第5回日本酒と意外な食材との相性の話
2019年も既に3カ月目を迎え、ちょっと疲れが出たり、新年の気合が薄れたりしていませんか。そんな時は心機一転、日本酒を通して新しい味体験に挑戦してみましょう。
日本酒+チーズ
ワインがおいしいオーストラリアに住んでいると、「やっぱりチーズにはワインだよねえ」と安易なチョイスになびいてしまいがちです。しかし、ここであえて踏ん張り、まずは冷やした吟醸酒とハード系のチーズで乾杯しましょう。その後、こくのある純米や山廃仕込みのお酒とピザの組み合わせも試してみてください。
日本酒にはうまみの成分であるコハク酸やアミノ酸が多く含まれているため、やはりうまみの強い食材であるチーズ、きのこ類、トマト、豚肉など、ピザによく使われる食材との相性が抜群です。昭和の趣(ワンカップ酒+チーズ鱈)も悪くありませんが、たまにはプロシュート・ハム、ポルチーニのピザでまったりと日本酒を飲んでみませんか。
日本酒+コリアンダー
日本ではパクチーと呼ばれるコリアンダーは、香り・味とも青臭いイメージが強く、日本酒の蔵元さんでも苦手な人が実は多いのです。一方で、その爽やかさ、洋風ハーブとは違ったアジアの香りがシェフには魅力らしく、オーストラリアの日本酒イベントでは料理とのマッチングに登場することもしばしば。タイ風サラダ、あるいは白身魚のカルパッチョなどにコリアンダーを適度にふりかけ、やや辛口で酸味も程良く感じられる日本酒を選んでみましょう。「合う」「いや、やっぱりパクチーはだめ!」など、お友達と楽しい会話も進みます。
日本酒+ラム
もう1つ重要なうまみ成分であるイノシン酸は、主に動物性の食品に多く含まれています。和食で代表的な食材はカツオ節ですが、オーストラリアに住む私たちは、日本ではまだ食べる機会が限られているラムをお酒とマッチングさせてみましょう。料理技術の乏しい筆者が、全く適当な分量のみそ・塩こうじとラム・チョップをフリーザー・バッグに入れ、半日冷蔵庫に放置した後にバーベキューしたところ、オージーの間で純米酒が瞬時になくなるほどの好評ぶりでした。
この他には、デザートならパブロバ(メレンゲとフルーツのケーキ)と、スパークリング日本酒を合わせてみてください。オージーとの話題作りにもなりますし、意外な発見が、疲れた心と味覚を少し元気にしてくれます。
雄町稲穂
在シドニー歴20年。日本での仏・独・豪ワインの輸入販売を経て、シドニーのブティック・ワイン専門会社に入社、日本やアジア諸国へ豪州プレミアム・ワインを輸出。現在は豪州食材を世界に広める企業に勤務。日本酒は勉強不足を痛感し、2017年にTAFEのWSET(Wine & Spirit Education Trust)SAKEコースを受講。レベル3を「優」で卒業したものの、テイスティングは「良」に留まったため、スキル・アップのため実技に励んでいる