疫学専門家がNSW州政府の蔓延対応を批判
6月11日以来シドニー都市圏東郊のボンダイを中心としてコロナウイルス・デルタ株またはデルタ・プラス株が蔓延しており、26日になってようやくグラディス・ベレジクリアンNSW州政権がシドニー都市圏東部7地方自治体住民の禁足令から4自治体をロックダウンに格上げしている。
ABC放送(電子版)が伝えた。
先にNSW大学の疫学者、レイナ・マッキンタイヤ教授とビル・バウテル准教授がNSW州政府の対応を批判していたが、6月26日にはさらにABC放送の討論番組Q+Aで、NSW大学のメアリールイーズ・マクロウズ教授がロックダウン宣言をためらうベレジクリアン政権を批判している。
Q+Aでは、2人が疫学と公衆衛生の見地から、ベレジクリアン州首相とケリー・チャント主席医務官が早い段階でコロナウイルス蔓延を封じ込むためにクラスター発生地域を即時ロックダウンしなかったことを批判している。
今回のクラスターが感染化も感染力も速いデルタ株やデルタ・プラス株ということが突き止められており、通路で通り過ぎただけで感染するケースも見つかっていたが、6月24日の段階において患者が36人に増えていたにもかかわらず、チャント主席医務官は、「3日間のロックダウンではシドニーには何の利益ももたらさない」と発言しており、ベレジクリアン州政府もロックダウンに強い抵抗を示していた。
Q+Aのハミッシュ・マクドナルド司会者が、「早い段階のロックダウンをためらったNSW州政府は判断を誤ったと思うか?」と質問すると、WHOのアドバイザーも務めているマクロウズ教授は、「そうだと思う。州政府はロックダウンを嫌っている。今回のクラスターでは、特に週末に人々が出歩くことを防ぐために一気にロックダウンに入るべきだった」と答えている。
また、「NSW州政府は、今回のアウトブレークを抑え込んでいるか?」との質問に対しても、「いいや。できていない。今回、感染したヘアドレッサーが仕事を続けていた。また、女性が1人ニュージーランドに出かけており、感染者がまだまだ増える可能性がある。まだ、患者数はそれほど多くないが問題はそこにはない。この新しいデルタ・プラス株は、重症化の危険もあり、子供からの感染も報告されていることからこれまで以上に大勢の人を感染させる可能性がある」と語っており、1980年代から90年代にかけてオーストラリア国内のAIDSクライシスの鎮静化に努力したバウテル准教授もマクロウズ教授の意見を支持し、「州首相が、『現段階の状況は非常に恐ろしい段階にある』と語ったのは正しいが、その一方で平常通りにやっていこうとしていた。そんなことではやっていけない」と語っている。
■ソース
NSW government criticised on Q+A for not going into COVID lockdown over Bondi cluster of Delta variant