インターネット上のデマには要注意
中国武漢に発した新型コロナウィルスの流行は、ソーシャル・メディア(SNS:ソーシャル・ネットワーキング・システム)を通して「中国を対象とした攻撃なのでは」という説が世界中にばらまかれており、巨大テクノロジー企業はデマ情報の広がりを食い止めるのに苦戦しているが、中にはこのデマで利益を得ている企業もあるようだ。
ABC放送(電子版)が伝えた。
ABCサイエンスでは、YouTube上の「新型コロナウイルスは生物兵器」等様々な陰謀説をまことしやかに語る動画の中でKFCやElevit vitaminsといった会社の広告が流れていることを発見した。Googleはこの報告を受けた後、広告を削除している。
WeiboやWhatsAppなどのプラットフォームは病気や健康に関するデマの対策に苦労しているが、特定の病気が流行している時期にはそれもピークになる。新型コロナウィルス感染状況は急速に進んでおり、人々が抱いた疑問に対する回答や対策をインターネット上で探し回る時には公式の情報よりもSNS等で拡散された虚報の方が先行することになりがちだ。
Australian National Centre for the Public Awareness of Scienceのロッド・ランバーツ副所長は、「事態が不安を誘い、扇情的で、しかも脅威を与えるような場合、人は往々にして似たパターンをとりがちだ。どうすればいいのかを知りたくなるし、大変なことなのかどうかを知りたくなる。それ自体は非常にもっともなことだ」と語っている。
蔓延している4つの噂
デマ1.オーストラリア内の中国からの輸入食料品が新型コロナウイルスに汚染されている
週の初めにはSNS上で「中国からのフォーチューン・クッキーや和牛に感染の疑いがある」という情報が出回り始めた。また、Bureau of Diseasology Parramattaという存在しないはずの機関から「シドニー各所の駅構内で陽性のウイルス反応が確認された」と発表があったとする投稿も見られた。
NSW保健局(NSW Health)は即座にこれらの内容に対してデマであるという発表をし、特定の食べ物を食べたり、駅を訪れただけで感染するリスクは無いとしている。しかしWhatsAppではこれらのデマに関するメッセージが繰り返しシェアされている。
デマ2.ビル・ゲイツがウイルスを造り上げた
「ビル・ゲイツが数か月前にコロナウィルスの蔓延を予想しており、そのウィルスの特許化に関わっていた」というデマはFacebookでシェアされている。Facebookはこの内容について「外部調査機関から全くのデマであると判断されており、目にした人、シェアした人に間違った情報であると伝達されている。」としている。
デマ3.新型コロナウイルスは生物兵器である
動画再生アプリTikTok上では「中国政府が人口を削減するためにコロナウイルスを利用している」などの陰謀説が登場している。またYouTubeでは「新型コロナウイルスは生物兵器だ」とする動画に大企業の広告が表示されることで、動画の投稿者とYouTubeに利益が発生していた。現在は広告は取り下げられており、YouTubeは「我々はどういった動画に広告が表示されるかについて非常に厳しく取り締まっている。ポリシー違反についてはすぐに対応する。」と語っている。
デマ4.ブリーチ剤を飲むと感染しない
Facebookでは多くの非公開グループで流行り病について話し合われているが、こういった場ではどのように感染を防ぐかのアドバイスを探している人も多い。感染を防ぐためにWeiboや Twitter、Facebookでシェアされている「食塩水でのうがい」は、AFP fact checkにより推奨されていない。
また中にはブリーチ剤を飲むことで感染を防げるとしている危険なデマもある。
間違った情報から身を守るためには
1月28日、外務貿易省(DFAT)は、「オンラインで出回っている武漢救出オンライン申請書は虚偽だ」と警告している。また、ウィルスの発生源についても治療法についてもデマが飛び交っている。
間違った情報から身を守るには、信頼性の高いメディアや政府関係機関から情報を得ることに加えデータ提供元の記載のない非公式の情報を避けること等があげられる。AFP Fact-Check香港の編集者レイチェル・ブランディー氏は「まず公式に発表された情報を得るに限る。非公式のブログ、非公式のフェイスブックページを閲覧時には、実際に信頼できる情報なのかの判断ができない。」と言う。
また、Australian National Centre for the Public Awareness of Scienceのロッド・ランバーツ副所長は「新型コロナウイルスについてはまだ解明されていないことも多い。質問に対する回答がまだ無い可能性についても理解しなければならない。ソーシャル・メディア企業、政府や科学に通じる人達は、この病気について簡潔でわかりやすいメッセージをシェアすべきだ。」と語った。
■ソース
Coronavirus misinformation is running rampant on social media ? and tech giants are profiting from it
https://www.abc.net.au/news/science/2020-01-30/social-media-spreading-coronavirus-misinformation-youtube-tiktok/11912590