生産量の最大25%を国内に振り向け

オーストラリア連邦政府は22日、国産天然ガスの国内供給を優先する制度案を発表した。生産量の15〜25%を国内向けに振り向けることを生産企業に義務付ける。輸出を主眼とした産業構造にメスを入れ、安価で安定的な天然ガスの国内供給を図る。
国内供給の割合については今後、国内外の事業者や国民の意見を聞いて決める。制度設計にあたって、政府が示したガイドラインの要点は次の通り。
1.既存契約を尊重する
国内向け・海外向けを問わず、2025年12月22日以前に締結された既存契約を尊重する。一方、発表日以降に締結される契約は既存契約とはみなさない。
2.全国規模での制度運用
制度は全国を対象とし、連邦政府・州・準州政府のガス市場制度と連携して運用される。
3.2027年に制度開始予定
天然ガス国内優先供給制度は、2027年の開始を予定している。
4.供給増による価格抑制を狙う
既存契約の期限切れに合わせて国内向け供給を段階的に増やし、ガス価格の下押し効果を図る。
5.輸出より国内供給を優先
政府が想定する輸出承認モデルでは、輸出事業者は輸出に先立ち、国内供給義務を満たす必要がある。
6.柔軟な履行手段を容認
生産者は、輸出業者や国内生産者との契約など、市場原理に基づく多様な商業的手法により、国内・輸出双方の供給義務を柔軟に履行できる。
7.長期の国内供給契約を促進
ガスを投入資源とする商工業(C&I)利用者や関連インフラ事業者の投資判断を支えるため、長期の国内供給契約を促す。
8.投資の予見性と国際関係への配慮
制度創設前から国内供給要件を明確化することにより、長期的な生産・投資の安定性を確保するとともに、豪州の液化天然ガス(LNG)輸出国やエネルギー安全保障への影響を最小限に抑える。
オーストラリアは世界でも屈指のLNG輸出国であるにもかかわらず、需要地の東海岸を中心にガス需給がひっ迫している。価格も海外市況に引っ張られて価格も高止まり。コロナ禍後の経済再開時には、世界的なコモディティー価格の高騰も重なり「エネルギー危機」に発展した。
アルバニージー労働党政権は、国内供給を増やし、卸売価格の上限を定めるなどの対策を採ってきた。加えて、連邦気候変動・エネルギー・環境・水資源省と、連邦産業・科学・資源省がまとめた「ガス市場改革報告書」(22日発表)の提言に基づき、制度設計の青写真を示した。2026年初頭にパブリックコメントの募集を始め、関係者の意見を踏まえて新制度の施行を目指す。
クリス・ボウエン連邦気候変動・エネルギー相は共同声明で次のように述べた。
「オーストラリア産ガスを国内利用者に、より手頃な価格で供給することは、経済を支えると同時に、(化石燃料から再生可能エネルギーへの)エネルギー転換の推進にもつながる。地域にとって信頼できるエネルギー供給国であり続けることとも両立できる」
「再エネ比率82%への移行に向け、ガスはエネルギーシステムの中で重要な役割を果たす。石炭と異なり、ガス火力発電所は数分で稼働・停止が可能で、電力系統の『最後の支え』となる」
「政府は世界的なエネルギー危機の最中に、ガス不足への対応に踏み切り、供給を確保するとともに、消費者を急激な価格高騰から守ってきた。今こそその経験を踏まえ、ガス市場に持続的な改革を実現する好機だ」
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