「11分では十分な検討を経たとは考えられない」
マルタ出身の男が妻殺しで服役、出所したが、ピーター・ダットン内務相が男のオーストラリア・ビザを取り消したため、男は出所後にマルタに強制送還されることになった。男はこれを不服として控訴している。
連邦裁は、「ダットン内務相のビザ取消決定はたった11分でなされており、十分な検討を経たとは考えられない」として無効の判決を下したため、この問題は裁判で長引く様子がある。
ABC放送(電子版)が伝えた。
フレデリック・チェトクティ氏(73)は、地中海の島国、マルタに生まれ、1948年に2歳で家族に連れられてオーストラリアに移民してきた。しかし、1993年に妻殺しで有罪判決を受け24年の懲役刑を言い渡されている。さらに、受刑中に他の受刑者に暴力をふるっており、2年の懲役刑を言い渡されたが、これは24年の懲役刑と同時に執行されることになっており、24年に加算されない。2017年3月の出所間際に、ダットン内務相が、「社会的に望ましくない性格」を理由としてビザを取り消し、チェトクティ氏のマルタ強制送還を計画した。
しかし、チェトクティ氏がビザ取り消しを不服として連邦裁に訴え、審理直前になってダットン大臣がビザ取り消し撤回に同意した。
連邦裁の審理で、「最高裁の判決資料が2017年8月14日午前9時16分にダットン大臣の机に置かれた。また、同日に、最初のビザ取り消し決定の撤回をダットン大臣が同意したのを受けて連邦裁が原告のチェトクティ氏に正式に決定を言い渡す予定だった。判事は午前10時14分に判決文書に署名していたが、午前10時25分にはダットン大臣が再びチェトクティ氏のビザ取り消しに署名している」ことが証言された。
チェトクティ氏の弁護団は、「チェトクティ氏の判決資料は130ページに及んでおり、ダットン大臣の最初のビザ取り消しに対する裁判所の判決文書が出るまで二度目のビザ取り消しを決めることは許されていないから、ダットン大臣はたった11分で130ページの資料を読んだことになる」と陳述した。
これに対してダットン大臣側の弁護団は、「判決資料が1時間前に届けられており、そちらで内容を把握することはできた」と反論している。
7月2日の判決で、バーナード・マーフィ、ダリル・ランギア両判事は、大臣弁護団の反論を認められないとして、チェトクティ氏の勝訴を言い渡した。デビッド・オキャラハン判事のみ、控訴却下の意見だったが、2対1で多数派の判決が下った。
三度目のビザ取り消しが決定されており、今後はダビッド・コールマン移民相とチェトクティ氏の係争となるが、2歳以来オーストラリアに居住している犯罪者を身よりも友人もいない国籍国に送還することの是非についてはニュージーランドとの関係などでしばしば問題になっている。
■ソース
Peter Dutton’s 11-minute decision to kick out convicted wife killer overturned by Federal Court