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鼻の下や背中、胸に男性のような毛が…男性型多毛症について

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医療

Q

鼻の下や背中、胸に男性のような毛が生えているのですが、これは病気なのでしょうか。また、治す方法はありますか。(40歳女性=事務職)

A

原因

男性型多毛症は、女性に濃い体毛が男性ホルモンの影響で発毛する疾患のことを言います。多くの場合が原因不明ですが、以下のような原因も考えられます。

  • 多嚢胞(たのうほう)卵巣症候群(PCOS)
  • クッシング症候群(副腎皮質からのコルチゾール分泌の増加によって起こる障がい)
  • 先天性副腎過形成(コルチゾールの生合成系の1酵素に異常のある常染色体劣性遺伝疾患群)
  • 男性ホルモン分泌性腫瘍

※薬にはPhenytoin、Glucocorticoid、Diazoxide、Minoxidil、Cyclosporine、Tiboloneなどが挙げられます。

臨床所見

男性型多毛症は遺伝的要素があり、家族歴も考えられます。多嚢胞卵巣症候群の場合、思春期ごろから症状が始まります。生理不順、ニキビ、脂肪質の皮膚、肥満などがあれば多嚢胞卵巣の可能性が高くなります。もし突然、思春期以降に多毛症が発生すれば男性ホルモンを分泌する腫瘍(しゅよう)かもしれません。声が深くなったり、陰核の肥大などが起こっていれば男性化が強くなっていることを意味し、クッシング症候群や男性ホルモンを分泌する腫瘍が原因となっていることもあります。

検査

多毛症がそれほどひどくなく、生理も規則正しければ通常検査は必要ありません。また、少しひどくても生理が規則正しい場合は、男性ホルモン・レベルと性ホルモン結合グロブリン(Sex Hormone Binding Globulin/SHBG)をチェックします。生理が不規則であれば、黄体形成ホルモン(Luteinizing Hormone/LH)、卵胞刺激ホルモン(Follicle Stimulating Hormone/FSH)、デヒドロエピアンドロステロン(主として副腎皮質から分泌されるステロイド、男性ホルモンの前駆物質の1つ=Dehydroepiandrosterone Sulphate/DHEAS)のレベルを調べます。腹部超音波検査も行い、多嚢胞卵巣があるかをチェックします。

治療

治療に関する詳しい情報は以下の通りです。

  • クリーム:「Eflornithine hydrochloride」というクリームは毛包の発毛に必要な酵素をブロックします。また、顔面の治療だけに制限されており、6~8週間続けないと効果は出ません。
  • 混合避妊ピル:卵巣の男性ホルモンの生産を抑制します。ただし、非アンドロゲン性の黄体ホルモン(Drospirenone、Cyproterone)が含まれているタイプの混合ピルでなければ、かえって多毛症を悪化させます。生理を規則正しくする効果と避妊効果があります。
  • 「Spironolactone」:利尿剤としても使われる薬で、男性ホルモンの生産を抑制する効果があります。生理が規則正しかった人の生理が狂ったり、過少月経だった人のサイクルを規則正しくします。避妊ピルと同時に処方されることがあります。
  • 「Finasteride」:通常前立腺肥大と禿頭(とくとう)症の薬として使われますが、抗男性ホルモン効果で多毛症にも使われます。

*オーストラリアで生活していて、不思議に思ったこと、日本と勝手が違って分からないこと、困っていることなどがありましたら、当コーナーで専門家に相談してみましょう。質問は、相談者の性別・年齢・職業を明記した上で、Eメール(npeditor@nichigo.com.au)、ファクス(02-9211-1722)、または郵送で「日豪プレス編集部・何でも相談係」までお送りください。お寄せいただいたご相談は、紙面に掲載させていただく場合があります。個別にご返答はいたしませんので、ご了承ください。


鳥居 泰宏(とりい やすひろ)
ノースブリッジ・メディカル・プラクティス

メルボルン大学医学部卒業。Northbridge Family Clinicを昨年閉院し、現在Northbridge Medical Practiceで診療中

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