連邦高裁「国内労働者に比べて不当な差別」
イギリス人女性がバックパッカーとしてオーストラリア滞在中に喫茶店のウエイトレスとして働いた際に15%を源泉徴収されたことをめぐってオーストラリア連邦を相手取って訴訟を起こしていたが、連邦高裁が女性の主張を認める判決を下した。海外から訪れ、オーストラリアで働きながら旅行を続けるワーキングホリデー・メーカーやバックパッカーにとって朗報となる判決だった。
11月3日付ABC放送(電子版)が伝えた。
2017年以降、18歳から31歳までの外国人に短期の労働をしながらオーストラリアを旅行するワーキング・ホリデービザ、417または462でオーストラリア国内で働いた場合、15%の所得税課税され、オーストラリア国民や永住権者のような$18,200の非課税枠がなく、1ドルでも稼ぐと課税される。
原告のキャサリン・アディさんは、2017年1月から2017年5月にオーストラリアを離れるまでシドニーの2箇所のホテルでウエイトレスの仕事をして$26,576を稼いだ。
アディさんは、「バックパッカー税」の15%を課税されたことを差別として、オーストラリア永住権者の扱いで$18,200の非課税枠を利用できるべきだった。バックパッカー税制度は、オーストラリアがイギリスその他の国と結んでいる二重課税防止の租税条約に違反している」と主張した。
租税条約は、国籍を理由とした差別を禁止しており、同じ条件の所得について、外国人に対して自国民よりも重い税を課してはならないとしている。
11月3日、連邦高裁は、「当訴訟にかかる事案では、オーストラリア国民についてもイギリス国民についても同じ条件の雇用では、課税所得の税率基礎及び計算法を規定する通常の税法の適用は同一だが、税率が異なっていた。イギリス国民であるアディ原告の場合、同じ通常の税法の下で同じ条件の雇用でオーストラリア国民が同額の所得を得た場合よりもさらに大きな税率が課せられた」と判断し、アディ原告の主張を認めた。
判決の日、アディさんはオーストラリアにはいなかったが、ABC放送で、弁護士同席で勝訴を喜び、「シドニーで働いている時には1,000ポンドほどの所得税をバックパッカー税として払わされたが、ワーキング・ホリデーで稼ぐ額に対しては非常に大きな額になる。しかも、何万人ものワーキング・ホリデーのバックパッカーが同じように税を徴収されてきた。今日の判決で、オーストラリアはそのバックパッカー達に負債を負っていることになる。大金だが、単に金の問題ではない。公正という問題だ。イギリスとオーストラリアとの間に租税条約が結ばれているのにオーストラリア政府はその条約に違反したのだ」と語っている。
アディさんは、アイルランドに事務所を置くTaxback.comの支援でこの日の判決を勝ち取ったが、Taxbackのショアンナ・マーフィCEOは、「2017年から2021年まで82万人のバックパッカーがオーストラリア国内で働いており、豪国税庁(ATO)はその人達に負債を負っているということだ」と語っている。
ATOは、「今日の判決を調べてガイダンスを発表する。今日の判決は、ワーキング・ホリデー・メーカーすべてに適用されるものではなく、オーストラリアと租税条約を結んでいるチリ、フィンランド、日本、ノルウェー、トルコ、イギリス、ドイツ、イスラエルの国民だけに適用される。また、雇用主は、ATOのウエブサイトでガイダンスを発表するまで、これまで通りの源泉徴収を続けなければならない」と発表している。
■ソース
British waitress wins High Court discrimination battle over Australia’s ‘backpacker tax’