用意するべきではないか。また、DFATももっと適切な管理をすべきではないか」と不満を語っている。

 そればかりでなく、パンデミック前に安い航空料金で海外に出た人々にとってはカンタスのロンドン・ダーウィン間エコノミー・クラスでも$2,151、ビジネス・クラスとなると$8,600、さらにオーストラリア国内での2週間のホテル隔離も自己負担で$2,000以上かかるとあって手持ちの金ではオーストラリアに帰ることもできず、かといってイギリスに留まることもできないという人も多い。

 サイモン・バーミンガム外相代理は、「海外に取り残されている豪国民がすぐにゼロになると期待してもらっては困る」と発言している。

 大勢の豪国民が海外に取り残されてしまった原因として、オーストラリア政府が海外からの渡航入国を全面的に禁止した措置が挙げられ、人権法廷弁護士のジェフリー・ロバートソンQCは、「世界人権宣言の趣旨に基づき、海外のオーストラリア国民は帰国する権利を有する」として、オーストラリア政府の措置に人権侵害の違法性があると主張している。
■ソース
Vulnerable Australians being left behind amid scramble for seats on coronavirus repatriation flights

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