辛口コメントで映画を斬る、映画通の日豪プレス・シネマ隊長と編集部員たちが、レビューやあらすじと共に注目の新作を紹介!レーティング=オーストラリア政府が定めた年齢制限。G、PG、M、MA15+、R18+、X18+があり、「X18+」に向かうほど過激な内容となる。作品の評価は5つ星で採点結果を紹介。
アフターマス
The Aftermath隊長が観た!
ドラマ、ロマンス/M 公開中 満足度★★
ハリウッド・スターでそっくりさんと言えば、エイミー・アダムスとアイラ・フィッシャー、ダニエル・ラドクリフとイライジャ・ウッドなどの名前が挙がるが、やはり多くの人が共感するのが、ナタリー・ポートマンとキーラ・ナイトレイだろう。元を正すと1999年公開の『スター・ウォーズ・エピソード1/ファントム・メナス』で、ナタリー・ポートマン演じるアミダラ女王の影武者役をキーラ・ナイトレイが演じていたことは、当然似ていたからのキャスティング。普通、こういった見た目で選ばれた(もちろんそれだけではないけれど)キーラがその後成功するのは難しいと思えるのだが、2002年の『ベッカムに恋して』、そして03年公開のハリウッド大作『パイレーツ・オブ・カリビアン』のヒロイン役で完全にブレイク。その後は、『プライドと偏見』『つぐない』と時代物の出演作が続いて、最近はすっかりコスチューム俳優のイメージが強くなってしまった。イギリスのお屋敷でドレスを着て午後ティーっていうイメージだ。その彼女の新作が『ジ・アフターマス』。
同作の舞台は第2次世界大戦後のドイツのハンブルク。戦争で崩壊した街の再建のために派遣された英国軍大佐ルイスは、イギリスから妻のレイチェルを呼び、共に生活を始める。戦災を逃れた彼らの新居は大きな屋敷で、ルイスはその元家主で妻を亡くしたドイツ人のステファンと彼の1人娘を一緒に住まわせることを決める。敵国であったドイツ人と共に生活するのを快く思えないレイチェルだったが……と、またまた時代劇。キーラ・ナイトレイといえば、『つぐない』で着ていた緑色のドレスが強烈な印象を残しているが、同作ではゴールドのドレスを上品に着こなしている。
戦争の傷跡が残るハンブルクを舞台にした恋愛劇で、旦那のルイスはオージー俳優のジェイソン・クラーク、一緒に住むことになるドイツ人をアレクサンダー・スカルスガルドが演じている。この配役を見て分かると思うが、ちょっとブーちゃんな夫に、同居人は背の高いシュっとしたイケメン。しかも旦那が家を空けることが多いとなったら、その後の展開はまあ簡単に想像できちゃうだろう。しかし、これが素直に頭に入ってこなかった。いきなりのキスとか、ドキドキするのだろうか? 子どもが好きな女の子をいじめたりするように、いがみ合っているようで、実はお互いかなり意識し合ってたっていたってこと? 確かに、それぞれが戦争で大事な人を失っているという共通点はあるが、子どもの着ていたセーターを愛おしくなでたり、亡き妻の使っていたピアノを乱暴に扱われることに怒ったり、そんなに亡くなった妻への気持ちが残っていながら、とっととズボン下げる? 2人の気持ちの高まりに置いてきぼりを食らった感じだった。更にラストがまた追い打ちで、結局この上演時間の2時間近くは何だったのか……。正直に言って「レイチェル! お前のフラフラした気の迷いでみんな不幸にしやがって!」って感じだ。
ストーリーはこんな感じで、全く共感できなかったけれど、主演3人のケミストリーはバッチリで、演技も良かっただけにかなり残念だった。空爆された街の残骸など、もっと戦争のことも強く絡めても良かったのでは。そういったことを避け、3人の恋愛劇にフォーカスし過ぎで、しかも自分が鈍感だからか、主人公たちの心の動きが全く読み取れなかった。昼ドラの不倫ものを、壮大なセットと優秀な俳優たちで完成させた感じ。いや、昼ドラの方がストーリーは面白いか。壁ドンなんかに憧れる人が見たら、もう少し違って見えるのだろうか。
アベンジャーズ: エンドゲーム
AVENGERS: ENDGAME
ファンタジー、SF/TBC 4月24日公開予定 期待度★★★★
人類を守るために最強のヒーローたちが集結した究極のチーム・アベンジャーズ。同作はマーベルの人気シリーズ『アベンジャーズ』の最終章となる。前作の『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』で指を鳴らすだけで全宇宙の生命の半分を滅ぼせる力を手にした超人類の敵・サノスによって宇宙は廃墟と化してしまった。この戦いで多くのヒーローたちも消滅してしまい、悲しみと屈辱を感じたアベンジャーズ結成当初のメンバーを中心にヒーローたちが再集結し、宇宙と仲間を救うために最後の力を振り絞ってサノスに立ち向かう。シリーズの集大成とだけあって前作には出ていなかったヒーローも参戦する。監督は前作に引き続き、アンソニー・ルッソとジョー・ルッソの兄弟が手掛ける。
ロング・ショット
LONG SHOT
コメディー、ロマンス/TBC 5月2日公開予定 期待度★★★
コメディー作の出演を中心に活躍するセス・ローゲン演じるトラブル・メーカーの政治記者・フレッドと、『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』のフュリオサ大隊長役で見事なアクションを披露したシャーリーズ・セロン演じる大統領候補のアメリカ合衆国国務長官・シャーロット。シャーロットはフレッドの元ベビー・シッターであり、彼の初恋の相手だった。それから全く違った人生を歩んできた2人が久しぶりに再会し、大統領選挙の出馬を控えた彼女は、彼と出会ったころの若く自信に溢れていた自分の姿を思い出すと共に、彼のユーモアに惹かれ始める。そこで彼女は選挙演説のライターとしてフレッドを雇い、周囲を驚かせる。選挙に向けて時間を共にするうちに2人の関係にどのような変化が起きるのか見ものだ。
名探偵ピカチュウ
POKÉMON DETECTIVE PIKACHU
アニメ、ファミリー、ファンタジー/ TBC 期待度★★★★
物語は、優秀な探偵ハリー・グッドマンが不可解な失踪を遂げたことから始まる。幼いころ、ポケモン・トレーナーになるのが夢だった、彼の21歳の息子・ティムは事件の真相を突き止めるよう父親の上司から勧められる。その調査の手助けをすることになったのはハリーのポケモン・パートナーだったピカチュウ探偵だった。始めは調査に乗り気でなかったティムもピカチュウとの出合いがきっかけで徐々に変化していく。彼らはお互いの言葉を理解できるという特性を生かし謎を解くため、人類がポケモンを集めバトルを繰り広げている大都市、ライム・シティーにスリリングな冒険に出掛ける。日本でも人気のポケモン・シリーズ初のハリウッド進出作品で実写映画ということもあり注目の作品だ。
オール・イズ・トゥルー
ALL IS TRUE
ドラマ、ヒストリー/TBC 5月9日公開予定 期待度★★★
1613年、人気劇作家ウィリアム・シェイクスピアは彼の活躍の場であったグローブ劇場が全焼したことで、作家をリタイアしイングランド中部にある故郷のストラットフォードに戻ることになる。そこで彼が直面したのはこれまでおざなりにしてきた“家族との問題”だった。最愛の息子・ハネットの死、妻と娘との壊れかけた関係の修復に悩まされながら、夫・父親としてのこれまでの失敗を後悔する。作家として偉大な作品を生み出してきたシェイクスピアが最後に向き合った彼自身の真実の物語が、コメディアンとしても活躍する脚本家のベン・エルトンによって描かれている。監督・主演は『ヘンリー5世』で監督・男優賞の2冠を手にしたケネス・ブランナー。
★今月の気になるDVD★
きっと、うまくいく 3 Idiots
ドラマ、コメディー 171分(2009年)
第37回日本アカデミー賞優秀外国作品賞を受賞した同作の舞台は、ニューデリーの超難関理系大学ICE。エリート大学に合格した新入生ランチョー、ファラン、ラージューは、3バカ・トリオと呼ばれる。ランチョーは怖いもの知らずの超天才。自由奔放な彼に振り回されながらも青春を謳歌するファランとラージュー。ランチョーは強権的な教授に逆らい学長から目の敵にされる。学長は “人生は競争であり、いかにテストで良い点を取り続けるかで成功が決まる”と学生にプレッシャーを与え続けていた。それに噛みついたのがランチョーだった。彼のモットーは「All Is Well」“きっと、うまくいく”。3バカ・トリオが巻き起こすハチャメチャ珍騒動が見物だ。
ランチョーの親友たちに人生の危機が降りかかる中、彼は奔放に生きながらも“人生で本当に大切なものは何なのか”を真剣に考えていた。10年後、ファランとラージューは同窓生のチャトルに呼び出される。彼が言うには、卒業後消息不明だったランチョーの居所がつかめたということだった。明らかとなるランチョーの正体……。経済大国インドの教育のあり方や社会問題をテーマに、それに翻弄されながらもそれぞれの生き方を模索し葛藤する若者の姿が描かれている。自分の好きなことを自分のやり方で追いかけ続ける彼らの姿、喜怒哀楽が詰まった同作には前向きに人生を送るためのヒントが隠されている。ぜひ、音楽とダンスにも注目して欲しい。(編集=MI)