教義に基づく性的指向差別合法化巡り対立
選挙戦でペンテコステ派信者であることを宣伝したスコット・モリソン連邦首相が公約に掲げた「宗教差別法」は、教義に基づく性的指向に対する差別を合法化するものとして、社会の各方面で法案支持派と反対派の大きな争点になっている。
連邦議会の新会期が始まった2月8日にも既にTAS州選出のブリジェット・アーチャー自由党議員が党の方針を押して法案反対を表明した。その他にも態度を保留している自由党議員が1人いる。また、労働党は原則支持を唱えているが、最終法案を見るまでは態度を明らかにできないとしている。
2月8日付ABC放送(電子版)が伝えた。
現状では、モリソン政府は無所属諸派議員または労働党の支持を得なければ廃案に追い込まれることになるが、現行法案では、宗教系学校で同性愛者生徒は性差別禁止法の保護を受けるが、トランスジェンダーは放校されても性差別禁止法の保護を受けられない可能性があると指摘されており、自由党穏健派議員はこの性差別禁止法強化を求めている。
アーチャー自由党議員は、「宗教差別法案は、タスマニア州の差別禁止法による法の保護を弱めることになる。私の年代であれば、同性愛が犯罪とされた時代を知っている。その時代に果敢に戦ったTAS州民が勝ち取った差別禁止法だ。宗教信者は私の態度に落胆するだろうと思うが、性的指向に対する差別を許す法案が通過すれば多くの人が傷つき、苦しむことになる」と語っている。また、ノース・シドニー選出のトレント・ジマーマン自由党議員は、採決時に反対票を投じる可能性をほのめかしている。
2022年5月頃までには連邦総選挙が控えており、この「宗教差別法案」の他にも、NSW州のICACのような政府の腐敗を調査摘発する独立機関の設立を求める声は続いているが、モリソン保守連合は抵抗を続けてきた。アーチャー議員はその独立機関設立の審議を求めて自由党の方針に背いたばかりだった。
労働党からは、スティーブン・ジョーンズ議員が立ち、「甥のウォリーは15歳で自殺した。彼は美しく、創造性と勇気のある若者だったが、ゲイであり、自分のジェンダーに迷っていた」と語り、さらに従来のジェンダーにこだわらない息子について語り、「このままでは彼もそのジェンダー意識のために攻撃される可能性がある。議会は大勢の有為の若者に対して何というつもりなのか? 宗教の自由の名前に隠れて若者を破滅に追いやるような法案を認めるべきではない。性的指向に対する差別のために余りにも多くの命が奪われてきた」と語った。
■ソース
Liberal MP Bridget Archer rules out supporting religious discrimination bill