380億ドルが、業績が悪化水準以下に下がらなかった企業へ
11月2日付ABC放送は、「新しく出たデータによれば、パンデミックで打撃を受けた企業に対して雇用を維持するためのJobKeeper補助金のうち380億ドルが、業績が悪化水準以下に下がらなかった企業に支払われていた」と分析している。業績悪化の水準として30%以上悪化した場合と定められていた。
連邦議会予算局(PBO)のまとめたデータで、パンデミックで打撃を受けるどころか、補助金申請対象となった期間に売り上げが3倍になった企業にも13億ドルが支払われていた。また、同じように売り上げが2倍になった企業にも13億ドルが支払われていた。
JobKeeper制度はオーストラリアの歴史でも最大の経済支援制度で2021年初めに終了するまでに890億ドルが国庫から支出されている。
野党労働党のアンドルー・リー連邦下院議員は、「JobKeeper制度そのものは適切な制度だったが、その運営に問題があったため、オーストラリアの歴史上最大の浪費になった」と批判している。
JobKeeper制度発足当時、ジョッシュ・フライデンバーグ財相は、「JobKeeper制度から交付を受けるためには業績が30%以上悪化しなければならない」としていたが、その後、規制が緩和され、売り上げ減予測だけで資金が交付されるようになった。
一度交付資格を得ると、その企業はその後6か月間にわたって、雇用維持対象被雇用者1人あたり2週間に$1,500を企業が受け取ることができた。しかし、現実には、PBOの調べによれば、720億ドルのうち380億ドルが、実際には売り上げが30%以上下がらなかった企業に支払われていた。
リー議員は、「JobKeeper制度で支払われた1ドル1ドルが高税や低サービス、財政赤字によって補填されることになる」と批判している。
一方、フライデンバーグ大臣は、「報告書を見れば、パンデミックで多くの企業が打撃を受けたことが分かる。JobKeeper制度で多くの人の生命と生活が救われた」と自画自賛している。
企業はたとえ業績が良くても、JobKeeper制度で受け取った金を返済する義務はないが、自発的に返済した事業所もある。また、企業の受給資格は2020年9月に厳格化され、2021年1月にもさらに厳格化され、JobKeeper制度で交付を受けている間の業績悪化を証明しなければならなくなった。それでも、業績が下がらない企業に40億ドルが交付されたとされている。
財務省内の調査は、「JobKeeper交付条件として企業の業績を審査することは、企業が交付を受けるために意図的に売り上げを減らす行為につながり、結果としてパンデミック後の経済回復を遅らせる危険がある」としている。
■ソース
At least $38b in JobKeeper went to companies where turnover did not fall below thresholds, data finds